万引き家族 VD-391

作品紹介

公開年月  2018/06/08
ジャンル  ドラマ/犯罪
原作  なし
監督  是枝裕和
脚本  是枝裕和
製作  石原隆、依田巽、ほか
製作国  日本
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

高層マンションの合間にポツンと取り残された古びた平屋の一軒家に柴田家が住んでいた。
その平屋には大黒橋の治と妻の信代、息子の祥太、信代の妹の亜紀、そして家の持ち主である母の初枝の5人暮らす。
一家の生活は初枝の年金に支えられていて、足りない分を家族ぐるみで万引きなどの軽犯罪を重ねて補っていたのだった。

登場人物&出演者

柴田治/榎勝太(演:リリー・フランキー)
主人公。柴田家の大黒柱。日雇い労働者。祥太と組んでスーパーなど万引きをしている。
リリー・フランキーは代表作に『盲獣 vs 一寸法師』、『ぐるりのこと。』などがあります。
親から暴力を振るわれる少女のゆりを可哀想に思い、家に連れ帰ってそのまま家族の一員に。
日雇いの仕事で足をケガし、1ヶ月も仕事ができない上に労災も下りず、万引きで補填する。
実は信代と結婚しておらず、初枝の家に住んでいて、過去に正当防衛で人を殺害している。
最後は家族が崩壊し、信代が罪を被ってくれて釈放され、一人暮らしをして面会にも行く。

柴田信代/田辺由希子(演:安藤サクラ)
ヒロイン。治の若い妻。クリーニング店工場でパートしている。毎日ビールを飲んでいる。
安藤サクラは近年の出演作に『DESTINY/鎌倉ものがたり』、『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』などがあります。
治か勝手にゆりを連れて来ると、自分の家に戻すべきと言うが、結局はそのまま家族になる。
クリーニング店をクビになり、祥太が捕まったせいで逃げようとして警察に捕まった。
実は治と結婚しておらず、過去に夫を正当防衛で殺し、初枝の家に家族として暮らしていた。
最後は家族として楽しかったと言って、罪を一人で全部被り、祥太拾った場所を教えた。

柴田亜紀(演:松岡茉優)
信代の腹違いの妹。JK見学店で「さやか」の源氏名で勤務する。家に金を入れず居候する。
松岡茉優は近年の出演作に『騙し絵の牙』、『ひとよ』などがあります。
一番のお婆ちゃんっ子で、店に来る常連客との虚しいやり取りに自己嫌悪をしてしまう。
実は初枝の元夫と別の女性との間に生まれた子供の娘で、妹への劣等感で家族になっていた。
初枝が亡くなってしまい、一人だけ悲しんでいたが、捕まった事で金の無心の事実を知る。
最後は無罪放免となっていたが、初枝の家に戻ってみるが、もぬけの殻で呆然と見ていた。

柴田祥太(演:城桧吏)
柴田家の長男。学校に通っておらず治と万引きをする。学校に通うのはバカだと主張する。
城桧吏は代表作に『となりの怪物くん』、『約束のネバーランド』などがあります。
治を父親だと言わず、友達のように接するが、二人で万引きしている時が一番楽しい。
ゆりに万引きを教えるが、店主に注意された事から疑心暗鬼になって自ら捕まってしまう。
実は治と信代がパチンコ店の駐車場で拾った子供で、本当の家族について何も覚えていない。
最後は児童養護施設に入って学校へ行き、治と会い、信代から拾われた場所を教えられた。

ゆり/北条じゅり(演:佐々木みゆ)
治が柴田家に連れてきた少女。毎晩のように家の外に出されていた。無口で主張をしない。
佐々木みゆは代表作に『便利屋エレジー』などがあります。
万引きの帰りに治が家に連れ帰ると、初枝が腕にある傷を発見して虐待をみんな察知する。
一度は元の家に戻されそうになるが、結局は家族の一員になって祥太から万引きを教わる。
万引きしようとして、疑心暗鬼の祥太がワザと捕まった事で本当の家族の元へ戻ってしまう。
最後は育児放棄をされる環境に戻り、一人で遊んでいたがら誰を待っている表情になった。

柴田初枝(演:樹木希林)
年金受給者で柴田家の生活を支えている。夫と離婚するが、死ぬまで年金をもらう。
樹木希林は晩年の出演作に『命みじかし、恋せよ乙女』、『エリカ38』などがあります。
世間的には一人暮らしをしていて、役所の職員が来ると家族はみんな外に出してごまかす。
元夫の月命日に後妻の息子夫婦の家に行き、慰謝料と称した金銭を毎回受け取っていた。
ゆりを加えて6人家族となって、みんなで海へ出かけて信代に意味深な言葉を言っていた。
最後は目を覚さないと亜紀が気付くと、すでに死亡して治と信代が床下に埋められてしまう。

感想

個人的な評価

本作は『第71回カンヌ国際映画祭』にてパルム・ドールを受賞した作品となります。
邦画は10本鑑賞してアタリが1本あるかないかというレベルだと認識しています。
まず、アイドルや経験の浅い役者が主演を張っている時点でプロモーション映画になる。
それと演技はみんながみんなミュージカルみたいに感情豊かにやるが、リアルな日本人はそんな言動はしない。
そのせいでリアリティがなく、どうせなら思い切って振り切る方がマシだと感じさせる。
しかし、本作はまさにリアルな日本人のしゃべり方、反応の仕方を家族が表現しているから自然と引き込まれます。
始まってからいきなりタイトル回収をして、どのような映画なのか分かりやすく演出している点も上手いと思いました。
邦画は感情を説明しながらダラダラとしたテンポがほとんどだが、本作はリアルな日本人を描いている故に間延びを感じさせない。
この家族はどれだけ美化しても犯罪行為をしているので、決して許されるモノじゃない。
ただ、救いとして誰もネガティブな発言をせず、今の自分たちを受け入れた上で生活しているところでしょう。
本来なら罵り合って、誰が悪いか、毎日ネガティブな雰囲気がありそうだが、本作にはそれをまったく感じさせない。
むしろ、その生活を精一杯生きている彼らの強さが見えてきます。
安定しているようで、実際はかなりの不安定な生活であり、いつ破綻してもおかしくない。
そして、後半には崩壊を迎えていくが、個人的にはあまり見たくなかったです。
久しぶりに感情移入して、この家族はこのままでもいいと思ってしまうほど崩壊する展開はとても悲しい気持ちになりました。
それぐらい惹きつけられるだけの親近感と魅力が本作にあったと思います。
全員が素晴らしい演技をしていますが、家族が崩壊して捕まった後の安藤サクラは圧巻でまさに女優という職業のスゴさを魅せた。
普通なら号泣したり、呆然としたり、何か明確な表情で崩壊した家族の事を思う演技をするだろうけど、ここの安藤サクラは神懸かった悲しむシーンを演じています。
それまでの経緯を短いシーンで感情として言葉ではなく、表情や仕草で伝えたのは素直にスゴイと思いました。
この家族は血が繋がっていないが、確かに強い絆はあったと思います。
だからこそ、家族の一員になったゆりが本当の家族のところに戻り、あの悲惨な日々をまた繰り返すと考えると悲しくなります。
確かに本作は犯罪行為をする彼らを美化しちゃいけないが、他人同士だからこそ血の繋がった家族とは違った絆があると感じさせました。