作品紹介
公開年月 | 204/02/06 |
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ジャンル | コメディ/ミステリー |
原作 | シュテファン・ツヴァイクの著作(影響) |
監督 | ウェス・アンダーソン |
脚本 | ウェス・アンダーソン |
製作 | ウェス・アンダーソン、スコット・ルーディン、ほか |
製作国 | ドイツ、イギリス |
鑑賞方法 | レンタルDVD |
あらすじ
1932年、グランド・ブダペスト・ホテルは“伝説のコンシェルジュ”と呼ばれるグスタヴ・Hの完璧なおもてなしが評判だった。
グスタヴ目当てにエレガントな客で溢れかえる超高級ホテルに、ロビーボーイ見習いとして移民の少年であるゼロ・ムスタファがやって来る。
そんなある日、富豪の常連客マダムDが殺害され、その遺言に名画“少年と林檎”を懇意の間柄だったグスタヴに贈られる事に。
だが、グスタヴに殺人の嫌疑がかけられ、更に絵を取り戻そうとマダムDの息子ドミトリーが刺客を送っていた。
そんな中、グスタヴとゼロはコンシェルジュ仲間などの力を借りて逃亡しつつ、事件の謎を解き明かそうとするのだった。
登場人物&出演者
【1932年】
・グスタヴ・H(演:レイフ・ファインズ)
主人公。伝説的なコンシェルジュ。彼を目当てに多くの常連客が宿泊にやって来る。
レイフ・ファインズは近年の出演作に『ヘイル、シーザー!』、『007/スペクター』などがあります。
常に客よりも先回りしておもてなし、大量の香水をつけて存在感を主張している。
ある意味、お金は持っているが満たされない心の拠り所として頼れる存在となっている。
スマートな立ち回り、的確な指示、一切ムダのない動きなど、理想的なコンシェルジュです。
演じているレイフ・ファインズはハマリ役であり、彼だからこそ説得力ある人物になった。
・若ゼロ・ムスタファ(演:トニー・レヴォロリ)
移民でグランド・ブダペスト・ホテルにロビーボーイ見習いとしてやって来た。
トニー・レヴォロリは代表作に『フィフス・ウェイブ』、『DOPE/ドープ!!』があります。
経験と学歴は不合格レベルだが、グランド・ブダペスト・ホテルへの憧れで合格する。
グスタヴの指示をきちんと受け入れ、その通りに動く事によって信頼を勝ち得る。
実は身寄りのない孤独な難民だが、最愛の恋人アガサとの出会い最高の時を迎える。
ロビーボーイだったグスタヴを超える逸材として認められるようになる。
・アガサ(演:シアーシャ・ローナン)
ヒロイン。グランド・ブダペスト・ホテルの菓子職人でゼロの恋人。
シアーシャ・ローナンは代表作に『ラブリーボーン』、『ブルックリン』があります。
右頬には大きなアザを持ち、ゼロとは二つ返事で結婚の約束を交わしていた。
ルートヴィヒの脱獄計画に必要な道具をお菓子に入れるという度胸の据わった女性。
ゼロから絵の見つけ方を教えられ、彼らの代わりに絵を取り戻そうとする。
・マダムD(演:ティルダ・スウィントン)
グランド・ブダペスト・ホテルの常連客で富豪。何かに怯えている様子だった。
ティルダ・スウィントンは近年の出演作に『ドクター・ストレンジ』、『ヘイル、シーザー!』があります。
殺害された事でグスタヴの運命を大きく変えるキーパーソンとなりました。
ティルダ・スウィントンは特殊メイクをしているが、まったくの別人に見えました。
・ドミトリー(演:エイドリアン・ブロディ)
マダムDの息子。放蕩息子で母親とは愛情がなく、特にグスタヴを嫌っている。
エイドリアン・ブロディは近年の出演作に『心霊ドクターと消された記憶』、『ドラゴン・ブレイド』があります。
どうしてもグスタヴを悪者して、すべてを手にいようとするクソ野郎です。
とにかく、自分の母親から愛情を取ったグスタヴを恨んでいて、何かと奪おうとする。
・コヴァックス(演:ジェフ・ゴールドプラム)
月に一度ホテルにやって来るオーナーの代理人で、帳簿を調べ、オーナーから伝言を残す。
ジェフ・ゴールドプラムは近年の出演作に『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』があります。
マダムDの遺産について遺言執行人であり、多く集まった彼女の親戚たちを仕切る役となる。
ドミトリーには邪魔者で、最初は猫を窓から投げ捨て、次にジョプリングに殺される。
・ヘンケルス(演:エドワード・ノートン)
ベルガスドルファー夫妻の息子でドイツの警察。過去にグスタヴに世話してもらった。
エドワード・ノートンは近年の出演作に『バードマン/あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡』があります。
部下がゼロを強引に連れ出そうとする中に割って入り、グスタヴの恩義に見逃す。
常に公正な警察官として一度だけ私情を挟むも、きちんと任務に従っていた。
・セルジュ・X(演:マチュー・アマルリック)
執事長。マダムDの城にいる使用人たちを仕切る白いスーツの男。
マチュー・アマルリックは代表作に『007/慰めの報酬』などがあります。
グスタヴに“少年と林檎”の絵を包むと、その中に極秘書類も一緒に入れる。
窮地に追いやられたグスタヴを助ける切り札を持っている重要人物でした。
・ジョプリング(演:ウィレム・デフォー)
私立探偵。両手にカイザーナックルをはめている。ドミトリーに雇われている。
ウィレム・デフォーは近年の出演作に『ジョン・ウィック』、『きっと、星のせいじゃない。』があります。
マダムD殺害の重要参考人であるセルジュを探し、邪魔になったコヴァックスを殺害する。
かなりヤバイ人間であり、邪魔となれば容赦なく殺すという狂人であった。
これはウィレム・デフォーだからこそ、セリフが少なくても説得力があります。
【1968年】
・若き日の作家(演:ジュード・ロウ)
作家熱による神経衰弱になり、静養の為にグランド・ブダペスト・ホテルにやって来た。
ジュード・ロウは近年の出演作に『ベストセラー/編集者パーキンズに捧ぐ』があります。
ホテルのオーナーであるゼロ・ムスタファに興味を持ち、彼の過去について聞く事になる。
・老ゼロ・ムスタファ(演:F・マーリー・エイブラハム)
ズブロフカで一番の富豪。同時にホテルのオーナー。いつも使用人の部屋に宿泊する。
F・マーリー・エイブラハムは1984年公開の『アマデウス』でアカデミー主演男優賞を受賞しています。
過去を語る姿は哀愁に満ちているが、時折見せる笑顔は当時の良い思い出を連想させる。
グスタヴとの友情もそうだが、最後に語ったアガサへの愛も本物だと分かります。
【1985年】
・年老いた作家(演:トム・ウィルキンソン)
過去に聞いた老ゼロ・ムスタファの話しを回想して物語を始める。
トム・ウィルキンソンは近年の出演作に『コング:スカル・アイランド』、『ビジネス・ウォーズ』があります。
過去を振り返る姿はグスタヴやゼロという人物に魅入られた感情が良く出ていた。
感想
個人的な評価
ウェス・アンダーソンが監督、脚本、製作と本作にかなりの力を入れています。
オーストリアの作家であるシュテファン・ツヴァイクの影響を大きく受けている作品です。
本作はアカデミー賞で美術賞、衣装デザイン賞、メイキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞し、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、編集賞にノミネートされている。
文字通り本作は2014年を代表する評価の高い作品となりました。
タイトルだけは知っていたのですが、グランドホテル方式の作品だと思って避けていた。
しかし、色々と事情が重なって、ようやく重い腰を上げて鑑賞する事になった。
確かに本作は数多くの有名な役者が出演しているが、グランドホテル方式ではなかったです。
絶対的な主人公であるグスタヴという存在を中心に見習いロビーボーイのゼロが立ち回る。
いわゆるバディ映画というヤツで、共通点のない二人が兄弟のような友情を育んでいく。
グスタヴという人物は素性がまったく語られないが、それでも彼は絶大な存在感を放ちます。
演じているレイフ・ファインズはまさにハマリ役であるのは言うまでもありません。
その相棒であるロビーボーイの若きゼロを演じるトニー・レヴォロリも良い。
時代も三つに分かれているが、過去を語る老ゼロを演じたF・マーリー・エイブラハムもなかなか良い演技をしてくれる。
そんな彼の話を聞く若き日の作家を演じたジュード・ロウもさすがと言えます。
もちろん、物語の始まりに登場する作家を演じたトム・ウィルキンソンも忘れちゃいけない。
出演している役者も主役級が多く、ちょい役ながらも強烈なキャラクターである。
本作は魅力的な主人公と相棒を中心に、多くの濃いキャラクターが登場しています。
何よりグスタヴとゼロとの友情は素晴らしく、二人は師匠と弟子を超えた関係になったのは心温まります。
特にゼロがやって来た理由を聞いた時のグスタヴの表情と後悔も強烈な印象を残します。
魅力的な登場人物もさる事ながら、物語の構成とテンポが飽きさせない工夫がある。
リアリティのある物語よりも、どこか演劇のような軽快さは見事に盛り上げています。
本作は演劇を映像と音楽として映画化された最高の作品の一つだと言えます。