ザ・シェフ/悪魔のレシピ RE-2507

作品紹介

公開年月  2017/01/31
ジャンル  ホラー/サスペンス
原作  なし
監督  ダン・プリングル
脚本  ダン・プリングル
製作  アダム・J・メリフィールド
製作国  イギリス
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

イギリスのロンドン郊外、街の一角で父親とともにケバブ屋を営む移民の青年サラール。
街には酒とドラッグに溺れた若者で溢れていたが、近所に有名起業家がナイトクラブをオープンさせた事で彼らの振るまいに拍車がかかっていた。
そんなある日、サラールの父が客に絡まれ暴行を受け死亡し、移民である事の社会的閉鎖感も相まって怒りに駆られた彼は復讐を開始するのだった。

登場人物&出演者

サラール(演:ジアド・アバザ)
主人公。父親とともにケバブ屋を営む。大学生で論文を仕上げれば国連に就職ができる。
ジアド・アバザは代表作に『エクソダス:神と王』、『007/スペクター』などがあります。
周囲の環境は最悪で傍若無人の若者が粋がったせいで父親が事故死してしまう。
父親の死、論文の締め切り、お金がない状況が重なってついに凶行へと走る事に。
今まで溜まっていた鬱憤を晴らすように殺人を繰り返し、食材にしていく恐ろしい状況へ。
やっている事は間違っているが、彼をそういう風に変えた環境は非常に怖いと感じた。

サラ(演:クリスティン・アザートン)
ホテルの清掃係として働くトルコ系移民。食い逃げした男を追うサラールを呼び止める。
クリスティン・アザートンは代表作に『National Theatre Live:The Hard Problem』ながあります。
同じ移民としてサラールに好意を持ち、差別的な状況でも暴力に訴えるのは良くないと言う。
引き返せないところまで来たサラールに束の間の安らぎを与える大きな役割を担った。

サビール(ネイエフ・ラシェド)
トルコ人の移民。息子とともにケバブ屋を営む。故郷で浴びた毒ガスの影響で病気持ち。
ネイエフ・ラシェドは代表作に『チャーリーとチョコレート工場』、『砂漠でサーモン・フィッシング』などがあります。
閉店していたが、ムリヤリ入ろうとした若者と口論になって突き飛ばされ事故死する。
国連への就職を目指すサラールを応援し、彼の為に新たな店を開業しようと考えていた。

マリック(演:リース・ノイ)
トルコ系移民の大学生。7年後のサラールの店でアルバイトとして雇われる。
リース・ノイは代表作に『My Kingdom』、『Seamonsters』などがあります。
態度の悪い客を黙って見過ごせないが、サラールによって止められて店を後にする。
その後、サラールをつけて彼のやる事を見ているが、真相の一歩手前でかわされてしまう。
それでも諦めず、ついにサラールの本性を知って協力しようとするが拒まれる。
怖じ気づいたサラールを裏切ってブラウンに売って報酬を得る事になる。

スティーヴ(演:ダーレン・モーフィット)
ブラウンが行っているドラッグ売買の売人。サラールの店でやりたい放題をした。
ダーレン・モーフィットは代表作に『ドッグ・ソルジャー』、『ドゥームズデイ』などがあります。
サラールがケバブの食材にしようとするが、思い留まって生かされる事になる。
当初は汚い言葉を浴びせていたが、殺されると悟ってサラールに対する無礼を詫びた。
その反省を知ったサラールは共感し、初めて殺さずに解放する事になる。

ジェイソン・ブラウン(演:スコット・ウィリアムズ)
有名起業家。サビールがレストランの為に買おうとした建物をクラブに改装している。
スコット・ウィリアムズは代表作に『バック・ビート』、『マシンガン・ツアー/リトアニア強奪避航』などがあります。
クラブの開店が原因でサラールが経営するケバブ屋の周辺が更に治安が悪くなった。
実は裏でドラッグを街中にまき散らし、役所や警察も彼のやりたい放題になっていた。
サラールの店を買収しようとするが、鼻で笑われ追い返された事で逆に脅した。
最後はサラールをねじ伏せたが、彼の仕掛けた罠によってドラッグがバレて逮捕される。

感想

個人的な評価

本作はイギリスの都市伝説となっている『スウィーニー・トッド』が基になっています。
この『スウィーニー・トッド』と言えば、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の作品を思い出される事だろう。
ミュージカル風になっていて、内容は残酷でありながらも明るいテイストになっています。
ですので、そのイメージで本作を鑑賞すると、かなりの違いに驚く事でしょう。
なぜならば、本作はホラー映画でありながらも社会派のテイストを含んでいるからです。
近年ではヨーロッパの移民問題が取り沙汰されるが、本作はその移民の目線で物語が展開されています。
傍若無人な若者が酒で酔っぱらい、ドラッグでラリっている場所でケバブ屋をやる。
その時点でかなりのハードな経営となるが、サラールの店は夜が営業時間となっている。
当然のようにやって来る客はみんな酔っぱらいか、ドラッグでラリっているヤツ。
店側の人間じゃなくても、やって来る客がみんな揃ってクズでイライラさせられます。
普通はそれで済ましてしまうが、サラールは一線を越えてしまう事になります。
ですが、サラールが暴れていたクズたちを黙らせる展開はスッキリさせられるのです。
そのスッキリさせるまでの過程が分かりやすく描かれているから納得できてしまう。
気づけば、観ている側もサラールの気持ちに共感し、彼の行動は間違っているが、ある程度は理解できるだけの説得力がある。
日常化したサラールの狂気は彼だけならなんとも思わないが、普通の日常を持ってくる他の親しい人物によって異常性が浮き彫りになっていく。
その中でもたまたま知り合った同じクルド人移民のサラは、闇に染まってしまったサラールのオアシスになっているのも大きいでしょう。
更に同じクルド人移民である大学生のマリックという存在も彼の運命を変える事になる。
サラールの本性を知ったマリックが裏切られ、その仕返しに裏切り行為をしたのは、同胞であっても環境によって考え方が変わる事を示していた。
本作の結末にハッピーエンドはないと分かりながらも、サラールはどうなっていくのか非常に気になりました。
含みを与える終わらせ方は社会派映画らしい結末だと言えるが、個人的にはハッキリと描いて欲しかったです。
欲を言えば、もう少しサラとの関係性にサラールの感情が揺さぶられる演出も欲しかった。
それでも本作は予想していたホラー映画と違って、考えさせられる作品であり、移民の差別を真面目に描いたのは非常に良かったです。
あとは邦題のせいで本作がB級ホラー映画のイメージに成り下がっているのは残念でした。