いぬやしき VD-383

作品紹介

公開年月  2018/04/20
ジャンル  アクション/SF
原作  奥浩哉 『いぬやしき』
監督  佐藤信介
脚本  橋本裕志
製作  梶本圭、甘木モリオ
製作国  日本
鑑賞方法  動画配信サービス

あらすじ

定年を間近に控え、会社にも家庭にも居場所のない冴えないサラリーマンの犬屋敷壱郎。
医者から末期ガンで余命もわずかだと宣告され、家族に打ち明けないまま悲嘆に暮れていたが、ある日、謎の事故に巻き込まれ体が機械化されてしまう。
超人的な力を手にした壱郎と同じく高校生の獅子神皓も同じ力を手に入れると、やり場のない怒りを人類全体に向けるのだった。

登場人物&出演者

犬屋敷壱郎(演:木梨憲武)
主人公。定年間近のサラリーマン。末期ガン。仕事ができず、家庭でも立場がほぼない。
木梨憲武は代表作に『竜馬の妻とその夫と愛人』、『ポストマン』などがあります。
念願のマイホームを買うも家族から不評で、末期ガンと宣告を受けても打ち明けられない。
もらった力で重病患者を治すが、同じ力を持つ皓の恐ろしさを直行から聞き止めようとする。
皓が無差別殺人を始めると、娘の麻里が巻き込まれて急いで助けに行くも圧倒されてしまう。
最後は主人公補正を使って逆転勝利するが、家庭での立場はまったく変わらないという。

犬屋敷麻理(演:三吉彩花)
壱郎の娘。高校生。皓や直行とも同じクラス。壱郎に対して厳しく接して会話もしない。
三吉彩花は代表作に『ダンスウィズミー』、『犬鳴村』などがあります。
漫画家を目指して絵を描いているが、単純に情けない父親に反発し、母親から反対される。
父親と直行が一緒にいるところを目撃し、様子がおかしい壱郎に詰め寄るも逃げられる。
都庁の社会見学中に皓の無差別殺人に巻き込まれ、ケガを負うが駆けつけた壱郎が助けた。
最後は皓に命を狙われるが、壱郎の覚醒で助かり、ちょっとだけ関係が解消されていた。

犬屋敷剛史(演:福崎那由他)
壱郎の息子。高校生。学校ではイジメを受けるが何も言わない。姉と同じく壱郎には厳しい。
福崎那由他は代表作に『もういちど』、『サムライマラソン』などがあります。
毎回のようにカツアゲされていて、その度に親の金を盗んでいたがとうとうバレてしまう。
母親に怒られるが、事情を知らない壱郎から1万円を受け取り、何も言わず部屋に逃げ出す。
最後は壱郎が皓を倒した事を知らず、朝食を食ってからいつも通り学校へ行ってくる。

犬屋敷万理江(演:濱田マリ)
壱郎の妻。意見を言わない夫を尻に敷く。パート勤め。マイホームを買っても不満しかない。
濱田マリは代表作に『血と骨』、『嫌われ松子の一生』などがあります。
夫の顔を一切立てようとせず、邪魔者扱いしているせいで子供たちも父親への当たりが強い。
いつもイライラして夫に当たるが、家族が崩壊している事に気付かず娘に言われてしまう。
最後は家のローンを払う為に早出をするようになり、特に壱郎との関係は変わらない。

安堂直行(演:本郷奏多)
高校生。皓の親友。同級生からイジメを受けているせいで登校拒否する。生き甲斐がない。
本郷奏多は近年の出演作に『Diner/ダイナー』、『キングダム』などがあります。
ゲームやマンガに飽きていると、体を改造された皓の説得で仕方なく学校へ行く事になる。
圧倒的な力でいじめっ子たちをねじ伏せる皓が殺そうとして、彼の行きすぎた行動を止めた。
人殺しする皓が怖くなり、壱郎と出会って力の使い方を教えながら一緒に止めようとする。
最後は倒されたはずの皓と再会し、前みたいに接するが何も言わず消え去ってしまう。

渡辺しおん(演:二階堂ふみ)
高校生。クラスでは目立たない。学級崩壊している中、一人で黙々と真面目に取り組む。
二階堂ふみは代表作に『ヒミズ』、『悪の教典』などがあります。
いじめっ子たちをねじ伏せた皓に感動し、休み時間の時に以前からの好意を告白していた。
実は両親を病気で亡くしており、祖母と二人暮らし、自分も長生きできないと悟っている。
全国指名手配となった皓と偶然出会うと、自分の家に匿って一緒にいようと約束させた。
最後は自宅に来た警察の特殊部隊との銃撃戦に巻き込まれ、流れ弾を受けて死んでしまう。

獅子神優子(演:斉藤由貴)
皓の母親。皓を一人で育てるシングルマザー。元夫は不倫した末に離婚されている。
斉藤由貴は代表作に『雪の断章/情熱』、『恋する女たち』などがあります。
実は膵臓ガンの末期状態で肺にも転移し、金のある元夫に皓を預けようと考えていた。
皓の力でガンが消え去り、希望を持つようになるも息子の殺人を知って途方に暮れる。
マスコミが殺到して一斉に責められるが、対応ができずネットの掲示板でも叩かれていた。
最後はプレッシャーな耐え切れず、自宅で自殺を図って、病院に運ばれるも死んでしまう。

獅子神皓(演:佐藤健)
悪役。高校生。母子家庭で育つ。父親は他に女を作っているが、今でも交流を持っている。
佐藤健は近年の出演作に『一度死んでみた』、『ひとよ』などがあります。
登校拒否の直行に改造された体を見せ、いじめる同級生たちに文字通り力で謝らせていた。
母親の病気を治すも人殺ししたせいで失ってしまい、侮辱する人間を片っ端から殺していく。
匿ってくれたしおんも警察との銃撃戦で死ぬと、新宿で無敵の人になって無差別殺人を展開。
最後は主人公補正パワーで倒されるが、まだ生きていて直行と一度会うもどこかへ消えた。

感想

個人的な評価

本作は『第6回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭』にて、インターナショナルコンペイティション部門のゴールデン・レイヴン賞を受賞しています。
さすがは『GANTZ』と同じ作者だけあって、設定や話しの流れは雰囲気が似ています。
ただ、主人公が仕事でミスを連発し、家でも威厳がなく居場所のない中年男という点が本作の独自性を出しています。
そんな冴えない男を木梨憲武が演じているのは面白く、しっかりと役作りしていました。
それに対し、悪役を演じる佐藤健も悪くないですが、さすがに高校生役はムリがありました。
演技が良くても年齢の設定にムリがあるせいで、劇中に表示するか言われない限り高校生には見えません。
そもそも大学生でもギリギリな感じであり、ここら辺の配役はちょっとゴリ押しすぎる気がしてなりませんでした。
漫画を原作にした邦画の実写映画にしてはCGの方がかなり頑張っていました。
ハリウッドと比べると粗いですが、邦画の中ではトップレベルと言えるほどでした。
ただ、それらを生かすストーリーが微妙で、主人公の犬屋敷は頭が悪すぎて力を手に入れても使いこなすまで長すぎます。
逆に悪役の皓は使いこなしているが、主人公の成長とバランスを取る為に余計なドラマパートをやっているような印象でした。
本来なら、こういう作品はテンポ良く進んでいくべきであり、これを蔑ろにしたら中だるみが確実に発生してしまいます。
本作はまさに悪い方に作用し、素材が良かっただけにかなりもったいないと思いました。
改造された体の潜在能力を引き出す悪役と、マトモに飛べない主人公では勝ち目がないのは明らかだが、ちょっとばかり主人公補正を使いすぎたと思います。
それに主人公の家族における関係性が改善されたワケじゃなく、悪役が改心するような事もなかったので、物語としての完結はしていないと感じました。
あと、全体的に言える事だが、物語をスムーズに進める為に偶然があまりにも頻発して都合の良い流れになる展開はもう少し演出を工夫できなかったのだろうか。
ラストのアクションは邦画にしては頑張っていたが、土台となるドラマパートを引っ張ったワリに結果が出ないのは如何なものか。