帝都物語 VD-403

作品紹介

公開年月  1988/01/30
ジャンル  ホラー/ファンタジー
原作  荒俣宏 『帝都物語』
監督  実相寺昭雄
脚本  林海象
製作  堤康二
製作国  日本
鑑賞方法  動画配信サービス

あらすじ

明治末期、都破壊を目論む謎の軍人・加藤保憲が出現し、サイキック・パワーを自在に操って東京の地霊である平将門を目覚めさせる。
加藤の野望を阻止するべく、平将門の末裔である辰宮洋一郎と妻の恵子、そして一千年に渡って日本を守ってきた陰陽師の末裔・平井保昌が立ち上がる。
そんな彼たちに幸田露伴、森鴎外、泉鏡花ら近代日本を象徴する人物が協力するのだった。

登場人物&出演者

辰宮洋一郎(演:石田純一)
平将門の末裔で一族の長子。大蔵省に勤めている。加藤の復活を知って平井と迎え撃った。
石田純一は代表作に『鉄騎兵、跳んだ』、『愛と平成の色男』などがあります。
妹である由佳理に対して兄妹以上の感情を持ち、気がある鳴滝から遠ざけようとしていた。
加藤が東京を破壊する時、平井から共闘を頼まれるも、平将門を復活する可能性から拒む。
加藤が大連に準備していると、帝都東京計画の中で聖獣を配置して独自に守ろうとした。
最後は加藤と対決し、自らを犠牲にして平将門を封印し、何事もなく由佳理と娘と生活する。

辰宮恵子(演:原田美枝子)
洋一郎の妻。相馬梯神社の巫女。父親から平将門を封印する存在として重要な使命を帯びる。
原田美枝子は代表作に『愛を乞うひと』、『OUT』などがあります。
加藤が関東大震災を引き起こして平将門の復活を目論むが、見事に役目を果たして阻止する。
その後は洋一郎と結婚して、加藤から帝都東京を守ろうとするが、雪子の存在で危機に陥る。
加藤の目論見を探っているうちに存在がバレてしまい、妻にしようとする彼に狙われる。
最後は洋一郎とともに加藤と対峙し、自分の命を犠牲にしてなんとか倒して姿を消した。

辰宮由佳理(演:姿晴香)
辰宮家の末裔で洋一郎の妹。洋一郎をかなり慕っていて、兄妹以上の感情を持っていた。
姿晴香は代表作に『夢』、『GO』などがあります。
加藤がやって来ると、平将門を復活させる依代として拉致され、陰陽術で孕まされる事に。
辰宮家に戻ると、平井が加藤の術を解除させるが、結果的に失敗して孕んだ子供を産んだ。
成長した娘が加藤の印をつけて帰ると、危機感を募らせるが、目の前で雪子を拐われる。
最後は恵子が加藤を倒し、平和を取り戻すと、洋一郎と娘の雪子と幸せに暮らしていた。

辰宮雪子(演:山本清美)
由佳理の娘。加藤に拉致され、孕まされた子供であり、結局は生まれて成長していた。
山本清美は代表作に『STAY GOLD』、『花物語』などがあります。
平将門の復活を目論む加藤に狙われ、新たな依代として使うも自分の娘じゃないと判明する。
実は兄妹以上の感情が暴走した結果、洋一郎と由佳理の間にできた娘で強大な霊能力を持つ。
最後は恵子が加藤を倒し、実の父である洋一郎と母親の由佳理と平和な日常を過ごしていた。

鳴滝順一(演:佐野史郎)
理学士。洋一郎の友人。洋一郎が溺愛する妹の由佳理に片想いをして何かと気にしていた。
佐野史郎は代表作に『夢みるように眠りたい』、『たたら侍』などがあります。
由佳理が加藤に拉致される際、ただ呆然と棒立ちしながら見ているしかなかった。
由佳理が戻っても顔すら見る事ができず、幸田から加藤に孕まされたと聞いて愕然とする。
加藤が大連から日本にやって来ると、幸田と迎え撃とうとするも棒立ちで肩を刺される。
最後は加藤が危険すぎると体感し、洋一郎に田舎へ逃げると言って尻尾を巻いて逃げた。

寺田寅彦(演:寺泉憲)
物理学者。渋沢栄一が開いた帝都東京の改造計画に出席して独自の地下都市を提案した。
寺泉憲は代表作に『電車男』、『ブルーヘブンを君に』などがあります。
当然のように独自の構想を聞いてもらえず、関東大震災が発生するとその脆さを話していた。
早川が接触して地下構想を取り入れる事に歓喜して、何かと協力を惜しまずに知識を貸した。
トンネル工事の途中で問題が発生し、鬼の仕業だと早川が言い出すも幻覚と片付いてしまう。
最後は人造人間を使って鬼たちを退治させ、見事にトンネルを開通させる事に成功させた。

黒田茂丸(演:桂三枝)
風水師。独自に東京の地脈を読んでいて、邪悪な気配に気付いて調べていた。
桂三枝は代表作に『愉快な極道』、『のみとり侍』などがあります。
二宮金次郎の像を街中に設置して、地脈を乱している加藤の所在を探ろうとしていた。
その際に通りかかった恵子から強い霊力を感じ取り、加藤が危険な存在だとして忠告される。
最後は加藤の居場所を恵子に教え、対決に向かう彼女の思いをなぜか聞く役になった。

幸田露伴(演:高橋幸治)
膨大な魔術の知識を持つ。土御門一門と加藤の襲来を察知し、迎え撃とうとするも失敗する。
高橋幸治は代表作に『戦争と人間』、『ゴジラ vs ビオランテ』などがあります。
洋一郎に加藤を一緒に倒そうと誘うが、平将門の復活を恐れた彼から拒否されて一人で戦う。
大連へ向かった加藤がいない間、平井から受けた占いと秘伝の書で迎え撃つ準備を進める。
ついに加藤が上陸して倒そうとするが、すべてを跳ね返されてしまい、またしても失敗する。
最後は倒れてしまった由佳理の面倒を見て、加藤との対決を決意した洋一郎を見送った。

平井保昌(演:平幹二朗)
土御門家の末裔で陰陽師。一門を率いる総帥。帝都東京の地脈を術で吉相に変換する。
平幹二朗は代表作に『三匹の侍』、『獣の剣』などがあります。
渋沢が帝都東京の改造計画を知り、地脈が乱れないように介入を申し出て会議に出席する。
霊的な流れを無視した改造計画に辟易して退席し、地脈の乱れを感じながら何もできず。
秘伝の書を燃やして未来を憂う中、一緒にいた幸田に最後の書を託して加藤の計画を暴く。
最後は命と引き換えに東京の未来を占うが、加藤が現れて簡単に教え、結局は無駄死にした。

渋沢栄一(演:勝新太郎)
大蔵省の大臣。独自の帝都東京の改造計画を進めている。平井から地脈の乱れを聞かされる。
勝新太郎は晩年の出演作に『バルテュス』、『浪人街/RONINGAI』などがあります。
当初は平井の地脈を取り入れた改造計画を打ち立てるが、関東大震災ですべてを破壊される。
最後は寺田を招いて地下都市構想を考えるが、結局は実現できずに静観をしていた。

加藤保憲(演:嶋田久作)
帝都とうの破壊を目論む謎の軍人。安倍晴明の末裔であり、平将門の復活を計画している。
嶋田久作は代表作に『大誘拐』、『孤狼の血』などがあります。
平将門の末裔である由佳理を拉致し、術て自らの子供を孕ませた後、大連へ準備に向かう。
大正十二年に日本へ戻ると、関東大震災を引き起こすも平将門を復活できずに悔しがる。
平将門を封印し続ける恵子の存在を知ると、自分の妻にすると宣言して付け狙っていた。
最後は雪子を利用するも自分の子供じゃないと知り、恵子の自己犠牲で倒されてしまう。

感想

個人的な評価

本作は荒俣宏の小説デビュー作『帝都物語』を基に作られています。
原作の「神霊篇」から「龍動篇」まで映画化し、その年で日本映画の8位という配給収入を記録しています。
あの名作格闘ゲーム「ストリートファイター」のボスであるベガのモデルとなった加藤保憲の存在しか知りません。
いつもテレビで解説役をしている荒俣宏の小説だが、原作の方は博識な彼の知識を詰め込んだ内容になっているらしい。
これは個人的に『指輪物語』のJ・R・R・トールキンといつイメージを持っています。
つまり、オカルトやファンタジー的な内容でありながら、エンターテインメントとしての面白さはあまりないという推測を持ちます。
確かに圧倒的な知識量はあると思いますが、それがそのまま面白さに繋がるとは限らない。
残念ながら本作はそれに当てはまっていて、序盤は期待させられるが、中盤からダラダラのグダグダになって間延びしまくります。
加藤保憲を演じる嶋田久作の顔面はインパクト絶大だが、それを支えるストーリーは良く分からないまま終わってしまう。
そう考えると、同系統の『指輪物語』を解釈し、最高のエンターテインメントに仕上げたピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』はスゴイと感じました。
いくら原作が作者の豊富な知識で飾っても、基本的な楽しませる事に関して本作は足りていないと感じました。
絵面のインパクトがあっても、ストーリーに共感どころか理解させる気がない作品だとなんだかもったいないと考えてしまう。
やはり、実写映画にするならば、何も知らない観ている側に分かりやすく描写させるべきですが、本作はどうしても事実を物語に結びつけようとする方に力を入れている。
それと気になったのは、出演者たちの演技レベルに差がありすぎたせいで、せっかくのシリアスな場面も微妙な印象を持ってしまう。
特に勝新太郎の重厚な演技をする一方、セリフをしゃべるだけで精一杯の石田純一が同じ映画に出ているのはおかしいとも感じた。
本作は嶋田久作の顔面と存在感だけで持っているだけで作品としては退屈でした。