作品情報
公開年月 | 2015/11/28 |
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ジャンル | ホラー/コメディ/青春 |
原作 | 福満しげゆき 『娘味』 |
監督 | 中村研太郎 |
脚本 | 中村研太郎 |
製作 | 松本健太郎、角倫太郎 |
製作国 | 日本 |
鑑賞方法 | レンタルDVD |
あらすじ
母親と二人暮らしのミツオはうつむいて笑顔のない高校生だった。
彼の母親は幼い頃に父と愛人を殺し、その肉を食べて以来、食卓には人間の肉を使った料理が当たり前となっていた。
それによってミツオは肉を食べただけで性別と年代が分かるようになっていた。
そんなミツオはペットショップの店員カナと出会い、平穏だった母親との生活が徐々に変わっていくのだった。
登場人物&出演者
・ミツオ(演:森田桐矢)
主人公。小さい頃から母親から人肉を食べさせられ、性別や年代まで分かってしまう。
森田桐矢はテレビドラマや映画で活躍し、主にミュージカルで活動しています。
母親の苛烈な愛情の下で育っていて、出される料理に対して文句言わずに食べる。
そのせいで平然と人肉を食べられるが、カナとの出会いで彼は大きく変わっていきます。
そんな家庭環境のせいで笑顔が一切ないが、それは役と同調していると感じた。
何か含みを持たせるような表情が印象的だけど、管理人に告白した時は少し微妙でした。
・キョウコ(演:延増静美)
ミツオの母親。歯科医。ある意味、本作を支える真の主人公と言える人物でした。
延増静美はテレビドラマ、映画、舞台で活躍し、最近では『アイアムヒーロー』に出演しています。
キョウコなしでは語れない作品であり、ミツオを狂気の世界に引き込む張本人。
夫と浮気相手を殺したところから常軌を逸していた生活が始まり、それがやがて当たり前の生活になっていきます。
歯科医という事で麻酔剤は簡単に入手できて、その行動には一切に迷いがない。
ずっと笑顔でミツオと接しているが、時折見せる無表情な演技は実に恐ろしく感じる。
・カナ(演:大貫真代)
ヒロイン。ペットショップの店員。ミツオに対して優しく接して彼を変えていく。
大貫真代はテレビドラマ、映画、舞台などで活躍しています。
登場するのは中盤となるけど、母親と違った明るさを持っている人物。
なぜかミツオとはフレンドリーに会話するが、その理由がクライマックスで明かされる。
とにかく、彼女の見せる笑顔にはワケがあって、それが分かると納得ができます。
感想
個人的な評価
福満しげゆきの漫画家デビュー作『娘味』を実写映画化。
原作は短編のブラックコメディであるが、テーマとなっているカニバリズムが凄まじい。
カニバリズムを扱った作品として有名なのは『羊たちの沈黙』などで知られるハンニバル・レクターというキャラクターでした。
非常に知的であり、凶暴なレクター博士によるカニバリズムはかなりの衝撃でした。
しかし、本作はもっと落ち着いた日本にある日常的な生活の中にあるカニバリズムです。
ベジタリアンを除けば人が肉を食べるのは普通だが、本作の肉に大きな問題がある。
牛、豚、鳥ではなく、人の肉が調理されて食卓に並べられ実際に食べる。
どう考えても狂気とも言える光景だが、それを母と息子の食卓で静かに実現させている。
実写映画化とは言っても、本作は邦画なので、当たり前だが予算はほとんどない。
その為、舞台は主人公の家、ペットショップ、スーパー、歯科医とほとんどが室内です。
特に物語の比重が大きい主人公の家では物語の衝撃的な部分をほぼ占めている。
主人公のミツオを演じた森田桐矢はずっとうつむいていて、一切笑顔をみせていません。
なぜなら、狂気の中で生活する彼には母親の行動が常軌を逸している事を知っている。
だから心の底から笑う事ができず、うつむいているが、実は肉の性別や年代が分かるぐらい影響されているのです。
本作最大の魅力となるのは狂気の中で平穏に暮らす母親のキョウコを演じた延増静美です。
延増静美は本作で初めて見た女優だけど、物語に引きつけるだけの上手さがありました。
オマケとなるヒロインのカナを大貫真代が演じているが、母親と比べると少し弱いが、ミツオを変える重要な役柄でした。
全体的に音楽がない作品だが、これは逆に不気味さを引き立ち独特の雰囲気を生み出す。
ところどころには漫画的な演出があるけど、本作は決してヒューマンドラマではない。
しかし、そんな流れの中でちょっとした仕掛けも後から考えれば「なるほど」と思わせる。
「世間は狭い」、「類は友を呼ぶ」という言葉が浮かぶようなクライマックスは面白い。
ホラーはある程度まで行ってしまうコメディになるが、本作はギリギリのところで踏み留まっている絶妙なバランスでした。