オデッセイ RE-2243

作品情報

公開年月  2015/10/02
ジャンル  SF/ドラマ
原作  アンディ・ウィアー 『火星の人』
監督  リドリー・スコット
脚本  ドリュー・ゴダード
製作  サイモン・キンバーグ、リドリー・スコット、ほか
製作国  アメリカ
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

人類3度目となる火星の有人探査計画“アレス3”は、いきなり猛烈な砂嵐に見舞われ、ミッション開始早々に中止を余儀なくされる。
更にクルーの一人で植物学者の宇宙飛行士マーク・ワトニーが撤収作業中に折れたアンテナの直撃を受けて吹き飛ばされ行方不明に。
リーダーの判断でクルーたちは火星を脱出し、行方不明となったワトニーが死んだ事をNASAが発表する。
ところが、ワトニーは奇跡的に一命を取り留めていたが、通信手段は断たれた上に次の“アレス4”が火星にやって来るのは4年後。
残っている食料はどんなに切り詰めても絶望的に足りなかったが、それでもワトニーは決して希望を捨てず助けを待つのだった。

登場人物&出演者

【アレス3】

マーク・ワトニー(演:マット・デイモン)
主人公。エンジニア兼植物学者。常に前向きで冗談を言うムードメーカーである。
マット・デイモンは俳優として高い評価を持ち、脚本家としてはアカデミー脚本賞を受賞。
本作ではマット・デイモンだからこそ一人であっても物語の面白さを保つ事ができた。
孤独の中で前向きに冗談を言って自身を励ますユーモアのある言動は絶妙なバランスでした。
決して諦める事はせず、なんとか生き延びようと計算をする姿にも説得力があった。

メリッサ・ルイス(演:ジェシカ・チャステイン)
指揮官兼地質学者。リーダーらしく責任感を持っていて、音楽は70年代のディスコが好み。
ジェシカ・チャステインは数多くの作品で映画賞を受賞する実力派の女優です。
現地での判断を任される難しい立場であり、マークの生存を知って一番責任を感じる。
だからこそ、彼を救い出そうと積極的に行動する意味合いは納得ができました。

リック・マルティネス(演:マイケル・ペーニャ)
操縦士。リーダーのルイスと同じく軍人であり、マークとは冗談を言う親友である。
マイケル・ペーニャは数多くの作品でコミカルからシリアスな演技で知られます。
やはり、マークとは親友であるからこそ、彼と通信した時の会話は微笑ましいモノでした。

ベス・ヨハンセン(演:ケイト・マーラ)
システムオペレーター兼原子炉技術者。火星に残したパソコンはマークに希望を与えた。
ケイト・マーラはリメイク版『ファンタスティック・フォー』のヒロインで知られています。
専門用語の連発で難しい役だったが、しっかりと自身の役目を果たしていました。

クリス・ベック(演:セバスチャン・スタン)
航空宇宙医師兼生物学者。チームの中で地味な存在だが、ヨハンセンとは両思いの仲になる。
セバスチャン・スタンと言えば、やはり『キャプテン・アメリカ』でスティーブの親友バッキーを演じた事が有名でしょう。
見せ場がなかったが、クライマックスでの宇宙遊泳とヘルメット越しのキスが印象に残る。

アレックス・フォーゲル(演:アクセル・ヘニー)
化学者兼天体物理学者。ドイツ出身で妻子を地球に残している地味な人でした。
アクセル・ヘニーはノルウェー出身で2010年からハリウッドで活躍しています。
ベックと同じく見せ場は少ないが、即席の爆弾を作っただけでも役目は果たしています。

【NASA】

サンダース(演:ジェフ・ダニエルズ)
NASA長官。本作では悪役的な立場であるが、原作よりも存在が薄くなっているらしい。
ジェフ・ダニエルズは数多くの作品に出演し、主に主人公をサポートする役を演じる。
人命よりもNASAのメンツを第一に考える現実的な思考だが、中盤以降は存在が薄くなる。

カプーア(演:キウェテル・イジョフォー)
NASA火星探査総括責任者。サンダースとは対照的に人命を第一に考える人物。
キウェテル・イジョフォーは主に映画や演劇などで幅広く活躍しています。
サンダースとは対比した立場であるが、こちらも存在感が中盤以降薄くなります。

ミッチ(演:ショーン・ビーン)
アレス3のフライトディレクター。NASAのメンツよりクルーを第一に考える人物。
ショーン・ビーンは劇中で一番死ぬキャラクターを演じる俳優として2014年にアメリカのサイトで1位に選ばれています。
彼の独断で長官の命令に逆らってしまうが、それこそが正しい判断だと言える行動だった。

ブルース(演:ベネディクト・ウォン)
NASAジェット推進研究所の所長。無理難題を突き付けられてもクリアしていく技術屋。
ベネディクト・ウォンはイギリス出身の中国系で数多くの作品に脇役として登場する。
結局、彼の叔父が技術提供してくれるおかげで新たなミッションを計画する事になります。

感想

個人的な評価
原作はSF小説で処女作となるアンディ・ウィアーの作品。
出版社を通さず、kindleで発売されて、3ヶ月で売上げトップ5になる。
これは新たなる小説を世間に発表し、商売として成立させた重要な作品とも言えるだろう。
そこに目をつけた製作陣の慧眼は素晴らしく、本作を実写映画化する価値がありました。
監督をリドリー・スコット、脚本をドリュー・ゴダードに依頼したのも大きい。
ディテールにこだわる完璧主義者のリドリー・スコットらしく、一見してリアルに見える本作の構築が非常に上手い。
そこにヒットしたテレビドラマシリーズの脚本家ドリュー・ゴダードが上手く調和している。
何より主人公であるマーク・ワトニーを演じるマット・デイモンもハマっています。
終始に渡って希望を持って前向きに行動するマークを巧みに演じ、その中で過酷な火星の生活を体で表現するところも説得力があります。
もちろん、彼を火星に置いてしまったアレス3のクルーたちも非常に良いキャラクターであり、マークを助けようと満場一致するところも盛り上がります。
地球ではNASAという組織よりも人間味のある対応した責任者、その一方でNASAのメンツを第一に考える長官の対比も分かりやすい。
一人を救う為に地球が1つになる様子を描いているけど、結局はアメリカと中国だけだった。
個人的に一番首を傾げている要素として、中国が出しゃばっている点だろう。
原作にあるのか知らないけど、多分、製作費を中国が出資しているから配慮した演出になったのだろうと予測する。
これは以前にも『トランスフォーマー/ロスト・エイジ』でもあって、不自然すぎる中国の登場に多くの人が首を傾げている現象と一緒。
宇宙飛行で世界をリードしてきたNASAがまさか中国に助力を求める点、かなり不自然だと感じてしまった。
その前に今の宇宙飛行をリードしているロシアじゃないかと思うが、アメリカにとって敵国になるので名前すら出てこなかった。
経済大国になっている中国が宇宙飛行の技術を開発しているのは分かるが、NASAと肩を並べるレベルとは思えない。
だからこそずっと違和感があって、これは完全に中国資本を取り込もうとしている魂胆が見え見えで萎えてしまった部分でもある。
ただ、それ以上にやっぱり、個人的にリドリー・スコット監督の作風はどうも引き込まれないところがあります。
確かに作品としては悪くないけど、すべては予想の範囲内で、最後は誰も死なないという都合が良すぎる展開も素直に良いとは言えない。
ディテールにこだわったリドリー・スコット監督だが、本作はリアリティよりもファンタジックになってしまっているのも違和感があった。
個人的にはもっとマークの火星で孤独に暮らす描写が欲しかったし、リドリー・スコット監督なら好きそうな題材だけに、どこか職業監督になったのは残念でした。