アメリカン・サイコ VD-160

作品紹介

公開年月  2000/04/14
ジャンル  サスペンス
原作  ブレット・イーストン・エリス 『アメリカン・サイコ』
監督  メアリー・ハロン
脚本  メアリー・ハロン、グィネヴィア・ターナー
製作  エドワード・R・プレスマン、クリス・ハンリー、ほか
製作国  アメリカ
鑑賞方法  動画配信サービス

あらすじ

80年代のニューヨーク、27歳のハンサムなパトリック・ベイトマンは一流企業の副社長。
高級マンションに住み、美しい婚約者もいるパトリックは一見誰もが羨む生活を送っていた。
しかし、彼の心の中には深い闇が広がり、突然襲う衝動に駆られ、夜の街をさまよいホームレスや娼婦を殺害していくのだった。

登場人物&出演者

パトリック・ベイトマン(演:クリスチャン・ベール)
主人公。ウォール街で成功した若きエリートビジネスマン。一方で心に深い闇を宿している。
クリスチャン・ベールは近年の出演作に『THE PROMISE/君への誓い』、『マネー・ショート/華麗なる大逆転』などがあります。
表面上では一流ブランドに身を包み、高級店での食事や体を鍛え、常に演じているような男。
心の闇を晴らす為にホームレスや娼婦を殺し、更にライバルであるポールすら殺す冷徹な男。
ポールを殺害するも、キンボールに疑われる事になり、なんとかしてごまかそうとする。
最後は罪を告白するも誰も信じず、結局は彼の世界は中身のない空虚なモノだと再認識した。

ジーン(演:クロエ・セヴィニー)
パトリックの秘書。ランチの予約や予定を的確にこなす。仕事中心で今まで生きている。
クロエ・セヴィニーは代表作に『ボーイズ・ドント・クライ』、『ゾディアック』がある。
パトリックに対して片想いをしているが、あまりにも遠い存在でずっと遠慮していた。
フラストレーションが溜まっていたパトリックが、殺そうと食事に誘われてしまう。
パトリックの家にいて彼と会話しているうちに情が湧いて、殺されずに見逃される事に。
最後はパトリックのおかしな電話を受けて、彼の手帳を見て本性を知ってショックを受けた。

イヴリン・ウィリアムズ(演:リース・ウィザースプーン)
パトリックの婚約者。パトリックが働いている会社の父親が社長。ブランド志向で口数多い。
リース・ウィザースプーンは代表作に『キューティ・ブロンド』シリーズ、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』などがあります。
パトリックの友人であるティモシーと浮気しているが、気づかれていないと思っている。
何事も一流ブランドにこだわっていて、パトリックよりも立場が上だと勘違いするバカ女。
最後は崩壊寸前だったパトリックに別れを告げられ、感情のままに泣いて終わった。

コートニー・ローリンソン(演:サマンサ・マシス)
パトリックの愛人。友人であるルイスの婚約者。クスリ漬けで時に朦朧している事がある。
サマンサ・マシスは近年の出演作に『再会の答え』、『ネスト』などがあります。
ウォール街で一番人気の店“ドーシア”に憧れ、パトリックに誘われるも違う店と気づかず。
最後も何度もパトリックと会ってセックスに耽るが、彼の素っ気ない態度に熱も冷める。

ティモシー・ブライス(演:ジャスティン・セロー)
パトリックの同僚。イヴリンと浮気していて、パトリックは知っているが気にしていない。
ジャスティン・セローは代表作に『I SHOT ANDY WARHOL』、『メガマインド』がある。
大口契約を成功させたポールに声をかけ、名刺をもらった事でバトルを勃発させる起因に。
最後はレーガン大統領の偽善的な演説に呆れて人格否定するも、結局は中身がなかった。

クレイグ・マクダーモット(演:ジョシュ・ルーカス)
パトリックの同僚。ポールの事をユダ公と罵っている。何かとユダヤ人を差別している。
ジョシュ・ルーカスは代表作に『ハルク』、『ポセイドン』などがあります。
女はルックスがすべてだと高らかに語り、それ以外がいい女はブスだと断言している。
最後はランチの予約が取れないティモシーにイライラし、代わりに電話しようとしていた。

デヴィッド・ヴァン・パッテン(演:ビル・セイジ)
パトリックの同僚。レストランのトイレでヤクをやろうとしていたが、できずに報告した。
ビル・セイジは代表作に『アンビリーバブル・トゥルース』、『肉』などがあります。
同僚の中で名刺バトルが勃発した時、自慢気に差し出したパトリックを真正面から否定した。
最後はなかなかランチの予約が取れない事が最大の問題だと真剣な顔で話していた。

ルイス・カルザース(演:マット・ロス)
パトリックの同僚。コートニーの婚約者。パトリックから「業界一のアホ」という評価。
マット・ロスは代表作に『12モンキーズ』、『フェイス/オフ』などがあります。
ビジネス的な知識はほとんどなく、常に誰かが身につけるブランド物を当てようとする。
パトリックが殺害したポールを処理しようとタクシーに乗せた時に偶然会うもあしらわれる。
名刺を新調してパトリックに見せると、殺されるところで実は同性愛者だと知って助かる。

ポール・アレン(演:ジャレッド・レト)
パトリックのライバル。パトリックが一目置く。流行の高級店ドーシアに通っている常連。
ジャレッド・レトは近年の出演作に『アウトサイダー』、『ブレードランナー2049』がある。
パトリックの事を別の人間だと思い込んで話しかけ、ずっと気づかずに食事へ誘う。
最後は平静を装っていたパトリックのガマンが切れ、別宅に招かれて斧で惨殺されてしまう。

ドナルド・キンボール(演:ウィレム・デフォー)
探偵。ポール・アレンが失踪した事件を調査している。参考人としてパトリックと会う。
ウィレム・デフォーは近年の出演作に『セブン・シスターズ』、『ジャスティス・リーグ』などがあります。
パトリックの証言と調べた事が食い違ってしまい、どこかで彼を疑っているような様子。
ヒューイ・ルイスの大ファンで喜々としてパトリックに見せるが、真顔で否定されてしまう。
最後はパトリックを疑っているようだが、決定的な証拠が見つからない状態で調査を続行。

感想

個人的な評価

本作は80年代後半のウォール街にいた“ヤッピー”と呼ばれる人たちを題材にした作品。
ヤッピーとはエリートビジネスマンの事で、ヒッピーを例にして軽蔑的に使われたスラング。
主人公であるパトリックは一流投資銀行の副社長であり、一流の大学を卒業し、一流のブランドを身につけ、一流の店に通っている。
更に極度のナルシストで、常に体を鍛えていて、毎日のスキンケアを欠かさずにやる男。
一般的な人間とはかけ離れた生活をしており、誰がどう見ても順調な人生を送っているように見えるが、実はその心は深い闇に染まっているという。
とにかく、他人から見たら充実した毎日に見えるが、本人はずっと空虚な気持ちを持ち、唯一の拠り所は誰よりも一番になりたいという欲望だけ。
だから自分よりも下だと思っていたヤツがカッコいい名刺を見せた瞬間、抑えられないぐらいの感情が爆発してしまうのです。
どう考えも常人には理解できない感情だが、これこそが本作の主人公であるパトリックの素顔だと言えるだろう。
その爆発しそうな感情を唯一抑える事ができるのは殺人であり、それ以外の方法はパトリック自身も思いつかないという危険な思想を持つ男なのです。
本作は冒頭からヤッピーたちの独特な会話が展開されるが、ハッキリ言って、何を言っているのか分からないし、どだいつまらないのです。
中身がまるでない子供のような内容だが、専門的な言葉が飛び交うので一見して知的に見えてしまう皮肉が込められている。
本作では主人公だけが異常者のような扱いになっているが、実は周囲の人間も他人に無関心という点でも皮肉が込められた風刺的な映画でもあります。
平然と名前を間違えても誰も正さず、間違えられた人間も正さず、結局はそのまま押し通してしまうというのが常識になっている世界。
その中で自分の価値を見出す名刺にはこだわりがあって、同じ会社でも使っている紙の質や色、書体などで優劣を決めている。
本来なら仕事での力量で競うべき部分だが、中身のないヤッピーたちは表面的なところだけで優劣を決める皮肉が描写されています。
本作からは「皮肉」という言葉を現す表現が非常に多く、如何にして当時のヤッピーたちが嫌われていたのか分かります。
とにかく、ラストでシーンは本作を物語るように、殺されたはずのポール・アレンは弁護士と会っていて生きていると言われるほど他人に無関心な世界。
それを知った主人公は罪を犯しながらも罰せられず、自分が何をしているのか分からなくなるが、それこそが彼にとって最大の罰だと言える。
確かにこのような世界はないかもしれないが、もしかするとウォール街では本作のようなやり取りがあるのかもしれない。
他人と同じ時間を共有して会話しているが、誰も記憶に留めておかず、適当に合わせている世の中はどれだけ恐ろしいか表現した作品でした。