ムーンライト RE-2930

作品紹介

公開年月  2016/10/21
ジャンル  ヒューマンドラマ
原作  タレル・アルヴィン・マクレイニー 『In Moonlight Black Boys Look Blue』
監督  バリー・シェンキンス
脚本  バリー・シェンキンス
製作  アデル・ロマンスキー、デデ・ガードナー、ほか
製作国  アメリカ
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

内気な性格のシャロンは学校で“オカマ”と呼ばれ、イジメっ子たちから標的にされる日々。
その言葉の意味すら分からないシャロンにとって、同級生のケヴィンだけが唯一の友達。
高校生になっても何も変わらない日常の中である夜、月明かりが輝く浜辺で、シャロンとケヴィンは初めてお互いの心に触れる事になるのだった。

登場人物&出演者

【少年時代のシャロン】

リトル(演:アレックス・ヒバート)
内気でいつもイジメを受けている。イジメられて廃墟に隠れると、フアンが助けてくれた。
アレックス・ヒバートは代表作に『ブラックパンサー』などがあります。
何も話さずフアンの家で食事を取り、一夜を過ごすと帰宅するも母親が心配して怒っていた。
その後、フアンが気にかけて遊びに連れて行ってもらうが、母親にいつも怒られている。
ヤクをやっている母親に理由もなく怒鳴られて、耐えられずに思わず家を飛び出した。
最後はフアンの家にやって来るが、彼の商売で母親がダメになっている事を尋ねて帰った。

ケヴィン(演:ジェイデン・パイナー)
シャロンとは同級生。いつもイジメを受けていたシャロンを心配して、声をかけてくれる。
ジェイデン・パイナーは本作が長編映画デビュー作となります。
最後は仲間としてシャロンを迎え入れて、なんとか彼の心を開かせようと一生懸命やる。

ポーラ(演:ナオミ・ハリス)
シャロンの母親。シングルマザーとしてシャロンを育てるが、感情的でいつも怒っている。
ナオミ・ハリスは近年の出演作に『ランペイジ/巨獣大乱闘』、『素晴らしきかな、人生』などがあります。
フアンが保護して一夜預けて連れ戻すが、感謝どころか敵意を持った目で追い払った。
フアンが勝手にシャロンを遊びに連れ出して帰ると、一切感謝せずドアを閉めて追い出す。
いつも男と一緒にいてフアンからヤクを買って、堂々と彼のナワバリで吸っていた。
最後はフアンにヤクを吸っているところを注意され、家に帰るとシャロンに怒鳴っていた。

テレサ(演:ジャネール・モネイ)
フアンの恋人。フアンと同棲していて、彼が連れて来たシャロンに食事を与えていた。
ジャネール・モネイは歌手として活躍し、映画の代表作に『ドリーム』などがあります。
最後は内向的で問題を抱えているシャロンを気遣い、優しい言葉をかけて励ましていた。

フアン(演:マハーシャラ・アリ)
キューバ人でヤクの売人。順調に稼いでいたが、廃墟に隠れていたシャロンを見つけて保護。
マハーシャラ・アリは近年の出演作に『グリーンブック』、『スパイダーマン:スパイダーバース』などがあります。
恋人のテレサがいる家に連れて行き食事を与え、無口で事情を話さないシャロンを気にする。
父親がいなくて内向的なシャロンを遊びに連れて行くが、その度に母親からバカにされる。
シャロンの母親がヤクを決めているところを注意するも、売人の指摘を受けて反論できず。
最後は家を飛び出してやって来たシャロンの言葉を聞いて、売人である事実を恥じた。

【青年時代のシャロン】

シャロン(演:アシュトン・サンダース)
ティーンエイジャーのシャロン。相変わらず同級生からイジメを受けるも反論できずにいる。
アシュトン・サンダースは代表作に『ストレイト・アウタ・コンプトン』、『イコライザー2』などがあります。
特にテレルから「オカマ」呼ばわりされてイジメの対象になるが、それでも抵抗できない。
薬物中毒者の母親に嫌気が差してビーチに来ると、ケヴィンが来て一線を越えてしまう。
テレルのゲームに参加させられたケヴィンに殴られ、それによって自身の中で爆発する事に。
最後は教室にいたテレルを背後から殴り倒し、そのまま警察に連行されてしまう。

ケヴィン(演:ジャレル・ジェローム)
ティーンエイジャーのケヴィン。いつも女の子を引っかけてあっちこっちでセックスする。
ジャレル・ジェロームは代表作に『ファースト・マッチ』などがあります。
内気なシャロンとは正反対に陽気だが、校内でのセックスがバレて危うく停学になる。
ビーチにやって来たシャロンの元にやって来ると、一緒にマリファナを吸って一線を越える。
テレルとも友人であり、中学校でやったゲームと称してターゲットのシャロンを殴る事に。
最後は怒りが爆発してテレルを殴り倒し、警察に連行されるシャロンを見るしかなかった。

ポーラ(演:ナオミ・ハリス)
シャロンの母親。薬物中毒者になっている。常に酩酊状態でヤクを必要としている。
その為に売春婦として金を稼いでいたが、足りない時はシャロンから奪い取っていた。
最後は落ちぶれて愛情も注がない自分にシャロンが愛していないと分かって口にしていた。

テレサ(演:ジャネール・モネイ)
フアンの元恋人。すでにフアンは死んでいたが、未だにシャロンの面倒を優しく見ていた。
薬物中毒者となった母親の代わりに色々と助言して、何かと親身になって援助してくれた。
最後はフアンがいなくなってもシャロンが強く生きるようにアドバイスを送っていた。

テレル(演:パトリック・デシル)
シャロンの同級生。何かにつけてシャロンを目の敵にして「オカマ」呼ばわりしている。
パトリック・デシルは本作が長編映画デビュー作となります。
いつも一人でいるシャロンを見つけて小バカにして、反論すら許さない圧力を与えている。
ついにケヴィンを使ってシャロンを殴らせ、顔にケガを負わせるが告発されずに済む。
最後はブチ切れたシャロンがやって来て、問答無用で背後から椅子で殴り倒されてしまう。

【壮年時代のシャロン】

ブラック(演:トレヴァンテ・ローズ)
大人になったシャロン。過去を忘れる為に引っ越すが、結局フアンと同じヤクの売人となる。
トレヴァンテ・ローズは代表作に『ブラック・ハッカー』、『ホース・ソルジャー』がある。
過去の自分と決別する為に体を鍛え上げ、周囲から“ブラック”と呼ばれるようになる。
ずっと疎遠だったケヴィンからの電話で彼が働く店に行く事を決意し、母親とも和解した。
ケヴィンとの約束で彼が働いている店に行き、そこで彼の人生について聞いて気持ちが変化。
最後はケヴィンの家で彼以外に触れ合っていない事を告白し、忘れていた自分を思い出す。

ケヴィン(演:アンドレ・ホランド)
大人になったケヴィン。刑務所に服役して出所し、保護観察付きで料理人として店で働く。
アンドレ・ホランドは代表作に『42/世界を変えた男』、『グローリー/明日への行進』などがあります。
シャロンに似た男が客としてやって来て、同時に彼を思い出す音楽を聴いて電話していた。
結婚していたが、すでに男女の関係を解消して、子供の為に仲良くやっているだけ。
シャロンが店に来ると、自慢の料理を食べさせるが、仕事が売人だと知って険しい顔になる。
最後はシャロンが自分以外を受け入れなかった事を知り、ずっと彼が求めた優しさを与えた。

ポーラ(演:ナオミ・ハリス)
シャロンの母親。薬物中毒者から立ち直って、今では薬物治療施設にて住み込みで働く。
訪れたシャロンと会話するが、売人になっている息子を説得するも資格がないと自覚する。
最後は道に悩んでいたシャロンを助けられないと知り、ダメな母親だったと後悔していた。

感想

個人的な評価

本作は『第89回アカデミー賞』にて作品賞、助演男優賞、脚色賞を受賞し、監督賞、助演女優賞、作曲賞、撮影賞、編集賞にノミネートされています。
『第74回ゴールデングローブ賞』でも、『ラ・ラ・ランド』に次いで2番目のノミネート数を誇っています。
原作は元々が戯曲として書かれたモノだったが、未上演で未発表だった事で異なる部門でもノミネートを受けています。
このように本作は『ラ・ラ・ランド』に並ぶ、2016年を代表するヒット作となっています。
ずっと気になっていた作品でしたが、重いテーマだろうと思ってなかなか鑑賞する気持ちが持てなかったです。
ついに鑑賞する事になったが、主人公であるシャロンが送った三つの時代を物語にしている。
ハッキリ言って、本作は一つの物語として穴だらけで様々な伏線が説明や回収がないまま終わってしまっている。
しかし、それは本作だから許されるモノであり、あくまで目的はシャロンが自分を取り戻す物語なのである。
あのような劣悪な環境で、更に自身もゲイだという事実もあって、当然のようにイジメの対象になってしまう。
母親は薬物中毒者でマトモな愛情も受けず、誰にも相談できない生活の中でシャロンが押し潰されてもおかしくない。
それでもシャロンが強く生きようとしていた矢先、唯一の友人で一線を越えた親友に裏切られた事で別人に変貌してしまう。
あのような環境ではヤクの売人になってもおかしくないが、シャロンの場合は裏切りからの爆発という悲しいトリガーでした。
その後も強く生きようとしていたが、実は自分を偽ってずっと暮らしていた事が分かる。
最後にケヴィンと和解して幼少期の自分が月明かりの下にいたシーンは、シャロンが忘れていた自分を取り戻した意味合いとなります。
本作は“敢えて”伏線を回収せず、考えさせる構成になっているが、いつもハッキリ答えを知りたい自分には納得できました。
シャロンとケヴィンはその後どうなったとか、売人を辞めたとか、色々と想像をかき立てる作品として非常に上手い穴を提供してくれています。
いくら強く生きようとしても、誰の助けがないと生きていけない人間をシャロンの視点から描いた本作はなかなか良かったです。