作品紹介
公開年月 | 2017/04/29 |
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ジャンル | 時代劇/アクション |
原作 | 沙村広明 『無限の住人』 |
監督 | 三池崇史 |
脚本 | 大石哲也 |
製作 | 坂美佐子、ジェレミー・トーマス、ほか |
製作国 | 日本 |
鑑賞方法 | レンタルDVD |
あらすじ
かつて妹を目の前で惨殺された凄腕の侍・万次は、謎の老婆によって臨んでいないのに不死身の体にされてしまう。
無天一流を受け継ぐ浅野道場の一人娘の凛は、殺された両親の復讐に万次を敵討ちの用心棒として依頼する。
一度断った万次だが、妹の面影を残す凛の懇願に負け、彼女の敵討ちである最強の剣客集団を率いる逸刀流の統主、天津影久に挑むのだった。
登場人物&出演者
・万次(演:木村拓哉)
主人公。「百人斬り」の異名を持つ。ある老婆から血仙蟲を移植され不老不死の肉体を持つ。
木村拓哉は近年の出演作に『マスカレード・ホテル』、『検察側の罪人』などがあります。
五十年前に旗本と同心たちを殺し、賞金首になるが妹の町を守る為に自害せずに生きていた。
現在は川辺の掘っ立て小屋に住み、八百比丘尼に導かれた町ソックリの凛の用心棒となる。
何度も勝手な行動をする凛に振り回されるが、守れなかった妹への贖罪から彼女を守る。
最後は公儀の侍たちを斬り捨て、尸良を崖から突き落とし、天津を追い込み凛の目的を完結。
・浅野凛(演:杉咲花)
ヒロイン。無天一流統主の娘。女の幸せより免許皆伝を目指して厳しい稽古を怠らない。
杉咲花は代表作に『トイレのピエタ』、『湯を沸かすほどの熱い愛』などがあります。
あれだけ稽古しているのに刀を使う場面がほとんどなく、なぜか小刀を投げるだけ。
物語を引っかき回す役割として敵討ちに万次を巻き込むが、途中から信念が揺らいでしまう。
勝手な行動ばかりをして万次をイライラさせ、勝てない相手も挑発する頭の悪さまである。
最後はイケメンな行動をした万次のおかげで敵を討つが、どこかスッキリしない感じでした。
【逸刀流】
・黒衣鯖人(演:北村一輝)
幹部の一人。無天一流を襲撃した時、犯される凛の母親のむごさを見せない為に体を覆った。
北村一輝は代表作に『羊の皮』、『寄生獣』シリーズなどがあります。
その後、二年に渡って凛に恋文を送っていて、彼女を殺して首を剥製にしようとする。
腕が背面まで曲がる特異体質で背後の万次に致命傷を負わせるが、油断して逆に殺された。
・凶戴斗(演:満島真之介)
幹部の一人。無天一流を襲撃した時、凛の父親の刀を拝借して以来大事に持っていた。
満島真之介は代表作に『11・25自決の日/三島由紀夫と若者たち』、『散歩する侵略者』などがあります。
元は百姓の小倅で妹が参勤交代の邪魔をしたせいで斬り殺され、以降は侍を目の敵にする。
万次と対決して優勢に立ったが、不死を使った反則的な技の前に敗れるが見逃される。
・閑馬永空(演:市川海老蔵)
幹部の一人。虚無僧のような出で立ちで独特なしゃべり方をする。万次と手を組もうとする。
市川海老蔵は代表作に『
実は万次と同じく血仙蟲による不死の肉体を持ち、すでに200年も生きているという。
何人もの妻や友人の死を目の当たりにして、もう生きる力を失って万次の事を聞きつける。
懐柔して天津を倒そうとするが、断られたせいで殺す事になるが、返り討ちに遭い死亡。
・乙橘槇絵(演:戸田恵梨香)
普段は花魁として働いている。天津からの要請があれば、幹部として武器を手に取って戦う。
戸田恵梨香は近年の出演作に『コード・ブルー/ドクターヘリ緊急救命』、『ぼくのおじさん』などがあります。
逸刀流の者が次々と万次に殺されている事により、天津から殺害を命じられて襲撃する。
圧倒的な実力差を見せつけるが、我に返って自分の振るう剣が人を不幸にするとして躊躇う。
凛の介入もあってそのまま万次たちを見逃し、天津に仕える資格がないとして立ち去った。
万次たちと侍たちと戦う中で登場して壊滅させ、最後は天津の代わりに銃弾を浴びて死亡。
・天津影久(演:福士蒼汰)
逸刀流の統主。全国にある流派を片っ端から潰し、逸刀流の傘下に加えて最強を目指す。
福士蒼汰は代表作に『図書館戦争』、『ストロボ・エッジ』などがあります。
祖父は無天一流で一番の使い手だったが、異国の剣を使ったという理由で師から破門された。
その為、過去にどんな流派でもどんな武器でも逸刀流の誘いに乗れば一員に迎えられる。
吐鉤群から武芸所の師範として招き入れるはずが、逆に裏切られて逸刀流は全滅してしまう。
最後は万次とともに吐が率いる公儀の侍たちを倒し、立ち去る時に凛がトドメを刺して死亡。
【無骸流】
・偽一(演:北代高士)
スキンヘッドに黒い丸眼鏡をしている。頭には切り傷がある。元船大工で死罪の咎人。
北代高士は代表作に『ローカルボーイズ!』、『暗黒の戦い』などがあります。
金で幕府に雇われているが、言う通りにしなければ殺されるという事で仕方なく従っている。
・百琳(演:栗山千明)
金髪の女。偽一と組んで数人の逸刀流を狩る。実は幕府に逆らったせいで死罪の咎人。
栗山千明は近年の出演作に『秘密/THE TOP SECRET』、『種まく旅人/くにうみの郷』がなどがあります。
天津を殺しに行った尸良が戻らず、町にいた万次から居場所を聞き出そうとするが失敗する。
・尸良(演:市原隼人)
太陽が描かれた着物を着ている。普通の刃とノコギリ状の刃を持つ刀を愛用している。
市原隼人は近年の出演作に『RANMARU/神の舌を持つ男』、『星ガ丘ワンダーランド』がなどがあります。
幕府から金で雇われて万次の名前を騙って逸刀流の人間を次々と斬殺している張本人。
逸刀流が同じ敵という事で凛が手を組むと言い出すも、最初から協力する気がない。
凛を殺そうとするが万次によって右手を切り落とされると、白髪になって逃げ出した。
再び姿を現して凛を人質に万次を誘い出すが、咄嗟の機転で崖から落とされて死亡。
【その他】
・司戸菱安(演:金子賢)
浪人集団「新鮮組」の組長。賞金稼ぎとして有名な万次を倒そうと仲間を連れてきた。
金子賢は代表作に『キッズ・リターン』、『ストロベリーナイト』などがあります。
町を斬り殺して万次を激昂させ、部下たちを放つも全員が斬殺され、最後は自身も殺される。
・吐鉤群(演:田中泯)
幕府の新番頭。次々と他流派を潰す逸刀流に目をつけ、天津に武芸所の師範を口添えする。
田中泯は代表作に『たそがれ清兵衛』、『隠し剣/鬼の爪』などがあります。
天津に絶大な信頼を与え、幕府が師範に召し抱えた心形唐流を傘下に加え師範を確実にする。
実はすべて幕府が逸刀流を潰す為に仕組まれた罠で、天津がいない間に幹部を抹殺した。
最後は公儀の侍たちを率いるが、万次、天津、乙橘によって壊滅され、己自身も殺された。
・八百比丘尼(演:山本陽子)
五十年前に万次が瀕死状態の時に出会った謎の老婆。すでに800年の歳月を生きている。
山本陽子は代表作に『華麗なる一族』、『八つ墓村』などがあります。
妹の町を亡くして生きる望みがなくなった万次にトドメを刺さず、血仙蟲を移植した。
その後、両親の敵討ちを願う凛の前に現れ、万次を用心棒にするよう進言した。
感想
個人的な評価
本作は月刊アフタヌーンにて1993年6月から2012年12月まで連載された沙村広明の同名漫画が基になっています。
テレビアニメ化もされており、2008年7月から12月まで13話が放映されています。
2016年には舞台化もされ、六日間に渡って公演されたメディアミックスをした作品である。
イギリスの大手一般新聞『ガーディアン』のジョーダン・ホフマンは五つ星中で四つ星を与えるほどの高評価となっています。
このように殺陣のアクション部分では評価されているが、残念ながら物語はあまり面白いとは感じられるような出来映えではありませんでした。
確かに殺陣アクションはそれなりに頑張っているけど、序盤は夜ばっかりで何が起きているのか分かりません。
これは完全にごまかす為にワザと夜を設定したが、個人的には観る気が削がれるだけで逆効果の演出でした。
本作は様々な映画を手がけてきた三池崇史が監督を務め、漫画原作の実写映画化も経験豊富という事で抜擢されたのだろう。
さすがに熟れている事もあって、三十巻の作品を二時間半ほどでまとめようとしてました。
しかし、やっぱりですが、三十巻の作品を映画一本にまとめるにはムリがあったと思います。
原作は未読なので登場人物は初見となるけど、主要人物以外の扱いがポッと出すぎて逆にいらなかったと思います。
もっと極端に言えば、クライマックスでの“無限の住人・無双”に出てくる人物以外は描写がいらなかったレベルでした。
多分、原作ファンへのサービスかもしれないが、未読の人にとっては無意味に感じられるキャラクターが多かったです。
その中で主人公の万次が見逃した凶戴斗がまた出てくると思ったら、そのまま退場する上に微妙な身の上話までしている。
普通ならクライマックス辺りで出てきてもいいのだが、もうすっかりと忘却の彼方になってしまったせいで登場させた意味が分からなかった。
何より主人公やヒロイン、それに敵役のバックボーンは描かれているけど、他の脇役も事情があるようだが薄っぺらな描写で意味を感じられない。
中途半端に個々のキャラクターにバックボーンを持たせようとした結果、アクション映画の命とも言えるテンポが悪くなっている。
そもそも邦画というのは編集を知らない人たちが作っていて、当たり前のように2時間超えする作品が多く、本作も最初からテンポなど眼中になったらしい。
原作はどのような雰囲気か分かりませんが、終始に渡って展開される重くて息苦しいシリアスな構成も魅力に繋がっていない。
みんな性格が暗くて笑えるような要素がない点でも、本作は万人受けしないのが分かります。
それで主人公を演じたキムタクはまったく問題がないどころか、かなり役にハマっていたと思わせるぐらい自然でした。
対してヒロインは鼻につく行動や言動、何度もブレる信念、それに演じている杉咲花のムリヤリ大声出す演技に少しイラっとしました。
三池崇史監督は作品を作るクリエイターではなく、あくまで依頼された仕事をきちんとやり遂げる職人だと思っています。
三十巻の漫画原作を二時間半でまとめるのは大変な作業であり、それを指示された予算と納期でやり遂げるのはさすがと言える職人技だと思います。
だからと言って、本作は映画としての面白さに繋がらず、キムタクの頑張りも不発に終わった結果が惨敗の興行成績になっただけに残念でなりません。