作品紹介
公開年月 | 2017/03/03 |
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ジャンル | SF/アクション/ドラマ |
原作 | マーク・ミラー(原作)、スティーヴ・マクニーブン(作画)
『オールドマン・ローガン』 |
監督 | ジェームズ・マンゴールド |
脚本 | マイケル・グリーン、スコット・フランク、ほか |
製作 | ハッチ・パーカー、サイモン・キンバーグ、ほか |
製作国 | アメリカ |
鑑賞方法 | 映画館 |
あらすじ
すでにミュータントの大半が死滅した2029年、超人的な治癒能力を失いつつあったローガンも不死身の存在ではなく、長年酷使した肉体の衰えは明か。
ローガンはリムジンの運転手で日銭を稼ぎ、メキシコ国境近くの寂れた荒野で年老いたチャールズ・エグゼビアの面倒を見ながらひっそり暮らしていた。
ある日、ガブリエラという女性が現れ、謎の少女ローラをノースダコタまで送り届けて欲しいと依頼する。
そんなローラを冷酷非道な男ピアースが武装集団を率いて迫り、ローガンは渋々ながら過酷なアメリカ大陸縦断の旅に出るのだった。
登場人物&出演者
・ローガン/ウルヴァリン(演:ヒュー・ジャックマン)
主人公。治癒能力が弱まって老化が進行し、アダマンチウムが身体を蝕んでいる状態。
ヒュー・ジャックマンは近年の出演作に『X-MEN:アポカリプス』、『イーグル・ジャンプ』などがあります。
多くの友や仲間を失い、今では最後の友と仲間とともにひっそりと暮らしている。
そこへトラブルを持ってきたガブリエラを拒否するが、ローラの力を見て考えを変える。
しかし、彼が愛してきた人たちが悲惨な目に遭っている事を思い出し、ローラを突き放す。
この不器用さこそローガンであり、ウルヴァリンであり、物語を完結するのに相応しい。
そして、最後にヒュー・ジャックマンのウルヴァリンは最高のスーパーヒーローであった。
・チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX(演:パトリック・スチュワート)
かつて世界最強のテレパスだった。現在はアルツハイマー病を発症し、制御できない状態。
パトリック・スチュワートは近年の出演作に『グリーンルーム』、『テッド2』があります。
発作を起こして能力が暴走し、周囲の人間に対して精神的なダメージを与えてしまう。
その為にローガンから処方される薬で止めているが、同時に妄想や譫言を言うようになる。
芯はしっかりしていて、助けを求めているローラを温かく迎え入れる事になる。
彼もローガンと同じく心に傷を負いながらも、ローラに微かな希望を抱いていた。
チャールズを演じたパトリック・スチュワートは貫禄のある存在感でシリーズを支えました。
・ローラ/X-23(演:ダフネ・キーン)
ヒロイン。ウルヴァリンの遺伝子から作られたクローン。ウルヴァリンと同様に能力を持つ。
ダフネ・キーンは本作が長編映画デビュー作となっています。
殺人訓練を積まれていて、屈強な兵士では相手にならず、あっという間に倒してしまう。
当初はローガンたちに対して沈黙を守っていたが、終盤ではようやくしゃべる事に。
メキシコ人なのでスペイン語混じりだが、ちゃんと気持ちが伝わるだけの迫力があります。
やはり、ローガンを父親だと認め、彼を「パパ」と呼んだ時の悲しさは胸を打たれます。
本作が映画デビュー作とは思えないほどの演技力で、物語を支えるヒロインと言えるだろう。
・ピアース(演:ボイド・ホルブルック)
トランシジェン研究所の特殊部隊を率いる。右腕は機械の義手となっている。
ボイド・ホルブルックは代表作に『ゴーン・ガール』、『ラン・オールナイト』があります。
X-MENの存在をコミックで知っていて、ウルヴァリンについても昔は憧れていたという。
研究所から逃げ出した子供たちを追い、情報を引き出す為にはどんな手段でも使う。
あくまで子供の捕獲が目的であり、生きているならば傷つけても構わないと思う冷酷な男。
最後は子供たちの反撃に遭い、凍らされ、草で縛られ、電気で感電し、最悪の死に方をする。
・キャリバン(演:スティーヴン・マーチャント)
ローガンとチャールズとともに暮らす。匂いでミュータントの居場所を特定する能力を持つ。
スティーヴン・マーチャントは代表作に『ホットファズ/俺たちスーパーポリスメン!』、『妖精ファイター』などがあります。、
太陽に当たると皮膚がただれてしまうので、昼間は全身を布で覆って生活している。
過去にミュータント狩りに加担するも、現在は考えを改めて仲間を守っている。
1年前にローガンから手伝って欲しいと頼まれ、彼がいない間はチャールズの世話をする。
ローラを追ってきたピアースが遠くに連れて行く途中で目覚め、そのまま囚われる事に。
ピアースに能力でローガンたちを追うよう強要されるが、最後は利用されないよう自爆する。
・ガブリエラ・ロペス(演:エリザベス・ロドリゲス)
トランシジェン研究所に勤めていた看護師。研究所からローラを連れ出した。
エリザベス・ロドリゲスは代表作に『デスペラード』、『クライム・ヒート』があります。
研究所が子供たちを処分する事を知って、なんとか逃がそうと仲間の看護師と協力する。
ピアースに居場所を悟られてしまい、拷問を受けるも事前にローガンへのメッセージを録る。
・サンダー・ライス博士(演:リチャード・E・グラント)
アルカライ遺伝子研究所の科学者。ローラを生み出し、兵器用ミュータントを開発する。
リチャード・E・グラントは代表作に『ハドソン・ホーク』、『ゴスフォード・パーク』などがあります。
子供たちはあくまで研究の成果と考え、食料にミュータント遺伝子をなくす改造をしていた。
ローガンの完全なクローンであるX-24を造り、最初から凶暴性を与えて兵器として使う。
最後はローガンにとって禁じ手の銃撃であっさりと頭を撃ち抜かれてしまう。
感想
個人的な評価
本作は『X-MEN』シリーズにおいて10作目となり、『ウルヴァリン』を主人公としたスピンオフシリーズの三作目となります。
今回でウルヴァリンを演じてきたヒュー・ジャックマン、プロフェッサーXを演じてきたパトリック・スチュワートにとって最後の作品となる。
原作は『オールドマン・ローガン』で、本作はそこからインスピレーションを得ている。
2000年に公開された『X-MEN』でウルヴァリンとして登場したヒュー・ジャックマンだったが、それから17年が経過しています。
映画ファンに限らず、原作ファンからも認められるウルヴァリンとなったヒュー・ジャックマンが去るのは非常に寂しい限りです。
しかしながら、予告編で見せた年老いたローガンの姿は哀愁があるけど、その中には未だに獣が宿っている鋭い眼光が印象的でした。
今までの『X-MEN』シリーズとは違った雰囲気なのは、予告編からでも伝わってきます。
どんな傷を負ってもたちまち治ってしまうウルヴァリンが、能力の衰えで老化し、アダマンチウムで身体が蝕まれるという設定。
もの凄い哀愁を漂わせているが、それは今回が完結するという流れに合致しています。
さて、本作についてですが、今回はウルヴァリンではなく、ローガンというなんでもない年老いた男が主人公となっている。
これまで『X-MEN』シリーズでは主人公のような立ち回りで常に物語の中心にいました。
何より傷を負ってもたちまち治ってしまうヒーリング能力、埋め込まれたアダマンチウムでどんな敵もなぎ倒してきた。
だが、本作のローガンはアダマンチウムの影響でヒーリング能力が弱まり、そのままではいずれ死んでしまうという運命にある。
死にゆく身体以上にローガンは、かつての友や仲間を失った心の傷が一番大きいと言える。
最後に残された友のチャールズと、仲間のキャリバンとひっそり暮らすローガンは、過去の面影はほとんどない。
あの哀愁漂う姿は衝撃的だが、積み重ねてきた『X-MEN』シリーズによって重さがあります。
ウルヴァリンはヒーリング能力で若さを保ち、死ぬ事はないが、代わりに友や仲間は死んでいくという宿命であった。
これを描いた本作は完結に相応しく、何より長年に渡ってウルヴァリンを演じてきたヒュー・ジャックマンだからこそ出せる哀愁だと思います。
本来なら「こんなウルヴァリンを見たくない」という意見が飛び交うだろうが、本作のストーリーについては納得ができる。
すべてを失った孤独な男が未来に託した新たな命たちこそ、スーパーヒーローの姿だと言える事でしょう。
ウルヴァリンはスーパーヒーロー向きではないと自ら言っているが、最後の最後で見せた笑顔こそが彼の本心だったのだろう。
そして、共に去っていくチャールズを演じたパトリック・スチュワートのかなり変わり果てた姿も物語の哀愁を引き出しています。
あれだけ多くの生徒に囲まれたチャールズ・エグゼビアが、普通の家族の団らんを味わっただけで感動する姿は胸を打たれます。
最後に本作のヒロインとも言えるローラを演じたダフネ・キーンは素晴らしい演技でした。
終盤でようやく言葉をしゃべるが、それまでの沈黙を守った演技は素晴らしく、同時に危険さと愛らしさを備えています。
ローラは獣であり、一方で無邪気な子供で、父親を素直に求めた姿は健気であった。
『ウルヴァリン』のスピンオフの完結編として相応しい内容であり、長年に渡って演じてきたヒュー・ジャックマンがいなくなるのは本当に寂しい限りである。