虐殺器官 RE-2660

作品紹介

公開年月  2017/02/03
ジャンル  SF/アクション
原作  伊藤計劃 『虐殺器官』
監督  村瀬修功
脚本  村瀬修功
製作  山本幸治、大高健生
製作国  日本
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

近未来、テロとの戦いを進める先進国は徹底したセキュリティ管理体制を敷いて一掃する一方、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
そんな中、アメリカで暗殺を請け負う唯一の部隊、情報軍特殊検索群i分遣隊を率いるクラヴィス・シェパード大尉にある指令が下される。
それは世界各地に虐殺の種をバラ撒く謎のアメリカ人言語学者ジョン・ポールを暗殺するという内容だった。

登場人物&出演者

クラヴィス・シェパード(声:中村悠一)
主人公。アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊大尉。虐殺を企てる首謀者の暗殺を担っている。
中村悠一は代表作に『おおきく振りかぶって』、『CLANNAD』シリーズなどがあります。
普段は映画や文学に触れて知的な考え方を持つが、兵士としての殺しへの感情を持たない。
ジョン・ポール暗殺の為に彼の元愛人ルツィアに接触するが、彼女の言葉に疑問を持つ。
「計数されざる者」に捕まり、ついにジョン・ポールと会うがそこで「虐殺文法」を知る。
最後はルツィアを殺され、ジョン・ポールの遺志を引き継いで「虐殺文法」を故郷で使った。

ウィリアムズ(声:三上哲)
アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊の隊員。クラヴィスとは任務以外でも交流を持っている。
三上哲は田豹作に『サムライフラメンコ』、『THE REFLECTION』などがあります。
独り身のクラヴィスとは違い、妻子を持つ身であり、任務はあくまで仕事だと割り切る。
常に軽口を叩いて緊張した現場の雰囲気を和らげる一方、思った事は上司の前で発言する。
アフリカでジョン・ポールを拘束したクラヴィスだが、暗殺命令が出ていたルツィアを射殺。
妻子を守る為に世界がウソでも構わないと言い放つが、逆上したクラヴィスに爆殺された。

ルツィア・シュクロウポヴァ(声:小林沙苗)
ジョン・ポールの元愛人。MITで言語学を学び、そこでジョン・ポールと知り合う事に。
小林沙苗は代表作に『劇場版アクエリオン』、『劇場版マクロスF』シリーズがあります。
現在は故郷であるプラハでチェコ語の教師をしており、クラヴィスに言葉を教える事になる。
言葉に造詣が深いクラヴィスに先生と生徒以上の会話をし、言葉を生む器官について話す。
実は「計数されざる者」と関わりを持っていたが、詳しい事は分からず利用されていた。
最後はポールのとんでもない思想を知り、クラヴィスに逮捕させるもウィリアムに殺された。

ルーシャス(声:桐本拓哉)
チェコのクラブのオーナー。ルツィアと顔馴染みで連れてきたクラヴィスと談笑をした。
桐本拓哉は代表作に『劇場版∀ガンダムI/地球光』、『氷川丸ものがたり』などがあります。
実は「計数されざる者」のメンバーで、スパイ活動していたクラヴィスを捕らえた。
しかし、連絡を受けたウィリアムたちの突入により、呆気なく射殺されてしまう。

ロックウェル大佐(声:大塚明夫)
アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊の指揮官。感情を操作されている部下たちに命令を下す。
大塚明夫は代表作に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』などがあります。
クラヴィスからポールの「虐殺文法」を聞かされた事から暗殺から逮捕に切り替えている。

ジョン・ポール(声:櫻井孝宏)
元MITの言語学者。数々の虐殺の影にいて暗殺の対象にされるが、その度に逃げられる。
櫻井孝宏は代表作に『デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム!』、『劇場版金色のガッシュベル!!』などがあります。
実は過去に教え子だったルツィアと不倫していたが、サラエボのテロにより妻子を失う。
「計数されざる者」に捕まったクラヴィスと初めて会うと、そこで「虐殺文法」を口にする。
その思想は自分の周りを守る為ならば、他が殺し合う事に意識を差し向けるべきだと主張。
最後はルツィアの考えと彼女を失った事で投降するも、結局何者かに射殺されてしまう。

感想

個人的な評価

本作は“ゼロ年代日本SFのベスト”に挙げられている伊藤計劃の虐殺器官が基となります。
伊藤計劃はデビューしてから2年ほどで早世しているが、『星雲賞』や『日本SF大賞』を受賞している実力者でした。
ただ、伊藤計劃はデビューした当時からすでに全身がガンに冒されていて、残り少ない時間ができる限りの作品を遺したという。
残念ながら伊藤計劃については本作で初めて知りましたが、上記の受賞歴などからSF文学では注目されていた人物だったようです。
そんな本作は当初2015年10月の公開予定だったが、色々と問題があって延期に延期を重ねて、2017年2月3日にようやく公開されました。
主な原因として製作を担当していたマングローブ社の経営危機にあったとされています。
本作はアニメ映画であるけど、物語の大半は会話劇で展開され、その内容についてもしっかりと聞かないと分からなくなります。
アニメ映画だと思って油断していると、あっという間に置き去りにされるほど内容が小難しい感じでした。
特に主人公であるクラヴィスと悪役という位置づけのジョン・ポールの会話が作品の肝である当時に、ここを理解しないと本作は理解できない会話となります。
ジョン・ポールのやっている事は非人道的で許されないモノだが、その理由にはテロで妻子を亡くした彼なりの正義が証明されているのです。
その悪役から発せられる言葉には、世界征服や金、権力という典型的なモノじゃなく、完璧な思想という形にないモノとなります。
基本的に本作はグロテスクな描写が遠慮なく展開していて、アニメ映画という事で多少はマイルドになっていると思います。
それでも、容赦なく殺されていく人たちは肉ミンチの如く死んでいくし、子供も主人公たちが平然と撃ち殺していく。
ただ、本作の主眼はあくまで会話劇であり、その中に存在する登場人物たちの掲げている正義と言えるだろう。
派手なアクションを期待した人はガッカリするが、SFという事で劇中に登場するギミックはなかなか興味深いです。
コンタクトレンズのようなデバイスを通じて視覚上に様々な情報を映し出す技術が面白い。
これはトム・クルーズが主演した『マイノリティ・リポート』を彷彿とする映像で、さすがにSFと思わせる演出でした。
多分、本作はアニメ映画よりも原作を読んだ方がずっと面白いだろうけど、あくまで好きな人向けの作品だと感じられます。
あまり深く考えずに楽しみたい人には終始に渡って退屈な会話劇で眠ってしまうかもしれないほど小難しいです。
本作は会話劇が最大の魅力であり、個々の持つ思想も魅力の一つで、アクションはオマケ程度の作品でした。