ラスト・ドア RE-3085

作品紹介

公開年月  2019/04/15
ジャンル  ホラー/ヒューマンドラマ
原作  なし
監督  ルナ・グアラーノ
脚本  エミリアーノ・ルッビ、ルナ・グアラーノ
製作  エミリアーノ・ルッビ、ルナ・グアラーノ
製作国  イタリア
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

移民反対の抗議集会が活発化するローマで、イタリア人の若者エンリコも不法入国者を人間以下に見る差別主義者である。
しかし、突如発生した暴動で街が混乱に陥る中、一度死んだ者たちが次々とゾンビ化し、エンリコは助けを求めて間一髪のところで助け出された。
エンリコは数少ない食糧を分け与え寝る場所を提供する移民たちの優しさに触れ、差別意識が薄れていくのを感じるが、そんな矢先にゾンビが屋内へ侵入するのだった。

登場人物&出演者

エンリコ(演:アントニオ・バンノ)
主人公。移民を嫌っている差別主義者。移民への反対デモに参加して懸命に盛り上げていた。
アントニオ・バンノは本作が長編映画デビュー作となります。
突然、ゾンビに襲われて仲間が食われると、移民たちが住んでいるアパートに避難する。
差別主義者だという事実を隠し、寝る場所と食糧を与えられてなんとか馴染もうと努力する。
唯一の子供だったアリとサッカーをして楽しむが、ゾンビたちの侵入で逃げだそうとする。
最後はアリを囮にして外に出たが、それを見たイブラヒムに頭をかち割られて死んだ。

イブラヒム(演:シディ・ディオップ)
移民が多く住んでいるアパートにいる大柄な黒人男性。寡黙で当初は部屋に閉じこもる。
シディ・ディオップは代表作に『Io & Marilyn』、『Cosa fai a Capodanno?』があります。
アパートにゾンビが侵入してくると、率先してハンマーを持って次々と倒していった。
誰よりも大柄な事から逆らう者はいなかったが、特に問題を起こさず寡黙に監視を続ける。
ゾンビがアパート内に侵入してくると、エンリコとアリを助けて囮になって二人を逃がした。
最後はアリを囮にしたエンリコの非道を見て、背後からハンマーで頭をかち割って殺した。

ファルラン(演:シエク・ダウダ)
移民が多く住んでいるアパートにいた小柄な黒人男性。襲って来るのはゾンビだと説明した。
シエク・ダウダは本作が長編映画デビュー作となります。
ゾンビのドラマを見ていて、その知識から外にいるのはゾンビとして話すも誰も信じず。
噛まれた仲間をいち早く処分するべきだと主張すると、当然のように誰も耳を貸さなかった。
アパート内にゾンビが大量に侵入すると、サラの部屋まで助けを求めるが彼女を死なせる。
最後はなんとかタンスの上に逃げるが、当然のように無意味で引きずり込まれて食われた。

ビクター(演:シリル・ドーラン)
移民が多く住んでいるアパートにいた中肉中背の黒人男性。比較的冷静に物事を考えている。
シリル・ドーランは本作が長編映画デビュー作となります。
相手がゾンビだと決めつけるファラハンの言葉をまったく信じず、逆に注意をしていた。
食事の席に着くと、イブラヒムに感謝するエンリコに対して横から自己紹介をした。
アパートの食糧がサラに盗まれた事を知らず、餓死する運命ならば調達するべきだと主張。
最後は外に出て調達しようとするが、すぐに捕まってゾンビたちの食糧となってしまう。

アリ(演:パピ・モマル・ディオップ)
サラの息子。アフリカの移民。常にサッカーボールを手放さず一人でずっと遊んでいた。
パピ・モマル・ディオップは本作が長編映画デビュー作となります。
外にゾンビが発生すると安全なアパート内にいて、そこで一人でボール遊びをしていた。
状況が今一つ分かっておらず、サラからアフリカにいた時の事を例えられて理解した。
アパート内にゾンビが侵入してくると、サラが襲われてエンリコに連れ出されるも抵抗した。
最後は外に逃げようとしてエンリコに突き飛ばされ、そのままゾンビの餌食になった。

サラ(演:アワ・コウンドウル)
移民が多く住んでいるアパートにいた黒人女性。薬学部にいたが戦争で卒業をしていない。
アワ・コウンドウルは本作が長編映画デビュー作となります。
貴重な医療の知識を持っている事もあって、噛まれたステファノの治療に当たっていた。
息子のアリが状況をよく分かっていない事もあって、ゾンビをライオンに例えて説明した。
アリの為に豆の缶詰を盗んでいて、それが揉め事の原因になっても知らんぷりをした。
最後は部屋に逃げようとしたファラハンを入れてしまい、襲われてアリをエンリコに頼んだ。

ハリード(演:ムニス・フィルワナ)
移民が多く住んでいるアパートにいたイスラム系の男性。生物学者で弟とイタリアに来た。
ムニス・フィルワナは本作が長編映画デビュー作となります。
当初から祖国を離れてイタリアに来る事を拒んでいて、弟に不平不満を話していた。
ドアを突破されたゾンビを止めようとして噛まれてしまうが、誰にも言わずに隠していた。
発熱するとベッドから起き上がれず、弟に薬を持ってきてもらい、ごまかそうとする。
最後は死んでしまうとゾンビ化し、呆然としていた弟を襲うがイブラヒムに頭を割られた。

モハメド(演::ワジー・ジャベル)
移民が多く住んでいるアパートにいたイスラム系の男性。ハリードの弟でイタリアに来た。
ワジー・ジャベルは本作が長編映画デビュー作となります。
ハリードをムリヤリ連れて来た事でずっと不平不満を言われるが、仕方ないと頭を抱える。
アパート内にゾンビが侵入して対応するが、ハリードが噛まれた事をまったく知らず。
発熱で動けない兄の為にコッソリ鎮痛剤を持ってくるが、ようやく噛まれた事を知った。
最後はゾンビとして目覚めた兄に驚き、何もできず呆然としていると噛まれてゾンビとなる。

ステファノ(演:カルロ・カプリオーリ)
移民が多く住んでいるアパートにいたイタリア人男性。避難してきたエンリコに話しかけた。
カルロ・カプリオリは代表作に『Ex – Amici come prima!』、『Oh mio Dio!』があります。
移民への反対デモをするイタリア人ではなく、みんなで協力して平穏に暮らそうと努力する。
同じイタリア人だったエンリコを快く出迎えると、イタリア語で移民たちの言葉を通訳した。
ドアを破って侵入してきたゾンビに噛まれてしまい、サラが少ない薬で看病をされていた。
最後はついに死を迎えてしまうと、ゾンビ化してエンリコを襲うもイブラヒムに倒された。

感想

個人的な評価

本作は監督と共同脚本を務めるルナ・グアラーノにとって二本目の長編映画となります。
この作品は最近めっきり減ってしまったイタリア製だが、ヨーロッパにとって社会問題になっている移民をテーマにしています。
まさにジョージ・A・ロメロ監督が描いてきたゾンビ映画を通じて、社会風刺を取り込んだ作品の一つと言えるだろう。
多くのゾンビ映画というのは単純にグロテスクなシーンを取り上げて、主人公たちがどうやって生き残るのかがテーマになっています。
これがシリアスな作品とコミカルな作品だと微妙に違っていて、本作は前者に当たります。
そうなってくると、ゾンビが発生した原因などどうでも良く、あくまでイタリアで生きている移民たちの思いを描こうとしています。
弾圧されている移民たちが住むアパートにデモに参加していた主人公が来て、自分はデモに反対していた咄嗟にウソをつきます。
これで寝る場所と食糧を確保した主人公は、後ろめたさがあったのか、みんなに挨拶して少年のアリともサッカーをして交流していきます。
差別主義者だった主人公が改心したと思ったら、まさかラストでアリ少年を突き飛ばして囮にして自分が助かるというクズな行動に出るとは思わなかった。
基本的にゾンビ映画では子供が殺される場面が敬遠されているが、本作はそこに踏み込んだ事は評価していいと思います。
しかし、それ以外というより、全体的に演出がダラダラしていて抑揚がなく、ずっと同じようなテンポで展開して退屈してしまいます。
特に移民たちの現状を説明する描写に工夫がまったくないし、主人公がクズである事をもっと見せるべきだったと思います。
全部が中途半端になってしまい、ゾンビ映画としての面白さもなく、描きたい事と実際に作品として作った時の差があまりにも大きかったです。
ここら辺はちゃんと分かっているジョージ・A・ロメロ監督の絶妙なバランスの上手さ、社会風刺もあってゾンビ映画としても面白い点はさすがだと改めて分かります。