西遊記/はじまりのはじまり RE-2285

作品紹介

公開年月  2013/02/10
ジャンル  アドベンチャー/コメディ/アクション
原作  伝奇小説『西遊記』(モチーフ)
監督  チャウ・シンチー
脚本  チャウ・シンチー、デレク・クォック、ほか
製作  チャウ・シンチー
製作国  中国
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

玄奘は川に出没する謎の妖怪を退治しようと悪戦苦闘する中、そこへ美人の妖怪ハンター・段が現れ、窮地を救われる。
更に玄奘は山奥で料理屋をやっている豚の妖怪を退治しようとするが、またしても窮地に陥るも、そこへ再び段が登場する。
しかし、強力な豚の妖怪に段も太刀打ちできず、師匠に教えを請うた玄奘は、五指山にいる孫悟空の力を借りようと向かうのであった。

登場人物&出演者

玄奘(演:ウェン・ジャン)
主人公。妖怪ハンターだが、心優しく妖怪の善の心を引き出して改心させようとする。
ウェン・ジャンは22作に出演し、テレビドラマや映画などで活躍しています。
術は歌う事で妖怪を改心させる事だが、結局本作では一度もできなかった。
そもそも、その設定自体はいらなかったような気がするぐらい後半で活かされていない。
何よりキャラクターとしての魅力がほとんどなく、主人公という設定だからいる感じ。
コミカルな演技はそれなりであるが、シリアスな演技とのバランスが上手くない。
キャラクターの設定に魅力がないのが大きいので演者に罪はないだろう。

(演:スー・チー)
ヒロイン。腕利きの妖怪ハンター。玄奘に一目惚れして手段を選ばず結婚を迫る。
スー・チーは近年の出演作には『黒衣の刺客』、『弾丸と共に去りぬ/暗黒街の逃亡者』などがあります。
多くのキャラクターが登場する中で、主人公よりもキャラが立っています。
スー・チーが演じているのも大きいけど、楽しそうに演じているのも大きい。
アクションはそこまでじゃないが、自然体の演技はなかなか良かった。
男勝りな演技は格好良く、女性らしい演技も魅力的でした。

孫悟空(演:ホアン・ボー)
五指山に封印される妖怪。500年も閉じ込められ、どんな手段を使っても脱出を図る。
ホアン・ボーは代表作に『レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳』があります。
初登場した時のみすぼらしいオッサンの時、軽いノリは非常に好印象だった。
誰もが持っていた孫悟空のイメージを一気にぶち壊してくれたのも大きい。
しかし、封印を解かれ妖怪に戻った孫悟空の扱いが急に雑となったのは残念だった。

沙悟浄(演:リー・ションチン)
河川に住む村人を苦しめる妖怪。人助けしたが勘違いで殺されて妖怪と化した。
リー・ションチンは8作ほどに出演し、『ミラクル7号』が代表作となっています。
冒頭に登場する妖怪として世界観を説明する役割だが、扱いが雑すぎた。

猪八戒(演:チェン・ビンキャン)
山中で食事処を経営して訪れる人を殺す妖怪。愛する妻に殺されて妖怪と化した。
チェン・ビンキャンは本作が映画デビュー作となっています。
人間の姿の時は笑った表情を一切崩さない演出が本作で一番面白いシーン。

虎筋蟷螂(演:シン・ユー)
アニキ。最強の妖怪ハンターを目指す一人。虎と蟷螂を象った拳法を使う。
シン・ユーは『カンフーハッスル』で人足の十二路譚腿の使い手として有名。
一番手で孫悟空と戦うが、あっさりとやられるのは『カンフーハッスル』を彷彿とさせる。

天残脚(演:チャン・チャオリー)
足じぃ。最強の妖怪ハンターを目指す一人。気を集中させ巨大化した右脚で戦う。
チャン・チャオリーは本作が映画デビュー作となっています。
一番の年長者で何かやりそうな雰囲気を持つが、孫悟空の前では歯が立たなかった。

空虚王子(演:ショウ・ルオ)
虚弱王子。最強の妖怪ハンターを目指す一人。術で数本の飛剣を操って戦う。
ショウ・ルオは台湾出身で、俳優の他に歌手やタレントとしても活躍しています。
三番手として孫悟空を相手に善戦するも、本気を出されてあっという間に倒される。

 感想

個人的な評価

中国四大奇書の一つである『西遊記』をモチーフに大胆な脚色がされた実写映画。
それまで主演と監督を兼ねていたチャウ・シンチーが監督に専念した初の作品となっている。
『少林サッカー』や『カンフーハッスル』と大胆なアクションとCGを取り入れた次世代の香港映画を作った偉大な監督。
それが監督に専念するという事、更に誰でも知っているモチーフが使われているので、当然のように期待した。
実際に作品が始まって数分で本作はコメディでありながら、グロテスクな描写も辞さないと知って少し引きました。
冒頭では沙悟浄の退治にたっぷり時間を使い、世界観や主人公にヒロインの説明している。
確かに西遊記の骨組みであるが、主人公の玄奘が本筋である天竺へ旅する前の物語だが、かなりアレンジしています。
あくまで玄奘が三蔵法師に覚醒するまでの過程を描いているのが本作の特徴です。
しかし、自分としてはもっと子供向けの作品だと思っていただけに、あまりのグロテスクな描写に面白さを感じられなかった。
合間にはチャウ・シンチー監督らしいギャグ、集団による寸劇などもあるけど、スタート時点で本作の根幹に疑問を持ってしまったせい楽しめなかった。
素直に楽しめなくなった本作は、どうしても粗が気になってしまい、それが最後まで続いた。
妖怪の造形があまりにもグロテスクで、小さい子供が見たら確実にトラウマになる。
玄奘は真面目そうで実は下心をずっと持っていて、クライマックスで強引すぎる展開で覚醒するのも納得がいかない。
『少林サッカー』や『カンフーハッスル』では丁寧に伏線を置いていたが、本作はなんだか雑に感じてしまった。
ヒロインとなった段についても、登場が強引すぎるし、玄奘を結婚相手に選ぶ理由も突飛すぎて首を傾げる。
とにかく、本作は全体的に強引な部分が多く、最後の部分まで整合性よりもインパクトを重視したせいで歪な印象を持ってしまった。
沙悟浄や猪八戒はセリフなしで登場しているけど、どちらもキャラクター性のないバケモノにしてしまっている。
一応、猪八戒が人間として登場した時のコミカルなシーンは良かったので、沙悟浄の扱いが雑になったのは本当に残念である。
最後に登場した孫悟空も軽いノリのキャラクターは良かったのに、妖怪となってからの暴れるギャップが悪い方に行ってしまっている。
結局、どんなに強くても覚醒した主人公の前では単なる猿になる展開も強引すぎた。
途中で登場する妖怪ハンターたちも面白そうなのに、ムダ使いという言葉が似合うほど残念な扱いであった。
期待していた内容とかけ離れた内容になるのは構わないが、それが残念な方向になってしまったのはガッカリでした。