清須会議 RE-2266

作品情報

公開年月  2013/11/09
ジャンル  時代劇/ドラマ
原作  三谷幸喜 『清須会議』
監督  三谷幸喜
脚本  三谷幸喜
製作  亀山千広、市川南
製作国  日本
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

天正10年、天下統一を目前に織田信長は本能寺の変で命を落としてしまう。
長男の信忠も討ち死にしてしまい、そこで織田家の後継者争いが勃発する。
筆頭宿老の柴田勝家、明智秀光討伐の功労者・羽柴秀吉が後見に名乗りを上げ、それぞれが三男の信孝と次男の信雄を推す。
対立が深まる中、秀吉への恨みを持つお市は勝家に加勢し、秀吉は軍師・黒田官兵衛を使って策を巡らせていく。
お互いに一歩が引けないまま、ついに決戦の場となる清須会議へと臨むのであった。

登場人物&出演者

柴田勝家/権六(演:役所広司)
主人公。織田家の筆頭宿老として亡き当主の為に命を賭けて支えようとする。
お市に恋心を抱いているが、脂性で臭いという事で当初は嫌われていた。
役所広司は数多くのテレビドラマや映画、舞台やCMなど幅広く活躍しています。
本作では誰よりも織田信長に対して忠義を持ち、織田家を守るという使命を感じている。
ただ、戦場では縦横無尽の活躍であっても、今後の時代では必要とされない人物です。
後先考えずに行動してしまい、周囲の迷惑も感じない無神経で不器用なところもあります。
最後に見せた覚悟の表情は戦場で戦っていた武士のモノで、今後の運命を現していた。

羽柴秀吉/籐吉郎(演:大泉洋)
もう一人の主人公。宿老の末席だったが、光秀を討った事で立場が大きくなっている。
昔からお市に恋い焦がれるが、彼女の夫と息子を殺した過去から相当嫌われている。
大泉洋は近年の出演作には『アイアムアヒーロー』、『駆込み女と駆出し男があります。
百姓の出という事で勝家からは見下されているが、その器量は天下人になるほどです。
頭の回転が早く、何より自分に利益をもらす人物を丸め込むのが大の得意です。
当初は反対意見だった丹羽長秀すらも味方に引き入れるほどの口達者ぶりでした。
大泉洋のシリアスとコミカルな演技により、嫌なヤツだけど器が大きい事をみせています。

丹羽長秀/五郎佐(演:小日向文世)
宿老の一人。織田家の双璧の一人と呼ばれ、冷静沈着な判断力と豊富な知識を有する。
小日向文世は様々な作品で名脇役として活躍し、数多くのテレビドラマや映画で活躍します。
当初は筆頭宿老である勝家を支えていたが、織田家を守る事を考えて裏切ってしまう。
真っ当な意見を述べた秀吉側に賛同してしまうが、友人として勝家を思うところがある。

池田恒興/勝三郎(演:佐藤浩市)
信長とは乳兄弟。武将としてはダメだが、処世術に長けており、光秀に代わる宿老となる。
佐藤浩市は三谷幸喜作品に多く出演していて、その度に違ったキャラクターを見せています。
とにかく、池田恒興という人物が三人と比べて格が落ちるけど、コミカルな場面で活きる。
特に勝家からの脅迫めいた協力要請、おいしい話しを持ってくる秀吉の間に挟まれる。
二枚目でありながら三枚目の演技も確実にこなす佐藤浩市の上手さが光っている。

前田利家/犬千代(演:浅野忠信)
勝家の与力。勝家を尊敬しているが、昔からの友人である秀吉とも深い絆を持っている。
浅野忠信は数多くのテレビドラマや映画で活躍し、現在はハリウッドにも進出しています。
かなり難しい立場で、どっちに付くべきか迷うところだが、彼の真面目さが現れている。
浅野忠信の落ち着いた演技はクセが強い登場人物の中では逆に存在感があります。

黒田官兵衛(演:寺島進)
秀吉の軍師。何かと秀吉に策を進言しており、絶大な信頼関係を築いている。
寺島進は近年の出演作には『エイプリルフールズ』、『イン・ザ・ヒーロー』があります。
基本的にチンピラ風の役が多い寺島進だけど、本作では落ち着いた珍しい演技でした。

お市の方(演:鈴木京香)
信長の妹。絶世の美女として勝家、秀吉が恋い焦がれる存在である。
鈴木京香は主にテレビドラマや映画で活躍し、様々な役柄を柔軟にこなす実力派です。
過去に秀吉が夫の浅井長政と息子の万福丸を殺された事に深く恨みを持っている。
秀吉が嫌がる事を進んで実行していき、最終的には暗殺まで勝家に命じるほどの恨んでいる。
鈴木京香がその時代の女性にしか見えないほど、お歯黒や引き眉が似合っていました。

感想

個人的な評価
三谷幸喜が書いた小説をベースに自ら監督と脚本を手がけた作品。
つまり、本作は正真正銘の三谷幸喜ブランドの映画となります。
初期の頃は面白い作品を多く手がけていたが、近年は作品を出せば劣化していく状態です。
あまりにも悲しすぎる現状に、もう映画から手を引いた方がいいと思ってしまうレベル。
しかし、本作はまだまだ三谷幸喜の調子が良かった時の作品となっている。
三谷幸喜作品の特徴として、多く登場人物が登場する群像劇が最初に連想されるでしょう。
これは『THE 有頂天ホテル』、『ザ・マジックアワー』、『ギャラクシー街道』などの作品が挙げられます。
様々な登場人物がいて、別々の物語であるけど、最終的に一つになるという流れです。
本作でも数多くの登場人物がいて、群像劇のベースが形成されています。
だけど、本作はちゃんと柴田勝家という主人公を据えて、好敵手の羽柴秀吉がいる。
そう、本作は群像劇ではない作品であり、柴田勝家と羽柴秀吉を中心に物語を展開させる。
本作は主に柴田勝家と羽柴秀吉の対立が中心であり、その周りで様々な人物が関わっていくという流れになっています。
もちろん、勝家を演じている役所広司、秀吉を演じている大泉洋は実力者で、それぞれのキャラクターを上手く演じています。
だからこそ物語が盛り上がっていき、二人の明確な対比が面白さに繋がっていく。
かつての戦国時代で名を上げた勝家と、太平の世に向かっている時代で台頭する秀吉。
二人の考え方も頷くばかりで、意見が衝突してもしょうがないという説得力を生んでいます。
子供のような性格で、真っ直ぐに主だった信長に忠義を尽くしてきた柴田勝家。
腹では何を考えているのか分からないが、信長に恩義を持っている羽柴秀吉。
この二人が今後の時代でどっちが必要か観ている側にも分かりやすく提示してくれている。
とにかく、本作は二人が中心となっているからこそ、しっかりと脇役たちも支えとして機能しています。
ただ、本作のベースにはコミカルな要素があって、変な特殊メイクをしているのに、一方では史実に忠実な化粧をしている。
その違和感で笑いを取ろうとしているなら、あまりにも安直すぎると思います。
ワザとやっているだろうデフォルメされた特殊メイクだが、途中からはあまり気にならなくなりましたけど。
それに会話劇は面白いというほどじゃなく、これは演者の実力で間を持たせている。
本作は脚本の上手さよりも、出演者たちの演技力にだいぶ助けられていると感じました。
やはり、本作からも三谷幸喜の限界が垣間見える演出の劣化を残念と思うしかない。