エベレスト RE-2468

作品紹介

公開年月  2015/09/25
ジャンル  アドベンチャー/サスペンス
原作  『1996年のエベレスト大量遭難事故』
監督  バルタザール・コルマウクル
脚本  ウィリアム・ニコルソン、サイモン・ボーファイ
製作  ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ほか
製作国  アメリカ、イギリス、アイスランド
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

1996年の春、ニュージランドの登山ガイド会社によって世界最高峰エベレストの登頂ツアーが企画され、8人のアマチュア登山家たちが参加した。
彼らを率いるベテラン・ガイドのロブ・ホールだったが、ベースキャンプは多くの商業登山隊であふれ、様々なトラブルが起きていた。
そんな中、ロブ・ホールは別の隊を率いるスコット・フィッシャーと協調体制を取り、互いに協力しながら山頂を目指すのであった。

登場人物&出演者

ロブ・ホール(演:ジェイソン・クラーク)
ニュージランド人。AC隊の隊長。登山ガイド会社アドベンチャー・コンサルタンツの設立者。
ジェイソン・クラークは近年の出演作に『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、『チャイルド44/森に消えた子供たち』などがあります。
妻のジャンも登山家だが、現在は妊娠中でエベレスト登頂を成功させて帰りを待たせる。
混在しているベースキャンプで順番を提案するが、スコットの隊以外は拒否される。
唯一のエベレスト登頂者なのに、感情に流されてバカな選択をして命を落とす。

ベック・ウェザーズ(演:ジョシュ・ブローリン)
アメリカ人。アドベンチャー・コンサルタンツの公募隊の参加者。
ジョシュ・ブローリンは近年の出演作に『ヘイル、シーザー!』、『ボーダーライン』などがあります。
病理学の医師。登山経験が豊富。テキサス出身で妻と二人の子供を残している。
妻のピーチから登山したら離婚を宣告されるが、何も言わずに参加してしまっている。
地上では黒いモヤモヤに覆われて陰鬱な気分になるが、登山によって癒されると告白する。
本作では主人公にするべき人物だったのに、結局は中途半端な描き方で微妙な立ち位置。

ダグ・ハンセン(演:ジョン・ホークス)
アメリカ人。アドベンチャー・コンサルタンツの公募隊の参加者。
ジョン・ホークスは代表作に『君とボクの虹色の世界』、『アメリカン・ギャングスター』などがあります。
大工・郵便配達員を掛け持ちする。前年にエベレスト登山に参加するも登頂手前で断念。
地元の小学校から登山資金を調達し、平凡な男でもエベレスト登頂できる事を示そうとする。
エベレスト登頂という自分のワガママな目的を果たす為にロブを道連れにする。

ジョン・クラカワー(演:マイケル・ケリー)
アメリカ人。アドベンチャー・コンサルタンツの公募隊の参加者。
マイケル・ケリーは代表作に『ドーン・オブ・ザ・デッド』、『クロニクル』があります。
アウトドア雑誌のジャーナリストで今回はAC隊を取材する為に参加する。
取材する為に登頂しているが、その中で「なぜ山に登るのか」という質問をぶつける。
マトモな判断をして、正直に「自分の命が一番」と発言している無事に下山する。

ヘレン・ウィルトン(演:エミリー・ワトソン)
アドベンチャー・コンサルタンツのチーフ・マネージャー。ベースキャンプに留まる。
エミリー・ワトソンは代表作に『レッド・ドラゴン』、『リベリオン』などがあります。
ロブが頼りにしている人物であり、参加者たちの情報をすべて暗記している。
ベースキャンプで遭難するロブを知って、取り乱すもまったく悲しさが伝わらない。

アンディ・“ハロルド”・ハリス(演:マーティン・ヘンダーソン)
アドベンチャー・コンサルタンツの登山ガイド。ニュージランド人。
マーティン・ヘンダーソンは代表作に『ザ・リング』、『天国からの奇跡』があります。
ロブが頼るガイドの一人であり、遭難した際には酸素ボンベを確保する。
なんとかロブの元に酸素を持ってくるが、猛吹雪の中で滑って遭難死する。

難波康子(演:森尚子)
日本人。アドベンチャー・コンサルタンツの公募隊参加者の紅一点。
森尚子は代表作に『サイバーネット』、『スパイス・ザ・ムービー』などがあります。
七大陸最高峰のうち六峰の登頂に成功している。日本人女性で二人目の登頂者。
最後の七峰という事で使命感で登頂する意志を口にするもジョンは納得していない。
商業公募隊を利用して七大陸最高峰を制覇するも、下山中の猛吹雪で死亡する。

ガイ・コター(演:サム・ワーシントン)
アドベンチャー・コンサルタンツの登山ガイド。別のチームを率いてプモリを目指す。
サム・ワーシントンは近年の出演作に『ハクソー・リッジ』、『ハイネケン誘拐の代償』などがあります。
ベースキャンプに戻って、ヘレンのサポートをしてロブに事実を伝える役目を担う。

スコット・フィッシャー(演:ジェイク・ジレンホール)
アメリカ人。マウンテン・マッドネス隊の隊長。ロブの良きライバル。
ジェイク・ジレンホールは近年の出演作に『ライフ』、『サウスポー』などがあります。
ロブの協力する提案に乗るが、基本的に隊は別々に出発して協調体制を意識する。
体調を崩しているのにムリをして登山したせいで下山できずに死亡する。

アナトリ・ブクレーエフ(演:イングヴァール・E・シーグルソン)
ロシア人。マウンテン・マッドネス隊のガイド。最初に登頂する事になる。
イングヴァール・E・シーグルソンは代表作に『ベオウルフ』、『馬々と人間たち』などがあります。
すぐに引き返したおかげで遭難せず、他のメンバーを助けようとする。

ジャン・アーノルド(演:キーラ・ナイトレイ)
ロブの妻で妊娠中。自身も登山家でエベレスト登頂に成功している。
キーラ・ナイトレイは近年の出演作に『素晴らしきかな、人生』、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』などがあります。
さすがに登山家という事もあって、ロブが助からないと悟って彼に別れの言葉を言う。

感想

個人的な評価

1996年に起きたエベレスト大量遭難事故を基に作られています。
実話をベースにしているので、ある意味、本作はドキュメンタリーや伝記映画に近い。
大まかなストーリーは実話と一緒だろうが、細かい点については映画的な演出が成される。
自分は登山について知識が皆無なので、本作で起きている状況の正否は分からない。
いくら実話をベースにしているとしても、本作は一本の映画として評価する。
登場人物が多いので、感情移入しづらい欠点を持ち、そこにサバイバルが加わる。
少人数ならば個々のエピソードで感情移入できるけど、本作はそう簡単ではないです。
全体で約120分の作品だが、その半分は登場人物の紹介となっています。
物語の主人公的なポジションはロブ・ホールが務めているが、残念ながら下山中に死亡する。
従って最後まで登場せず、その代わり登山経験者である医師のベックが生還を果たす。
ハッキリ言って、本作のロブ・ホールが率いるAC隊は商業目的で結成されている。
その為、ロブ・ホールを含めたガイドと金を払ってエベレスト登頂を目指す顧客がメイン。
登場人物が多いせいで簡単な自己紹介で済んでいるせいで、後に生まれる死に対する悲しみがまったくありません。
そもそも、エベレスト登頂はプロでも難しいのに、一度も経験した事がない者が多い商業登頂がメインとなっています。
当然ながら遭難しても彼らの自己責任であり、そこに悲しみなど一切感じられません。
だから劇中で登場人物たちが遭難して、関係者が悲しみに暮れるも、観ている側からは自己責任だから自業自得にしか感じられない。
で、本作は実際に起きた大量遭難事故を背景にしているが、あった事を淡々と描いている。
そのせいでエベレストという過酷な環境がまったく伝わらないという微妙な演出となる。
ハッキリ言って、エベレストだからという感じがなく、単なる険しい雪山を登っているようにしか見えません。
それならば、エンターテイメントに徹した『バーティカル・リミット』の方が面白い。
何より死の危険が高い登山だというのに、隊のリーダーが感情で行動してしまうのは明らかに間違った選択だと言えます。
死ぬつもりでやったならば、それで構わないが、残された妻や生まれてくる子供の事を考えない頭の悪い行動としか思えなかった。
本作で伝えたかったのは一体なんだろうかと思ってしまうほど全体的に中途半端です。
エベレストの過酷さ、ヒューマンドラマへの感情移入、人間の無力さ、どれ一つ取ってもちゃんと描いていない。
それならば、素直にドキュメンタリー映画として作った方が良かったのかもしれない。
3Dを大々的に宣伝していたが、そこまでの迫力が感じられる演出がなかった。
本作は欲張って登場人物へのスポットを散らせたのが問題で、主人公のロブが最後までいない点でブレてしまう。
何より危険なエベレストを登っているという臨場感がないという致命的なミスがあった。
せめてエベレストの壮大な自然が堪能できると思ったのに、それすらないのも本作をより退屈にしていると感じました。