作品紹介
公開年月 | 2017/11/17 |
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ジャンル | ドラマ/サスペンス |
原作 | なし |
監督 | ダン・ギルロイ |
脚本 | ダン・ギルロイ |
製作 | トッド・ブラック、ジェニファー・フォックス、ほか |
製作国 | アメリカ |
鑑賞方法 | レンタルDVD |
あらすじ
長年法律事務所の裏方の仕事をしてきた、有能だが見た目が冴えない人権弁護士のローマン・J・イズラエル。
ある日、パートナーで事務所代表のウィリアムが倒れた事を機に帳簿を調べると、事務所の資金調達に不正をがあった事を知り信念を大きく揺さぶれていく。
利益優先の凄腕弁護士ジョージ・ピアスに雇われ、殺人事件を担当する事になるが、その裁判で不正が行われていると知り、自分の人生を変える大きな問題に足を踏み入れるのだった。
登場人物&出演者
・ローマン・J・イズラエル(演:デンゼル・ワシントン)
主人公。弁護士。人権派として知られ、犯罪を犯した弁護人でも人権があると主張する。
デンゼル・ワシントンは近年の出演作に『フェンス』、『マグニフィセント・セブン』などがあります。
人付き合いは苦手で事務所の裏方をしていたが、代表が倒れてから矢面に立つ事となる。
ピアスから能力を買われて雇われ、当初の信念に意味がないと悟ってビジネス的な仕事人に。
弁護していた依頼人の情報で違法に懸賞金を得て、そのせいで命を狙われるようになる。
最後は自分の罪を認めて自ら訴えようと覚悟を決めるが、背後から撃たれて死亡してしまう。
・マヤ・オルストン(演:カルメン・イジョゴ)
ボランティアで人権活動をしている。失業をしようとしたローマンの就職相談に応じた。
カルメン・イジョゴは代表作に『ネゴシエーター』、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』などがあります。
人権弁護士としてローマンを尊敬していて、彼と出会った事で迷っていた活動に自信を持つ。
若者たちにローマンの言葉を贈ろうとしたが、彼の考えと対立した聴衆の言動に悩む。
その埋め合わせとしてローマンをディナーに誘い、そこで彼の熱心な活動を応援していた。
最後は信念を思い出したローマンの遺志を引き継ぐと、次の世代に伝えるべく活動を続ける。
・ラングストン・ベイリー(演:ナイルズ・フィッチ)
ギャングの若者。仲間であるカーターと店を襲った際、店員を撃ち殺した罪で拘束される。
ナイルズ・フィッチは代表作に『ヴィンセントが教えてくれたこと』などがあります。
当初はウィリアムズが弁護をしていたが、彼が倒れたせいでローマンが代わりに務めた。
減刑しようとローマンは独自に奔走し、司法取引として指名手配のカーターの居所を教えた。
最後はローマンが司法取引に失敗してしまい、結局はピアスの事務所は負ける事になる。
・カーター・ジョンソン(演:アマリ・チアトム)
ギャングの若者。デレルとラングストンとともに店を襲撃して、店員を撃ち殺して逃走。
アマリ・チアトムは代表作に『ジャンゴ/繋がれざる者』、『デトロイト』などがあります。
逃亡していた居所を知っていたラングストンの情報を聞いたローマンによる通報される。
逮捕されるとピアス法律事務所に弁護を頼むが、ローマンが懸賞金を手にしたと知っていた。
最後はローマンに対して命を奪うと宣言して、実際にギャング仲間が行動を実行した。
・ジェシー・サリナス(演:トニー・プラナ)
ピアス法律事務所の監督弁護士で実質的なナンバー2。ピアスと同じくビジネスを優先する。
トニー・プラナは代表作に『愛と青春の旅だち』、『奪還DAKKAN/アルカトラズ』がある。
若手の弁護士に顧客の対応を冗談で小バカにしていると、ローマンに侮辱されてしまう。
当然のようにローマンの言葉を黙って見過ごせず、ピアスに告げ口して注意してもらった。
最後は検察と勝手な取引を持ちかけたローマンを呼びつけ、ピアスの警告を一緒に聞いた。
・ジョージ・ピアス(演:コリン・ファレル)
大手法律事務所を経営する弁護士。ローマンが所属する事務所の整理を任されている。
コリン・ファレルは近年の出演作に『聖なる鹿殺し/キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』、『The Beguiled/ビガイルド欲望のめざめ』などがあります。
あくまで金が第一の考え方でローマンとは真逆であるが、彼の記憶力に一目を置いている。
なんとかローマンを事務所に迎え入れたが、部下に説教を垂れた彼のやり方に注意をする。
懸賞金を手に入れて信念が崩れたローマンが事務所の色に染まり、将来性を見越していた。
最後は自分の信念を思い出し倒れたローマンの遺志を引き継ぎ、彼の残した大仕事を始める。
感想
個人的な評価
本作は『第42回トロント国際映画祭』でプレミア公開されました。
ただ、日本では残念ながら劇場公開されず、DVDスルーとなりました。
監督は『ナイトクローラー』で知られるダン・ギルロイが務めています。
本作の主人公であるローマンはサヴァン症候群を患い、法律についてすべて記憶している。
サヴァン症候群らしく優れた記憶力を持つ一方で、対人関係は決して良くない。
とにかく、ローマンは個性が非常に強く、演じているデンゼル・ワシントンの上手さがより引き立っていました。
いつものデンゼル・ワシントンはスマートなイメージがあるけど、本作の為に体重を増やしてチリチリの髪型にしている。
デンゼル・ワシントンの持つイメージとはまるで別人だが、さすがにアカデミー候補になるだけの役にハマった演技だったと思います。
本作では「信念」を貫き通す素晴らしさを語る一方で、そこに付きまとう現実的な金銭面での問題も描かれる。
「信念」だけではやっていけないと知った主人公は、自分自身を裏切ってしまうが、この転落があっという間でした。
36年に渡って人権を訴え、政府を相手に訴訟する7年に渡る弁論趣意書を書き上げるが、たった3週間で転落してしまうのです。
あまりにも皮肉が効いた構成であったが、結果としてローマンの遺志を引き継ぐ事になる。
ローマン自身は決して矢面に立って弁論を振るうタイプではないが、強い信念を持っていた人物だからこそ、一度ブレたら落ちてしまうのです。
物語は派手さもなく淡々と展開していくが、そこで信念と現実的な問題でどっちを取るかという選択による結末を描いている。
結果的にローマンの望んでいた政府に対する正義が行われるが、それは彼自身ではなく、彼の遺志を引き継いだ人間が実行する点も現代に対するメッセージ性がありました。
やはり、あの『ナイトクローラー』を描いた監督だけに、本作は現代社会における様々な問題を提示する作品となっていました。