夏至 RE-2381

作品紹介

公開年月  2000/05/24
ジャンル  ドラマ
原作  なし
監督  トラン・アン・ユン
脚本  トラン・アン・ユン
製作  クリストフ・ロシニョン
製作国  ベトナム、フランス、ドイツ
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

母の命日に集まったスオン、カイン、リエンの三姉妹と兄弟のハイ。
三姉妹は仲が良く、すべてを分かち合っていたが、三人にはそれぞれ誰にも話せない秘密を抱えていた。
そんな姉妹たちに酒宴でカインの夫、キエンが彼女たちに母が本当に愛したのは父ではなく、初恋の人だと大胆な仮説を唱える。
両親を理想の夫婦とし、最後まで深く愛し合っていたと信じて止まない三姉妹は、自らを投影して心を揺るがしていくのであった。

登場人物&出演者

リエン(演:トラン・ヌー・イェン・ケー)
主人公。三女。学生。朝はいつもダラダラして兄のハイに甘える。恋人とは微妙な関係。
トラン・ヌー・イェン・ケーは代表作に『青いパパイヤの香り』、『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』などがあります。
仲良しの姉たちとは他愛もない会話をして、兄には恋人のような関係を楽しんでいる。

ハイ(演:ゴー・クァン・ハーイ)
長男。役者の卵。朝起きると同居しているリエンを起こし、筋トレをするのが日課である。
ゴー・クァン・ハーイは代表作に『モン族の少女/パオの物語』などがあります。
17回ほど映画に出演するも、すべてが端役のセリフなしに少し不満を持っている。
同居している妹にリエンとは仲良しで、他人から見るとまるでカップルような雰囲気。

スオン(演:グエン・ニュー・クイン)
長女。カフェを経営している。過去に子供を流産していて、夫との仲が変化している。
グエン・ニュー・クインは代表作に『中国の植物学者の娘たち』、『モン族の少女/パオの物語』などがあります。
実は青年トゥアンと浮気をしているが、それは本気の恋だと確信していた。

カイン(演:レ・カイン)
次女。新婚で子供はまだいない。待望の赤ん坊ができて、夫とともに秘密にしていた。
レ・カインは本作が映画デビュー作となっています。
赤ん坊ができた事でキエンが浮気をするのではないかという心配をしている。

キエン(演:チャン・マイン・クオン)
カインの夫。ライターで現在は処女小説を書いている。三姉妹の母親について調べる。
チャン・マイン・クオンは代表作に『季節の中で』などがあります。
旅行先で飛行機が一緒になった女性を一夜の過ちを犯してしまうのであった。
初めて出来た赤ん坊に喜びをカインと分かち合い、しばらく他の人には秘密にしていた。

クォック(演:アンクル・フン)
スオンの夫。カメラマン。ハロン湾には水上の家で暮らす不倫相手と子供がいる。
アンクル・フンは代表作に『インドシナ』などがあります。
スオンと不倫相手の二つの土地を行き来し、その間で疲れ切って状況を変えようとする。

感想

個人的な評価

トラン・アン・ユン監督の三作目となります。
最新作となった『ノルウェイの森』は日本でも話題となりました。
ベトナムの映画というと、どうしうても戦争を連想するような作品を思い浮かべる。
しかし、本作はベトナムにある三姉妹の日常を淡々と描いています。
まさにベトナムという異国情緒があって、日本とはまったく違う文化だと分かります。
まず、劇中に流れている時間が非常にゆったりで誰も急ぐ事がありません。
基本的に誰も時間に対して意識しておらず、登場人物はみんな自然な時間の流れに身を任せているのです。
本作最大の特徴と言えば、ベトナムらしい湿っぽい雰囲気だと思います。
終始に渡ってベトナムの気候を意識した演出が映像から充分に伝わってきます。
更に色彩の使い方が一見して派手であるが、きちんと馴染んでいるのも大きな特色です。
日本とは似ても似つかない世界で、喧騒と忙しさから解放された本作はどこか気持ちが落ち着けるような作品となっています。
ただ、内容としては決して晴れやかなモノではなく、映画の雰囲気同様にどこか湿っぽいような展開である。
三姉妹は仲が良いけど、三人にはそれぞれ話せない秘密を抱えているのです。
この秘密はずっと抱えるようなモノじゃなく、時間とともに差し迫ってきます。
そして、三姉妹が互いに告白するシーンはまさに本作最大の見せ場だと言えるだろう。
三人が抱き合って涙を流しているが、それは傷を負った三人だからこそ分かち合える気持ちだと伝わってくる。
だが、最後に三人が笑顔ではしゃいでいるシーンは、それまでのダークな気持ちを晴れやかにしてくれます。
異国情緒が味わえるだけじゃなく、なんとなくベトナムにいるような錯覚を与えてくれる心地良い作品でした。