ブリッジ・オブ・スパイ RE-2224

作品情報

公開年月  2015/10/16
ジャンル  サスペンス/ドラマ/伝記
原作  U-2撃墜事件 (モチーフ)
監督  スティーヴン・スピルバーグ
脚本  コーエン兄弟
製作  スティーヴン・スピルバーグ、マーク・プラット、ほか
製作国  アメリカ
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

米ソ冷戦下の1957年のニューヨーク。自称・画家であったルドルフ・アベルという男がスパイ容疑で逮捕される。
国選弁護人として弁護を引き受けたのは、保険を専門に扱う弁護士ジェームズ・ドノヴァン。
ソ連のスパイを弁護した事でアメリカ国民の非難を一身に浴びるドノヴァンだったが、弁護士としての職責をまっとうし、死刑を回避する事に成功する。
5年後、アメリカの偵察機がソ連領空で撃墜され、アメリカ人パイロットのパワーズがスパイとして拘束されてしまう。
アメリカ政府はパワーズを救い出す為にアベルとの交換を計画、その大事な交渉役として白羽の矢を立てたのは、軍人でも政治家でもない一民間人のドノヴァンだった。
交渉場所はまさに壁が築かれようとしていた敵地の東ベルリンで、身の安全は誰にも保証してもらえない極秘任務に戸惑いつつ、腹をくくって危険あ交渉へと臨むドノヴァンであった。

登場人物&出演者

ジェームズ・ドノヴァン(演:トム・ハンクス)
主人公で弁護士。主に保険関係を扱い、数年前の裁判で検察官として優秀な手腕を見せる。
当初は仕事として引き受けるも、徐々にアベルとは友情のようなモノが芽生えていく。
トム・ハンクスはハリウッドを代表する俳優で、映画監督、脚本家、映画プロデューサーとしても活躍しています。
やはり、ヒューマンドラマはトム・ハンクスの真骨頂だと思わせる巧みな演技を魅せます。
何より人間味のあるキャラクターを演じ、どこか安心感を与える雰囲気があります。

ルドルフ・アベル(演:マーク・ライランス)
ソ連のスパイ。表向きは画家として暮らす。性格は決して慌てずマイペースな人物。
祖国に忠誠を示し、一切口を割らずに感情を見せないが、ジムとの対話で友情が芽生える。
マーク・ライランスはイングランド出身で、本作でアカデミー助演男優賞を受賞する。
とにかく、前半で特にインパクトのある人物であり、トム・ハンクスすらかすむほどでした。
彼が問われて答える時のセリフ「~は役に立つか?」というのはアベルを見事に表現する。

メアリー・ドノヴァン(演:エイミー・ライアン)
ドノヴァンの妻。夫がソ連のスパイを弁護する事に反対するも、最後まで信じている。
エイミー・ライアンは2007年公開の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』でアカデミー助演女優賞にノミネートされています。
自分なりの正義を貫いた夫の強い信念に最後驚くというシーンだけが印象に残った。

フランシス・ゲイリー・パワーズ(演:オースティン・ストウェル)
アメリカ人。ソ連を偵察するU-2のパイロットとして選ばれるも撃墜され拘束される。
オースティン・ストウェルは『イルカと少年』、『セッション』で知られています。
同じスパイ容疑で拘束されるアベルとは対照的な扱いとして本作で少しだけ登場する。

ヴォーゲル(演:セバスチャン・コッホ)
ドイツ人弁護士。ドノヴァンが解放を求める拘束される留学生プライヤーの交渉を仲介する。
セバスチャン・コッホは西ドイツ出身で、2006年公開の『善き人のためのソナタ』でアカデミー外国語映画賞を受賞しています。
話しが違うという事で東ドイツにある留置所へ送ったシーンだけが見せ場だった。

ホフマン(演:スコット・シェパード)
CIAエージェント。アベルの件、更にソ連との捕虜交換の交渉で付き添う。
スコット・シェパードは10作ほどに出演し、主にテレビドラマシリーズで活躍しています。
本作における数少ない笑いの部分を提供した貴重な存在であった。

感想

個人的な評価
スティーヴン・スピルバーグが監督、コーエン兄弟が脚本となれば期待する。
ただ、スティーヴン・スピルバーグ監督は超大作以外はあまり期待できない事が多い。
エンターテイメント性よりもリアリティを重視するので、時には退屈な作品があります。
本作はハッキリ言って、ラスト20分までは退屈な印象を持ってしまった。
確かに主人公のジム・ドノヴァンはリスクを承知で動き回っているが、どうにも演じているのがトム・ハンクスという事で、どこか安心感を持ってしまった。
トム・ハンクスはヒューマンドラマは非常に上手く、観ている側としては自然と引き込まれるだけの演技力を持っています。
個性的ではないが、不思議な魅力に作品へ引き込むけど、それ以上に安心感を与えてしまう。
本作は冷戦時代が舞台であり、ここには多大な緊張感と緊迫感が潜んでいると思います。
だけど、トム・ハンクスだと何が起きても無事に帰ってくるというイメージがある。
その為に本作での緊張感ある場面でも、なんとかなるはずだと思ってしまい、どうしても作品全体の緊張感がなかった。
それに動きがあまり派手じゃなく、会話にしてもほとんどが事務的なモノばかりで娯楽性が非常に乏しいところがありました。
コーエン兄弟については個人的に好みが会わず、唯一『ノーカントリー』だけは良かった。
その他は微妙な印象しかなく、彼らの代表作である『ビッグ・リボウスキ』も言うほど面白いというワケでもなかった。
本作でもラストの20分までは淡々と進んでいったが、その後が非常に上手い展開をしていると思います。
コツコツと積み上げたモノが最後の方で成立した瞬間に思わぬカタルシスを生んでいる。
ここの部分で一気に引き込まれ、ジムとアベルの友情を見せる場面が一番良かった。
トム・ハンクスも良かったが、それ以上に存在感を示したのはマーク・ライランスだろう。
彼の淡々とした態度や何度もセリフに出る「~役に立つ?」というのが、実にアベルという人物を明確に表現していました。
前作の『リンカーン』でも感じたが、スピルバーグは主人公をキレイに見せるようとする演出がずっと気になっていた。
どうしても個人的にスピルバーグには娯楽性を求めているところがあるので、本作のような地味な展開には納得できていない部分があるのかもしれない。
あまりにもキレイすぎる主人公にリアリティがなく、これが物語への緊張感を削いでいると感じてしまった。
ただ、ラストの20分だけは素直に引き込まれたのは言うまでもありません。