アンダー・ザ・シャドウ/影の魔物 RE-3004

作品紹介

公開年月  2017/01/07
ジャンル  ホラー/サスペンス
原作  なし
監督  ババク・アンヴァリ
脚本  ババク・アンヴァリ
製作  エミリー・レオ、オリヴァー・ロスキル、ほか
製作国  イギリス、ヨルダン、カタール、イラン
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

1988年、イラン・イラン戦争の首都テヘラン、若き母親シデーは5歳の娘ドルサと最前線に招集された医師の夫の帰還を待っていた。
そんなある日、シデーたちが住むアパートにミサイルが直撃するも爆発せず、隣人の引き取った孤児メフディは邪悪な神“ジン”を連れて来たと告げる。
ドルサもジンの存在を主張して様子がおかしくなり、アパートでは戦争の激化と立て続けに起こる異変に隣人たちが次々と出て行くのだった。

登場人物&出演者

シデー(演:ナルゲス・ラシディ)
主人公。過去に極左団体で活動していた。医師になるべく大学の復学を目指して奔走する。
ナルゲス・ラシディは代表作に『イーオン・フラックス』、『スピード・レーサー』がある。
過去の経歴のせいで復学が難しいと言われ、結局は諦めて医師である夫にも事実を伝えた。
実際は大学時代に政治活動ばっかりをしていて、勉強漬けだった夫を小バカしていたという。
ドルサが口にする“ジン”を信じず、放置した結果、最悪の状況になって追い詰められる。
最後はそれまで見せていない母性を発揮して、ジンから娘を取り戻してアパートを脱出した。

ドルサ(演:アヴィ・マンシャディ)
シデーの一人娘。いつも人形のキミアを持っている。隣人の男の子からジンの話しを聞く。
アヴィ・マンシャディは本作が長編映画デビュー作となります。
シデーが母を亡くしたばかりで精神が不安定になり、怒鳴れる事に慣れてしまっている。
ジンは実際にいるとしてシデーに何度も話すが、その度に作り話だと聞いてもらえず。
母親らしい事をしないシデーよりジンの方が信頼できると考え、明らかな溝を作ってしまう。
最後は急に怖くなって母性に目覚めたシデーに助けてもらい、無事にアパートを脱出した。

アイラージ(演:ボビー・ナデリ)
シデーの夫でドルサの父親。医師。大学時代は政治活動に興味がなく勉強漬けの日々を送る。
ボビー・ナデリは代表作に『ブライト』、『アルゴ』などがあります。
その当時は政治活動に熱を入れていたシデーに小バカにされるが、その結果医師となった。
政治活動のせいで復学できないシデーは仕方ないとして、母として務めるべきだと説得する。
国から招集命令がで激戦地に派遣される事になるが、家に残ったシデーたちを心配する。
最後は妻と娘を心配して戦地から電話を入れて、街から何度も離れるように言い聞かした。

エブラヒミ夫人(演:アラム・ガセミー)
シデーたちが住むアパートの大家。両親を戦争で亡くしたメフティの親戚で引き取っている。
アラム・ガセミーは代表作に『Derakhte Golabi』などがあります。
両親を亡くしてから無口だったメフティを不気味だとシデーに話し、何かあると推測する。
他のアパート住民と違って豪奢な生活を送っていて、一度捕まると長話に付き合わされる。
最後はシデーが家賃を入れたおかげで戦争が激しくなっている街を離れる事ができた。

ファクール夫人(演:スーザン・ファロクニア)
シデーと同じアパートに住んでいる老齢の女性。いつもドルサの面倒を見てくれている。
スーザン・ファロクニアは本作が長編映画デビュー作となります。
シデーが大学への復学が難しいと伝えられると、戦争が終わったら変わると励ましていた。
ドルサが隣人のメフティから怖い話を聞かされているとシデーに説明していた。
最後は息子の願いを聞いて、夫とともに街を離れる決意をして、夜こっそりと抜け出した。

メフティ(演:カラム・ラシェイダ)
シデーたちが住むアパートの隣人。戦争で両親を亡くし、親戚であるエブラヒミ家に来る。
カラム・ラシェイダは本作が長編映画デビュー作となります。
両親を亡くしたショックで一切の会話をしないが、なぜかドルサにジンの事を話している。
同居しているエブラヒミも不気味だと言われているが、あくまでドルサに警告を促す。
最後は街で一人立っているところでシデーに拾われ、エブラヒミの家族と街を後にした。

感想

個人的な評価

本作は『アカデミー賞外国語映画賞』にてイギリス代表作品となっています。
更に『サンダンス映画祭』や『ウィーン国際映画祭』などに出品されて受賞しています。
イギリスの代表作品となっていますが、スタッフとキャストは中東出身者で固めています。
つまり、本作はイギリス映画と言いながら立派な中東映画であり、何よりホラーというジャンルはまた珍しい。
それだけでアカデミー賞にノミネートされたが、ホラー映画として非常に弱いと思います。
一応、恐怖の対象となるのは「千夜一夜物語」あるいは「アラジンと魔法のランプ」に登場する“ジン”となっています。
ただし、本作での“ジン”は魔物のような存在となっていて、風とともに全身を布で覆った微妙な姿で登場します。
物語の大半はストレスMAXとなっている母親がノイローゼとなって、暴れ回っているような展開でしかなかった。
娘を連れ去ろうとする“ジン”を際立たせようとして、母親をダメ人間にしてしまったのは失敗だったと思います。
もっと母親に対する共感や同情を与える役にしないといけないのに、それを正反対のダメ人間にして観ている側をイライラさせるだけになっている。
本作のような母親では魔物の言っている事は決して間違えじゃないし、いくら娘を愛していると言っても説得力に欠けてしまう。
途中から魔物の言葉に娘が惑わされるけど、ほぼ正論という点でも母親の役割が完全に失われているのが分かる。
ラストではなんとか魔の手から逃れる事になるけど、結局、何を伝えようとしていたのか今一つ分からない。
確かに中東での女性に対するルールは厳しいし、色々と不便なところがあるけど、これが“ジン”との繋がりにはなっていない。
単純に自己中心な母親がストレスを娘にぶつけて、状況が最悪になってからようやく気付いて、急に母性を出して問題を強引に解決する物語にしか感じなかった。
そもそも“ジン”の目的が分からず、ただ大切なモノを連れ去る上辺だけの設定でキャラクターとしても非常に弱かった。
本作はただ中東を舞台にした物珍しいホラー映画というだけでノミネートされた感じでした。
それと、中東でもガムテープは便利な道具なのかと勘違いしてしまう描写が多く、監督はそこから何を伝えたかったのかまるで分かりません。