作品紹介
公開年月 | 2015/10/08 |
---|---|
ジャンル | コメディ/ドラマ |
原作 | ティムール・ヴェルメシュ 『帰ってきたヒトラー』 |
監督 | デヴィッド・ヴェント |
脚本 | デヴィッド・ヴェント |
製作 | ラース・ディートリフ、クリストフ・マーラー |
製作国 | ドイツ |
鑑賞方法 | レンタルDVD |
あらすじ
1945年に自殺したはずのアドルフ・ヒトラーが、2014年のベルリンにタイムスリップする。
やがて、ヒトラーのモノマネ芸人と勘違いしたディレクターにスカウトされ、テレビ番組に出演する事になる。
すると、ヒトラーが生きていたら如何にも言いそうな言葉で現代のドイツを斬りまくり、その“芸”の完成度に大ブレイクをするのだった。
登場人物&出演者
・アドルフ・ヒトラー(演:オリヴァー・マスッチ)
主人公。ドイツ・ナチスの総統。自殺後に1945年から2014年にタイムスリップしてしまう。
オリヴァー・マスッチは代表作に『Andy』、『グリード』などがあります。
当初は戸惑っていたが、キオスクの店主に助けられ、持ち前の知性で自身の状況を理解する。
そこに特ダネを狙ったファビアンにスカウトされ、芸人として持ち前の演説をテレビで披露。
現代のドイツ国民が感じている不満を理解し、昔の理想を現実にしようと奔走していく。
最後はファビアンが本物だと気付くが、すでに民衆の心を掴んでいて新たな野望を実現する。
・ファビアン・ザヴァツキ(演:ファビアン・ブッシュ)
民放テレビ局マイTVのフリーの社員。元々は映画監督を志望していたが真っ先にリストラに。
ファビアン・ブッシュは代表作に『23/トゥエンティースリー』、『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』などがあります。
特ダネとしてサッカーをテーマにするが、局長の座を逃したクリストフに処分されてしまう。
たまたま撮影した映像にヒトラーの姿を見て、特ダネの可能性を感じて探し当てスカウト。
ずっとモノマネ芸人だと思っていたが、一緒にいるうちに彼が本物だと分かって危険視する。
最後はヒトラーが本物だとして逮捕するべきだとカッチャに訴えるが、精神病院に入院した。
・クレマイヤー(演:フランツィスカ・ウルフ)
民放テレビ局マイTVの社員。ユダヤ人。受付をしていて、ファビアンが片想いをしている。
フランツィスカ・ウルフは代表作に『パイレーツ・オブ・バルティック/12人の呪われた海賊』などがあります。
常に黒い服をファッションにしていて、友達も同じで悪魔崇拝者という変わった人物である。
ファビアンが片想いを抱いている事を勘づいていて、誘われるのをずっと待っていた様子。
ヒトラーの影響で勇気を持ったファビアンに誘われた事で、一気に二人の距離が縮まる。
最後はファビアンが精神病院に強制収容され、厳重な扉の向こう側で面会して涙を流した。
・カッチャ・ベリーニ(演:カッチャ・リーマン)
民放テレビ局マイTVの幹部社員。女の武器を使って次期局長の座を掴んで高笑いが止まらず。
カッチャ・リーマンは代表作に『デッドボディ』、『生きうつしのプリマ』などがあります。
実際は実力を持った人物であり、勝手に会議へ入ってきたヒトラーの可能性を見出した。
副局長のクリストフにヒトラーの番組を任せると、彼の思惑と違って大ヒットさせていく。
過去にヒトラーが犬を殺した映像が流れた事で局長をクビになるが、映画製作で立ち上がる。
最後は本物のヒトラーだと気付いたファビアンを無視し、その隣に座って成功者となった。
・クリストフ・ゼンゼンブリンク(演:クリストフ・マリア・ヘルプスト)
民放テレビ局マイTVの副局長。次期局長として期待されたが、カッチャに横取りされる。
クリストフ・マリア・ヘルプストは代表作に『チャーリーはスーパーカー』、『ビッケと神々の秘宝』などがあります。
副局長の座をカッチャに奪われてしまう、腹いせとしてクリストフをクビにしていた。
ずっとカッチャに対し敵対心を抱いていて、なんとか局長の座から引きずり下ろそうとする。
ヒトラーを使ってクビにようとしたが、まさかの逆効果となって彼女の名声を上げてしまう。
最後は局長になるもテレビ局の経営が傾き、ファビアンに頼るも結局はそのまま消えた。
・キオスクの主人(演:ラース・ルドルフ)
街中にあるキオスクの店主。状況が掴めなかったヒトラーが倒れて看病をしていた。
ラース・ルドルフは代表作に『ヴェルクマイスター・ハーモニー』、『明るい瞳』がある。
ヒトラーがモノマネ芸人だと思っていて、親切心で彼を店に泊めて新聞を読ませた。
最後はファビアンがスカウトして連れ出し、食べ物の料金を求めるもごまかされてしまう。
感想
個人的な評価
本作はドイツでベストセラーになった同名風刺小説が基になった作品となります。
世界の悪役と言えば、アメリカを代表とした国では「アドルフ・ヒトラー」が最も使われている人物です。
何かと便利に使われるアドルフ・ヒトラーですが、本作はそんな彼の優れた一面を描いた作品となっています。
当然のように肯定的な内容に物議を醸したが、原作者は敢えて彼の優れている部分をリアルに描く事で危険性を発信しているという。
本作では原作を少し変えたキャラクター配置となっているが、ヒトラーの怖さをちゃんと描いた作品となっています。
冒頭はヒトラーがタイムスリップして現代に驚く王道的なコメディで、その姿を見ているだけでも充分に面白く感じさせる。
それでも信念を曲げる事がないヒトラーの強い意志を感じさせ、現代とのギャップを上手くコメディに繋がっていたと思います。
こんな風に軽い調子で続く展開だと思ったら、テレビ出演したところからアドルフ・ヒトラーという人間の凄さが分かる。
やはり、アドルフ・ヒトラーと言えば「演説」であり、そこが最大の魅力でカリスマ性の根源だと言える部分だろう。
一度演説を始めたアドルフ・ヒトラーは、国民の代弁者となって思っている事をズバズバと力強い言葉で語っていきます。
アドルフ・ヒトラーは本作で現代においても主張を曲げなかったが、そこにはドイツを心の底から愛する愛国心が伝わってきます。
あくまで「強いドイツ」を目指している上で、弱者は国を弱くするという理念も下で徹底的に非人道的な事をやって来ました。
これは人間として最低の行為であるが、機械的な考えに置き換えれば、最も効率的で合理的な行為だと考えられます。
自然界は完全なる「弱肉強食」であって、体の弱い者は真っ先に死んでいくが、人間社会では弱い者を守るような世界である。
しかし、そんな弱い者を支えているようでは強い者も弱くなるという考え方を持ち、ヒトラーは徹底的に弱者を排除していったと思います。
あながちヒトラーのやっていた事は間違っていないが、人としては完全に間違っていた。
そんな現代においてドイツは様々な問題を抱え、これを見たヒトラーは落胆し、再び「強いドイツ」を取り戻そうとしているだけです。
正論を言っているような印象を受けますが、極端で人間味のない考え方を平然と実行するヒトラーの怖さがきちんと本作の中盤から発揮されます。
周りの人間は盲信してヒトラーを支持していくが、危険だと判断したファビアンの行動こそが正義だと言えます。
だが、そのファビアンが精神病院に強制収容されてしまい、今後のドイツはどう考えても明るい方にはいかないという皮肉を演出しています。
本作には現代のドイツが抱える闇を真正面から斬り、強い指導者はどれほど危険なのかも示唆している社会派のブラックコメディだと作品だと思います。