ペルシャ猫を誰も知らない RE-2295

作品紹介

公開年月  2010/08/07
ジャンル  ドラマ/音楽
原作  なし
監督  バフマン・ゴバディ
脚本  バフマン・ゴバディ、ロクサナ・サベリ、ほか
製作  バフマン・ゴバディ、メフメット・アクタス
製作国  イラン
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

インディ・ロックを愛するミュージシャンのカップル、ネガルとアシュカン。
しかし、二人は無許可で演奏した事で逮捕され、ようやく釈放されていた。
二人はテヘランでの活動を諦め、ロンドンへの公演を考え、出国の決意をする。
ネガルはすでにパスポートとビザを持っていたが、アシュカンは偽造したパスポートとビザを手配しようとする。
そこで出会う便利屋のナデルは二人の才能にほれ込み、出国手続きを取り付ける事に。
ネガルとアシュカンはバンドメンバーを探す為、活動をするミュージシャンたちの元を尋ね回るのだった。

登場人物&出演者

ネガル(演:ネガル・シャガギ)
ミュージシャン。衛星テレビに出演した事で当局に逮捕され、刑務所から出所したばかり。
ネガル・シャガギは本作が女優デビュー作で、他に脚本家として活躍しています。
自由に演奏をしたいという気持ちを持ち、アシュカンを国外へと出したい一心。
パスポートもあってビザもあって、アシュカンと一緒に出ようとナデルに提案する。
彼女の夢はとにかく、イランから出てロンドンで演奏をするというモノです。
まさに夫を立てる良き妻という感じで、こんなパートナーならどこにでも行けるだろう。

アシュカン(演:アシュカン・クーシャンネジャード)
ネガルの恋人でミュージシャン。同じく当局に逮捕され、刑務所から出所したばかり。
アシュカン・クーシャンネジャードは本作がデビュー作で、映画監督や脚本家としても活躍しています。
自由な音楽を求めてロンドンでの公演を目指し、ネガルとともに国外へ出ようとする。
音楽の才能を持っていて、ナデルが聴いてもプロとしてすぐに通用する実力者。
パスポートとビザを持っていないが、ドイツに母親がいて金の工面をしてくれる。

ナデル(演:ハメッド・ベーダード)
何人ものミュージシャンを国外へと出した人物。ネガルとアシュカンに協力する。
ハメッド・ベーダードは33作に出演し、イランでは有名な俳優のようです。
自由な音楽をやる若者を応援し、無類の映画好きで何かと映画に物事を例える。
アシュカンの才能にほれ込んで何かと二人を助けてくれるいいヤツ。
音楽とは関係ない事で警察に捕まるが、巧みな話術で刑罰を軽くするやり手でもある。
登場した時からのマシンガントークは強烈だが、言っている事は夢に溢れている。

感想

個人的な評価
初のイラン製作の映画で、これはいろんな意味で楽しみでした。
監督はカンヌ国際映画祭で初の長編作が新人賞と国際批評家連盟賞をダブル受賞した、イラン出身のバフマン・ゴバディが務めています。
本作では許コンサート、CD発売が許されていないミュージシャンを撮影していて、監督は無許可のゲリラ撮影を敢行しています。
更に主演の二人も撮影が終了した4時間後にはイランを離れています。
本作はイスラム社会で自由な音楽をやろうとするミュージシャンの奮闘を描いています。
日本では誰でも音楽が気楽に始められ、ストリートミュージシャンをしてもいい。
しかし、イランでは警察に通報され、逮捕される事が何度もあるようです。
現に主演の二人、ネガルとアシュカンも冒頭では刑務所から出所したところから物語が始まっているのです。
音楽をやる為なら当局に逮捕されても構わない彼らの意志が伝わる作品です。
本作は同時に厳格なイスラム社会でも、音楽を求める若者たちはノビノビとやっている描写も印象的です。
出演者はほとんど実際に活躍しているミュージシャンなので、音楽は言うまでもない良い。
主人公の二人は練習場所やバンド仲間を探している時、彼らの演奏をバックにして、テヘランの情景を見せている演出もなかなか良い。
本作ではイランの音楽事情を見せつつ、イスラム社会の厳しさも見せてくれています。
日本は本当に恵まれた国だと再認識できる作品だと言える事でしょう。