作品紹介
公開年月 | 2011/09/17 |
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ジャンル | ホラー/怪獣 |
原作 | なし |
監督 | 大畑創 |
脚本 | 大畑創 |
製作 | 名倉愛、藤岡晋介 |
製作国 | 日本 |
鑑賞方法 | 動画配信サービス |
あらすじ
静かな住宅街に暮らす若い夫婦だったが、そんな夫を襲う奇病による発作で両者は深刻な悩みを抱えていた。
現代医学の力では夫の奇病を治す事ができず、徐々に悪化する病状に対して恐れていた事態が起きる。
夫の体が不気味に変態を始めてしまい、妻は懸命に介護もするもその甲斐もなく、ついに衝撃的な恐怖が夫婦を襲うのだった。
登場人物&出演者
・門田恵子(演:森田亜紀)
原因不明の発作に苦しむ夫を献身的に介護する。苦しむ夫の姿をカメラで記録していた。
森田亜紀は代表作に『桃まつり』シリーズ、『ハダカの美奈子』などがあります。
ついに発作だけじゃなく、体までも変異する夫を入院させるも悪夢に悩まされていた。
必死の思いで戻ってきた吉明がボロボロで、体中を切り刻まれた事に後悔して入院を中止。
こうして「へんげ」した吉明に対する歪んだ愛に目覚め、彼の為に人間を家に連れ込む。
最後は巨大化した夫を支え、自衛隊の攻撃で更に巨大化したところで「行け!」と叫んだ。
・門田吉明(演:相澤一成)
数日に一度起きる原因不明の発作に苦しんでいる。ついに体が奇妙な変異を遂げていく。
相澤一成は代表作に『Dolls』、『野のなななのか』などがあります。
体が変異している時は記憶がまったくなく、古代の言葉を無意識に発していた。
医科大学の後輩である坂本により入院させられるが、病院を脱出して家に戻っていった。
「へんげ」は完全に体と精神を支配し、ついに人間の姿へ戻れなくなって逃避行する。
刑事に撃たれて巨大化し、自衛隊の砲撃で巨大化し、最終的に東京を破壊する事になる。
・坂下稔(演:信國輝彦)
医科大学時代の吉明の後輩。現代医学ではどうする事もできず、恵子に諦めるよう促す。
信國輝彦は代表作に『かぞくのひけつ』、『ひとりかくれんぼ/劇場版』などがあります。
吉明に対して医科大時代に世話になっていた事で面倒をみるも限界があると悟っている。
憔悴しきった恵子を見ていられず、更に彼女への思いから吉明を引き離そうとする。
病院を逃げ出した吉明が家に帰っていないかと尋ねるが、そこで恵子の狂気を知る事に。
結局は恵子を連れ出すとしたところで吉明が現れ、彼の食料となってしまう。
感想
個人的な評価
本作は監督と脚本を務めた大畑創が「変身モノをやりたい」という構想から生まれた作品。
上映時間が54分と長編映画として短い方ですが、一応、本作は自主製作映画である。
大畑創監督がクリエイターとして作りたかった作品だと分かる独自の路線を貫いている。
現代の邦画業界は製作委員会方式のシステムにより、作りたいモノが作れない時代となっています。
その為、多くの監督は職業として映画を作っている状況で、本当に作りたいモノが作れていないのです。
そんな中で自主製作映画となった本作は、大畑創監督が作りたいモノを作っているのです。
普通ならば作れないような過激な内容であるけど、ちゃんとしたメッセージがあります。
こういう作品は単純にグロテスクな部分が目立っているが、実はちゃんと監督なりの強いメッセージが込められています。
最も分かりやすいのは、ゾンビ映画の第一人者であるジョージ・A・ロメロが単なるゾンビ映画ではなく、社会風刺を加えた内容だったという点です。
それは本作にも通じる部分であり、夫が“へんげ”しても妻の愛は変わるどころか、ますます深くなっていくのです。
その形がかなり歪んでいて、献身的な妻である一方、あまりにも恐ろしい愛の形でもある。
ラストの10分は特に凄まじく、まさかの巨大化に唖然とする一方で妻の歪んだ愛の叫びである「行けえええっ!」のセリフが最後までインパクトを残しました。
結局は東京は破壊される運命だが、妻は世界の平和よりも一人しかいない夫を選んでいる。
本作ではどちらの選択が正しくて間違っているが、妻の選んだ道に夫はただ突き進む。
どう見てもはた迷惑な愛であるが、それこそが夫婦間にしか分からないモノだろう。
近親者、特に恋人や配偶者がモンスターになった時、人はどのような選択を取るのか。
本作では妻が歪んだ愛を選択したが、この正直で真っ直ぐな思いは説得力がある。
54分という短い作品だからこそ、余計なモノを排除して、簡単にした事でより分かりやすく納得のできる内容となりました。
まさか怪獣映画になってしまうと思わなかったが、モンスターを扱った自主製作映画としてはかなりの良作だと言えると思います。