グリーンブック RE-3133

作品紹介

公開年月  2018/11/16
ジャンル  ドラマ/コメディ/伝記
原作  ドン・“ドクター”・シャーリーとトニー・ヴァレロンガのエピソード
監督  ピーター・ファレリー
脚本  ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・ヘインズ・カリー、ほか
製作  ジム・バーク、ニック・ヴァレロンガ、ほか
製作国  アメリカ
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

1962年のアメリカでニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無教養だが家族思いのイタリア系男性。
店の改修で仕事がなくなり、バイトを探していた彼はカーネギーホールに住む天才黒人ピアニストのドクター・シャーリーの運転手の仕事が舞い込む。
二人は黒人が利用できる施設を記した旅行ガイド“グリーンブック”を使い、どんな厄介ごとが待ち受けるか分からない南部へ旅立つのだった。

登場人物&出演者

トニー・リップ/トニー・ヴァレロンガ(演:ヴィゴ・モーテンセン)
主人公。イタリア系。高級クラブの用心棒。クラブが改装する為に仕事がなく探している。
ヴィゴ・モーテンセンは近年の出演作に『はじまりの旅』、『約束の地』などがあります。
黒人に対する偏見を持っているが、生活する為ならばシャーリーの運転手を引き受ける事に。
当初は金の為だけシャーリーに従っていたが、本物の天才だと分かって彼を認めていく。
シャーリーから多少の教養を仕込まれ、黒人差別の多い土地柄で彼の安全第一を考えていた。
最後はクリスマス・パーティに来たシャーリーを出迎え、家族や親戚と彼を快く紹介した。

ドン・シャーリー/ドクター・ドナルド・シャーリー(演:マハーシャラ・アリ)
主人公。天才黒人ピアニスト。他に心理学、音楽、典礼芸術の博士号を持つ秀才でもある。
マハーシャラ・アリは近年の出演作に『アリータ:バトル・エンジェル』、『スパイダーマン:スパイダーバース』などがあります。
黒人差別の激しい南部でツアーを控えていて、問題解決能力に長けるトニーを雇う事に。
当初からトニーの粗暴な言動を注意していたが、彼からの影響で次第に堅物さが取れていく。
一人の人間として接するトニーから常に持っていた孤独感から解放され、彼と打ち解ける。
最後はクリスマス・パーティするトニーの家に行き、彼の家族と親戚に歓迎される事になる。

ドロレス・ヴァレロンガ(演:リンダ・カーデリーニ)
ヒロイン。トニーの妻で同じくイタリア系。黒人への偏見はあまりなく普通に接している。
リンダ・カーデリーニは代表作に『ブロークバック・マウンテン』、『アベンジャーズ』シリーズなどがあります。
トニーが生活費を稼ぐ為にシャーリーと旅に出る事を承諾し、彼らの帰りを待っていた。
旅先からトニーのヘタクソな手紙を受け取っていたが、上手くない文章を読みながら喜ぶ。
途中でシャーリーから提案でロマンチックな手紙になると、親戚の妻たちと朗読していた。
最後はクリスマス・パーティに来たシャーリーを歓迎し、彼の手紙に心から感謝していた。

オレグ(演:ディメター・マリノフ)
シャーリーとトリオを組むチェリスト。ツアーの出発前にトニーにタバコを分けていた。
ディメター・マリノフは代表作に『ネイビーシールズ』、『トリプル9/裏切りのコード』などがあります。
ドイツ系でシャーリーと同じぐらい堅物で笑わないが、軽い態度のトニーを観察していた。
トニーが落ちていた売り物の石を金も払わず拾った事をシャーリーに告げ口していた。
シャーリーが黒人差別の多い南部でのツアーの真意を知っていて、トニーに説明をしていた。
最後はシャーリーがラストのステージを放棄した事で、それに従ってニューヨークへ帰った。

ジョージ(演:マイク・ハットン)
シャーリーとトリオを組むベーシスト。ツアーの出発前にトニーにトリオだと説明していた。
マイク・ハットンは代表作に『ヒーローをぶっ飛ばせ!』、『ザ・ヴィジランテ/世界最強の私設軍隊』などがあります。
堅物なシャーリーやオレグと違って、まだトニーに近い要素を持っていて何かと静観する。
泊まっていたホテルでオレグと一緒に地元の女性に声をかけ、プールサイドで談笑していた。
ステージで適当な対応する地元スタッフに文句を言うトニーをヒヤヒヤした目で見ていた。
最後はシャーリーがラストのステージを放棄した事で、それに従ってニューヨークへ帰った。

キンデル(演:ブライアン・ステパニック)
シャーリーが最後に演奏するクリスマス・コンサートをするレストランの支配人。
ブライアン・ステパニックは代表作に『アイランド』、『トランスフォーマー』があります。
当然のようにシャーリーをVIPとして出迎えるが、差別的な土地柄の方を優先している。
シャーリーを楽屋と称した物置に案内して、レストランに来た彼を拒否してしまう。
土地柄の習慣でシャーリーを拒否し、説得するトニーを買収しようとして反感を買った。
最後は気分を害したシャーリーの判断でステージが中止となり、客の対応に追われた。

感想

個人的な評価

本作は『第91回アカデミー賞』にて作品賞、脚本賞、助演男優賞を受賞し、主演男優賞、編集賞にノミネートされています。
他に『トロント国際映画祭』では観客賞、『ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞』で作品賞を受賞しています。
アカデミー賞で毎度話題になる作品に関して、個人的に面白いと思ったのはあまりないという経験をしています。
あくまでアカデミー賞の受賞作というのはアメリカの社会性を反映したモノが多く、エンターテイメントとしてはあまり楽しめない。
そんな本作ではアメリカで歴史的に長らく問題となっている人種差別がメインにあって、それを越えた友情を描いています。
白人と黒人が差別的な社会の中で友情を築く作品が多く、例に挙げるなら『48時間』シリーズや『ラビング/愛という名前のふたり』などがあります。
基本的にアメリカ社会で黒人が差別される側で、白人から歩み寄って友情を築いていくパターンが非常に多いです。
本作も同じように主人公である白人のトニーが黒人のシャーリーに歩み寄るが、実はもっと複雑な事情が判明していくのです。
確かにシャーリーはピアニストとして天才的であるが、彼は黒人でありながら立ち振る舞いは白人そのものである。
更にシャーリーは同性愛者でもあって、黒人でもなければ白人でもないし、異性愛者の男でもないという中途半端な立場にあると分かります。
その為、常に孤独感を持っていて誰にも自分の事を分からず、表面上では普通に付き合っているが他人との距離を取ってしまっている。
そこに誰でも分け隔てなく接するトニーから影響を受け、孤独だった心を少しずつ変えていくという成長を見せていきます。
もちろん、トニー自身もシャーリーから多大な影響を受けていて、少し粗暴だった言動も洗練されていく展開もまた面白いと思います。
黒人差別が激しい南部でのツアーには困難が多く、トニーは仕事としてやっているとシャーリーが一方的に思っていたところもありました。
ただ、裏表のないトニーはあくまでシャーリーを一人の人間として付き合い、素直に彼の才能を認める懐の深さで友情を結んでいく。
白人が黒人を差別するというシャーリーの一方的な考え方を変え、イタリア系だけのクリスマス・パーティに歓迎するトニーの寛大さがとても良かったです。
シャーリーが単なる黒人差別だけじゃなく、二重にも三重にも孤独感を持っている背景は人種問題だけじゃない多くの事情を抱えている点でも本作は他と違った魅力を持っていました。
とにかく、本作ではフレンドリーなトニーを演じるヴィゴ・モーテンセンと、堅物なシャーリーを演じるマハーシャラ・アリのコンビは素晴らしかったです。