複製された男 RE-2396

作品紹介

公開年月  2014/03/14
ジャンル  サスペンス
原作  ジョゼ・サラマーゴ 『複製された男』
監督  ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本  ハビエル・グヨン
製作  ニブ・フィッチマン、M・A・ファウラ
製作国  カナダ、スペイン
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

大学の歴史講師アダムは、DVDで何気なく鑑賞した映画の中で自分とソックリの端役の俳優を発見する。
驚いたアダムは取り憑かれたようにその俳優アンソニーの居場所を突き止め、気づかれないように監視をしていた。
だが、二人は対面してしまい、見た目だけではなく、生年月日や傷がまったく同じだと知ると、それぞれの恋人と妻を巻き込む運命が彼らを待ち受けるのだった。

登場人物&出演者

アダム/アンソニー(演:ジェイク・ギレンホール)
主人公。アダムは歴史を教える大学教授で退屈な毎日を過ごす。気弱な性格で罪悪感を持つ。
一方のアンソニーは三流役者で妻が妊娠六ヶ月である。強気な性格で浮気をしている。
ジェイク・ギレンホールは近年の出演作に『エベレスト3D』、『サウスポー』があります。
本作は難解な内容であるが、ジェイク・ギレンホールの演技力が冴え渡っています。
顔はソックリだが、性格はまるで正反対の二人のキャラクターを見事に演じきっています。
同じ顔であっても姿勢や雰囲気が違うので、すぐに判別できるのは上手い証拠です。
そして、最後に魅せる混ざり合った態度は本作の結末を象徴しています。

メアリー(演:メラニー・ロラン)
アダムの恋人。アダムとは恋人関係であるが、毎日が淡々として刺激が少ない。
メラニー・ロランは代表作に『イングロリアス・バスターズ』、『オーケストラ!』などがあります。
アンソニーがアダムになりすましてデートするが、ベッドの中でようやく別人だと気づく。
メアリー自体の存在がフワフワしていて、ある意味、本作を物語っている人物だと言えます。

ヘレン(演:サラ・ガドン)
アンソニーの妻。妊娠六ヶ月。浮気をしているアンソニーに対して不満を持っている。
サラ・ガドンは代表作に『アメイジング・スパイダーマン2』、『ドラキュラZERO』などがあります。
当初からアンソニーに対し不満を持っており、彼が浮気をしている事に敏感になっている。
そこへアンソニーになりすましたアダムを見て、薄々気づきながらも体を許した。
アダムとアンソニーにとって最も影響力のある人物で、彼女の視点は物語の中で重要。

キャロライン(演:イザベラ・ロッセリーニ)
アダムの母親。自分と瓜二つの男がいる事を相談される。
イザベラ・ロッセリーニは代表作に『ブルーベルベット』、『永遠に美しく』があります。
母親らしくアダムが瓜二つの男の話しを真剣に聞かず、真面目に生きる事を言い聞かす。

感想

個人的な評価

ポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの同名小説を実写映画化した作品。
監督はジニー賞の監督賞を三度受賞したドゥニ・ヴィルヌーヴが務めています。
とにかく、本作はストレートな内容ではなく、様々な点が散りばめられた作品である。
つまり、そのまま捉える作品というよりも、その裏に隠された監督からのメッセージがかなり含まれています。
そもそも、主人公のアダムは自分と瓜二つの男を見つけたところから物語は動き出す。
偶然にしてはできすぎていて、映画を薦めた男は彼に似ている人物が登場しているのに一切触れていない。
これはそのまま受け止めるのではなく、何か裏に理由があっての導きだと考えられる。
大学で歴史を教える教授のアダムと、端役として映画に出演する役者のアンソニー。
この二人はまったく同じ顔と声、それだったら双子説が出てくるが、まさか同じ箇所に傷があるのはおかしい。
タイトルからすれば、アダム、もしくはアンソニーは何者かによって複製されている。
見た目はソックリであるが、二人の正確はまるで正反対のような位置づけである。
境遇だって大学教授と役者ではまったく違うので、別人なのに見た目だけはソックリである。
しかも、どちらも自分の人生を持っていて、アンソニーは身ごもった妻がいるぐらいだ。
そうなってくると、二人は同じ時間を生きていて、それぞれの人生を持っている。
では、なぜ同じ箇所に同じ傷があるのかという最大の疑問が湧いてくる。
更に本作では度々クモが登場したり、二人を結びつけた秘密クラブのカギ、共通するブルーベリーのキーワードなどがある。
様々な要素が散りばめられているけど、これはクライマックスになっても明かされない。
多くのサイトでも解説されているが、本作のアダムとアンソニーは同一人物である。
結論から言えば、本作の主人公は二重人格、解離性同一性障害だと言えるだろう。
アダムは気弱であるが、積極的に自分と瓜二つの男に会おうとする積極性を持っている。
一方のアンソニーは強気であり、最初は自分と瓜二つの男と会うのが消極的だった。
更にアダムの恋人であるメアリーとの関係は希薄だが、アンソニーとヘレンの関係は結婚という分かりやすいモノ。
それを考えれば、アダムは本来の人格である基本人格であり、アンソニーは多くの時間肉体を支配する主人格と言えるのでしょう。
本作はハッキリ言って、一度観ただけでは意味が分からないが、解説を一度知れば、二度目の鑑賞では「なるほど」と思える。
しかし、その仕掛けを知っていれば、本作はどれほど上手く演出をしているか分かってきます。
ただ、大きな欠点として「気になる人」だけしか楽しめず、大体の人は「意味不明」で片付けてしまうという点だろう。
本作にもう少しエンターテイメント性を加えれば、もっと多くの人から評価された作品になったのでしょう。