作品紹介
公開年月 | 2009/10/03 |
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ジャンル | ドラマ |
原作 | なし |
監督 | 佐藤伸寿 |
脚本 | 佐藤伸寿 |
製作 | グルミラ・アプリモバ |
製作国 | 日本、ロシア、カザフスタン |
鑑賞方法 | レンタルDVD |
あらすじ
アユブの両親は不当に逮捕され中国から逃げてきたウイグルの少年。
経済的に豊かなカザフスタンにやって来たアユブだったが、貧富の差が大きく、彼が世に出て行くのは簡単ではなかった。
裕福な家に育ったカザフ人の少年カエサルは憂鬱と退屈な毎日に支配され、家と決別した彼はアユブやマーシャたちがいる建設途中の廃屋で出会う。
ロシア人のマーシャは養父の性的虐待を受けて家を飛び出すも、どうする事もできず娼婦に身を落としてしまう。
発展と貧困の間にあるカザフスタンで生きる三人の少年少女の物語が交差していく。
登場人物&出演者
・アユブ(演:ラスール・ウルミャロフ)
ウイグルからやって来た少年。イスラム教徒。建設現場で働いて日銭を稼いでいる。
ラスール・ウルミャロフは本作が映画デビュー作となっています。
イスラム教徒として両親の無念を晴らそうと、最悪の自爆テロを選択してしまう。
基本的に無口で体が小さくいじめらる対象だが、カエサルのおかげで難を逃れている。
・カエサル(演:カエサル・ドイセハノフ)
裕福な英に育つ少年。車上荒らしをしたり、ホモのオッサンと付き合って日銭を稼ぐ。
カエサル・ドイセハノフは8作に出演し、テレビドラマや映画で活躍しています。
暴力ですべてを解決していくタイプで、街中のチンピラを締め上げていた。
しかし、やり過ぎたせいで油断しているところを刺されてしまう。
・マーシャ(演:アナスタシア・ビルツォーバ)
ロシアからやって来た少女。娼婦。ドストエフスキー小説集をいつも読んでいる。
アナスタシア・ビルツォーバは本作が映画デビュー作となっています。
娼婦として病気をもらってしまい、病院に行かず笑顔を浮かべるも日に日に弱っていく。
いつか海に行って泳ぎたいという夢を持っているが、病気によって命を落とす。
・ブラート(演:ダルジャン・オミルバエフ)
アユブたちが暮らす廃屋の管理をしている。集金して警察の巡回を止めている。
ダルジャン・オミルバエフは本業が映画監督で、3作目の『キラー』はカンヌ国際映画祭ある視点部門でグランプリを受賞しています。
身寄りのない少年少女たちから容赦なく金を回収し、挙げ句はアユブに自爆テロをさせるクソみたいな人間。
感想
個人的な評価
中央アジアのカザフスタンが舞台の非常に珍しい作品。
監督、脚本、編集は現役の自衛官である佐藤伸寿が務めています。
モントリオール世界映画祭にて公式招待作品として迎えられています。
65分という非常に短い作品であるが、この中には中央アジアの抱える問題が詰まっている。
カザフスタンには様々な人種や民族がいて、その中で展開する発展と貧困の現実を捉えたリアリティのある作品だと言えます。
主人公はウイグル出身のアユブ、カザフスタン出身のカエサル、ロシア出身のマーシャの三人が物語を展開させています。
アユブはイスラム教徒として、両親の無念を晴らす為に最悪の自爆テロをしようとするが、周囲の景色を見て思い留まる事になる。
カエサルは暴力を振りかざしていたが、その報復を受けて刺されてしまう。
マーシャは病気で吐血し、病院に行かないので治る見込みはあまりないけど、それでも彼女は海で泳ぐ夢を持っている。
とにかく、本作は自分の力ではどうにも這い上がれない少年少女たちの悲しい物語。
両親が逮捕され名誉を失い、つまらない日々から荒れた生活し、体を売ってボロボロになるという底辺の生き方。
そんな傷ついた三人が一緒に暮らす事でお互いに心のより所にしている点も悲しい。
唯一、彼らに接触する廃屋の管理人は金を取って、挙げ句は自爆テロを勧める。
大人の助けがまったくない絶望的な状況でも、彼らは強く生きていく姿が印象に残ります。
まったく知らないカザフスタン、あるいは中央アジアという場所がどのような状況にあるのか、本作から明確に伝わってきます。
やはり、日本は非常に恵まれた国であり、なんでも自由にできるのは素晴らしいと改めて思わせる作品でした。