マーシュランド RE-2671

作品紹介

公開年月  2014/09/26
ジャンル  サスペンス
原作  なし
監督  アルベルト・ロドリゲス
脚本  アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス
製作  ホセ・アントニオ・フェレス、ホセ・サンチェス=モンテス、ほか
製作国  スペイン
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

独裁政治の爪痕が残る1980年のスペイン・アンダルシア地方、湿地帯の小さな町で祭りの最中に二人の少女が行方不明となり、やがて死体で発見される。
事件を担当するのは首都マドリードから左遷されてきた刑事ペドロとベテランのフアンで、二人は過去にも同様の少女失踪事件が起きている事を突き止める。
しかし、捜査を進めていくうちに様々な障害が刑事たちの行く手を阻む中、またしても一人の少女が姿を消すのだった。

登場人物&出演者

ペドロ・スアレス(演:ラウール・アレパロ)
刑事。マドリードから左遷された若い刑事。憲兵から行方不明の少女の情報を聞いて不快に。
ラウール・アレパロは代表作に『チェ/39歳 別れの手紙』、『気狂いピエロの決闘』がある。
正義感が強く適当に捜査する憲兵の態度が気に食わず、突っかかって不満を漏らす。
マドリードには妊娠中の妻がいて、捜査で忙しく連絡を怠って怒鳴られてしまう場面もある。
暴力で強引な捜査をするフアンを快く思っておらず、相棒でありながら打ち解けずにいる。
最後は一人の少女を助けようと犯人を追うが、危ういところでフアンに助けられ事件を解決。

フアン・ロブレス(演:ハビエル・グティエレス)
刑事。ベテラン刑事。憲兵から聞かされた行方不明の少女についての捜査を形式的にやる。
ハビエル・グティエレスは代表作に『アサシンクリード』、『オリーブの樹が呼んでいる』などがあります。
真面目なペドロと違って私生活と仕事をきちんと分けていて、常に酒を飲み何かを食う。
実は過去に少女を殺害した事があって、病気持ちで血尿するほどだがペドロには言わない。
事件捜査の為には暴力も厭わない強引な方法を取り、それは相棒のペドロに嫌悪感を与える。
最後は犯人を追うペドロを助ける為に飛び出し、ナイフで犯人をメッタ差しにして事件解決。

ロドリゴ(演:アントニオ・デ・ラ・トーレ)
行方不明となった少女たちの父親。尻軽と呼ばれている娘たちに対して恥を感じている。
アントニオ・デ・ラ・トーレは代表作に『チェ/39歳 別れの手紙』、『静かなる復讐』などがあります。
実はヘロインを拾っていて勝手に売ってしまい、持ち主にバレて取り立てに来ていたという。
金目の物を持っていかれると、今度は娘たちの預金通帳まで勝手に隠し借金を返そうとした。

ロシオ(演:ネレア・バロス)
行方不明となった少女たちの母親。娘を恥じる父親と違って、刑事たちに手がかりを与える。
ネレア・バロスは代表作に『Nena』、『A estación violenta』などがあります。
娘たちが遺体となって帰ってきた葬式では、彼女たちの通帳を夫が隠していた事を話した。
信頼できるフアンに容疑者と関係を持つ少女からの証言を代わりに話してくれた。

ヘスス(演:サルバ・レイナ)
姉妹の遺体が見つかった廃屋の近くで鹿狩りをして見つかり逃げるが、ペドロたちに捕まる。
サルバ・レイナは代表作に『Los minutos del silencio』、『Señor, dame paciencia』などがあります。
湿地帯に詳しいという事でペドロたちの捜査に協力し、狩猟宿などの場所を教えてくれた。
捜査が大詰めになって捜査に協力した少女がいなくなって、それを追う時に同行した。
犯人が逃げ出すと湿地帯を抜けて追いかけるが、撃たれてしまい早々に逃げ出した。
最後は無断で鹿狩りをしていた事を見逃した礼として、鹿のシチューをフアンに渡した。

ミゲル(演:ヘスス・カルロザ)
ジャーナリスト。姉妹の遺体が見つかったというタレコミを聞いて駆けつけた。
ヘスス・カルロザは代表作に『7 vírgenes』、『El Niño』などがあります。
当初はフアンによって現場を追い出されてしまうが、その後も独自に調査をしていた。
そこにネガを手に入れたペドロがやって来て、情報を渡す代わりに出所を調査を依頼される。
ネガを拡大してペドロに渡すが、そこに映っていたのはフアンと同じ時計をした男。
フアンはフランコ政権時では100人を殺害し、拷問を加えた男だと話した。

マリナ(演:アナ・トメノ)
地元の女子学生。消えた姉妹についてペドロとフアンから話しを聞かされた。
アナ・トメノは本作が長編映画デビュー作となります。
次にペドロたちが会った時には青白い顔で、厚いのに不自然な厚着をしていた。
どうやら狩猟宿でキニと会っていたが、その後、知らない男によってレイプされたという。
姉妹と仲が良かった縁で彼女たちの母親ロシオに真実を話し、フアンに伝えてもらった。
最後は狩猟宿に連れて行かれるが、ペドロとフアンの追跡によって無事に生還した。

キニ(演:ヘスス・カルロス)
町に住むハンサムな青年。数々の女性と付き合っていて、その噂は町全体に広がっている。
ヘスス・カルロスは代表作に『ザ・トランスポーター』などがあります。
現在はマリナと付き合っているが、捜査の段階で遺体となった姉妹の一人と関係があった。
そこでペドロとフアンに目をつけられるが、自信満々で関わりがないとして協力した。
しかし、現在の恋人であるマリナは怯えた様子で拷問を受けていてロシオを通して話した。
最後は犯人を追いつめたペドロたちにより、生還したマリナの証言などで逮捕された。

感想

個人的な評価

本作は第29回ゴヤ賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞など10部門を受賞しています。
日本ではクロックワークスが配給し、「ワールド・エクストリーム・シネマ2015」にて上映されています。
とにかく、本作はスペインだけに限らず、全世界で高い評価を受けた作品となります。
スペイン映画というと、個人的には歴史劇かアクションのイメージが強いだけに、今回のサスペンスは少しばかり期待しました。
本作は80年代を舞台にしていて、長く続いていたフランコ政権による独裁体制を色濃く残した作品となっています。
残念ながら本作で初めてフランコ政権による独裁体制を知りましたが、映画というのはこういう事実を語ってくれるから面白いと思います。
それで主人公は正義感に溢れたせいで左遷された若い刑事と、フランコ政権下で色々とやって来たベテラン刑事のコンビとなる。
普通ならバディ・ムービーとして楽しむはずだが、本作は最初から最後まで両者ともに理解し合えるような仲にはならなかった。
本作が他のバディ・ムービーと大きく違うのはその部分で、終始に渡って若いペドロとベテランのフアンたちの間に壁がありました。
これこそがラストでの疑念を深める一役を買っていて、これは監督の狙い通りとなります。
本作は表向きでは事件を解決させているが、ラストでまさかの謎がまたも投入され、有耶無耶した気持ちで終わってしまう。
つまり、本作にはまだ何か隠された大きな謎や黒幕がいて、今回の事件解決は単なる表向きで一部に過ぎないという謎を残しています。
こういう考えさせて推測させるタイプの作品が好きな人はハマるだろうが、それ以外の人には最後にモヤモヤが残ってしまうと思います。
個人的にはハリウッドやイギリスなどの作品と違った雰囲気があって、スペインにおける独自性を感じる事ができたと思います。
ただし、ラストでの謎を投じた事についてはモヤモヤが残ってしまっていて、なんだか煮えきれない感じになりました。
同じ後味の悪いラストでは名作『セブン』があるけど、そっちと比べるとフワッとした印象になった分、少しばかり物足りないところがありました。
色々と伏線を張っているようだが、全部を解決させるつもりがないので、これも散漫に感じてしまうところがありました。
それでも、タイトルの通り湿地帯のジメジメした雰囲気がストーリーにマッチしていました。