安市城/グレート・バトル RE-3154

作品紹介

公開年月  2019/07/05
ジャンル  歴史劇/アクション
原作  『唐の高句麗出兵』(モチーフ)
監督  キム・グァンシク
脚本  キム・グァンシク、キム・ユジン、ほか
製作  キム・ウテク、チャン・ギョンイク、ほか
製作国  韓国
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

西暦645年、唐の皇帝・太宗は朝鮮半島全土を支配に置くべく、自ら20万人を超える大群を率いていた。
朝鮮本土の都へ進撃を続ける太宗に高句麗軍の城主が次々と降伏、敗走する中、安城市の城主ヤン・マンチュンは国を守ると誓う。
ヤン・マンチュンはたった5000人の兵士を率いて、太宗が率いる大軍を相手に無謀とも言える孤立無援の戦いを挑むのだった。

登場人物&出演者

ヤン・マンチュン(演:チョ・インソン)
安市城の城主。城の民から慕われる。長年に渡って幾多の戦場を駆け抜けた国の英雄という。
チョ・インソンは代表作に『トイレ、どこですか?』、『ザ・キング』などがあります。
城主でありながら民と寄り添う生活をするが、将軍が裏切り者と言いふらす事に腹を立てる。
サムルが刺客だと分かりながらも彼を試し、太宗の率いる唐の大軍を何度も退かせていく。
シミの裏切りで妹やパソたちを失い弱きになるが、チュスジの叱咤によって再び立ち上がる。
最後はウーテたちの活躍で土の山を占領し、サムルの援軍により安市城を守り抜いた。

サムル(演:ナム・ジュヒョク)
安市城出身。太学生徒の代表。将軍から絶大な信頼を得て戦場に出るも仲間をほとんど失う。
ナム・ジュヒョクは本作が長編映画デビュー作となります。
何もしなかったマンチュンに怒りを覚え、将軍の命令で安市城に乗り込み暗殺を命令される。
安市城で大将旗を掲げる大役に抜擢されると、マンチュンを見て印象が変わって信頼する。
圧倒的な戦力差で勝利が見えず、勝手に城を抜け出して平壌城にいる将軍に援軍を懇願した。
最後は必死の訴えに将軍の心を突き動かし、ちょうどいいタイミングで安市城を助けた。

チュスジ(演:ペ・ソンウ)
安市城の兵士。マンチュンの側近で手練れの兵士。マンチュンに絶対的な忠誠を誓っている。
ペ・ソンウは代表作に『マルティニークからの祈り』、『スウィンダラーズ』があります。
偵察していた時にサムルたちと遭遇し、太宗の刺客が紛れ込んでいるのを知って一瞬で倒す。
サムルが将軍からの刺客だとマンチュンに進言するが、城の民だと言われて何もできず。
シミの裏切りでパソやペクハを失ったマンチュンが弱きになると、強い口調で彼を叱咤する。
最後はマンチュンを守る決死隊となるが、なぜか無傷で勝利して城主を支える事になる。

パソ(演:オム・テグ)
安市城の騎馬隊長。マンチュンの妹であるペクハと婚約する。マンチュンから警戒される。
オム・テグは代表作に『コインロッカーの女』、『タクシー運転手/約束は海を越えて』などがあります。
ペクハと夜を共にした事に怒り、本気で殺そうとするも妹の言葉と太宗の侵略で中断される。
唐の大軍が安市城を攻略している間、騎馬隊と外で待機してマンチュンの命令で挟撃する。
圧倒的な唐を倒すべく太宗の暗殺を仕掛けるが、すでに作戦が漏れて迎撃されてしまう。
最後はシミの裏切りで唐の罠にハマり、マンチュンに裏切り者の存在を知らせて絶命した。

ペクハ(演:キム・ソリョン)
安市城の女性弩部隊の隊長。マンチュンの妹。パソとは恋仲で婚約を誓っているという。
キム・ソリョンは代表作に『江南ブルース』、『殺人者の記憶法』などがあります。
夜遅く偵察から帰ってきたパソの家に泊まると、マンチュンに怒れるも一切引かなかった。
唐の大軍が安市城を攻略している間、マンチュンの命令でパソの騎馬隊と挟撃を成功させる。
シミの裏切りでパソが罠で死亡すると、絶望して単独で太宗の殺害をするも返り討ちに遭う。
最後は勇敢さを太宗から褒められ、遺体を安市城に運ばれてマンチュンたちに埋葬された。

プン(演:パク・ビョンウン)
安市城の剣使い。剣術と軽業を得意としている。常に余裕を持った言動で立ち回っている。
パク・ビョンウンは代表作に『暗殺』、『ワンライン/5人の詐欺師たち』などがあります。
いつもファルボと小競り合いを起こしてしまい、その度にマンチュンが仲裁をしている。
唐の大軍が城壁の上まで攻められると、華麗なる剣術を使って次々と敵兵たち倒していく。
ファルボに命を助けられてしまい、不器用ながらも彼に感謝する意思として果物をあげた。
最後はファルボとお互いに死亡フラグを立てながらも、ほぼ無傷で安市城を守りきった。

ファルボ(演:オ・デファン)
安市城の斧使い。腕っ節の強さと頭の頑丈さが自慢。プンの安い挑発にいつも乗っている。
オ・デファンは代表作に『ベテラン』、『黄泉がえる復讐』などがあります。
プンにキレて暴れ回るが、そのうちに理由を忘れてしまい、マンチュンに注意される。
唐の大軍が押し寄せてくると、兵士としての雰囲気を出すも投石機の弾にビビってしまう。
城壁の上で乱戦なると、背後から襲われるプンを見て斧を投げてさり気なく彼を助けた。
最後はプンと分かりやすい死亡フラグを立てるが、無傷で安市城を守って城主を支える事に。

ウーデ(演:ソン・ドンイル)
安市城の穴掘りの頭領。認知症の母親が城の外に出て徘徊するもマンチュンが連れ帰る。
ソン・ドンイルは代表作に『カンナさん大成功です!』、『優しい嘘』などがあります。
太宗が奥手として土の山を築くと、マンチュンに性質を聞かれて分かりやすく説明をした。
穴掘りの仲間たちと土の山を下から崩壊させるべく、日夜問わず穴を掘り続けていた。
雨が降ったせいで洞窟が水浸しになってしまい、柱が湿って火で燃やせない状況を伝えた。
最後は仲間と柱を斧で切り落とすと譲らず、崩落する土の山に埋もれながらも成功に喜んだ。

ヨン・ゲソムン将軍(演:ユ・オソン)
高句麗の将軍。高句麗へ侵略を企む太宗を迎撃するべく15万の兵士を率いるも大敗を喫する。
ユ・オソンは代表作に『アタック・ザ・ガス・ステーション!』、『友へ/チング』シリーズなどがあります。
王を殺した事でマンチュンと反目しており、唐を迎撃する戦に参加しなかった彼を敵視する。
安市城出身で最も信頼するサムルにマンチュンの暗殺を命令し、平壌城で迎撃態勢を整える。
命懸けで安市城を抜けて平壌城に来たサムルを見て、反逆者を助ける道理はないと話した。
最後はサムルの必死な訴えを聞いて、分かりやすく援軍を出して唐の大軍を退かせた。

シミ(演:チョン・ウンチェ)
高句麗の巫女。神から与えられた予知能力を持つという。以前はマンチュンの婚約者だった。
チョン・ウンチェは代表作に『超能力者』、『ヘウォンの恋愛日記』などがあります。
将軍の大敗をすでに予知していたが、実際に戦闘が起きて敗色が濃厚となって初めて明かす。
太宗が安市城を攻略する間、同じ席から観戦するも負けを予知しなかった事で動じず。
二度も退けられると、太宗が奥手を使うと知り負けを予知し、マンチュンに降伏を進言する。
最後はパソを犠牲にして降伏を強く主張するが、みんなが戸惑う中でサムルに処刑された。

太宗(演:パク・ソンウン)
唐の皇帝。別名を“戦の神”と呼ばれている。高句麗を侵略するべく20万の兵士を統率する。
パク・ソンウンは代表作に『チャーミング・ガール』、『僕の中のあいつ』などがあります。
高句麗を支配するべくヨン・ゲソムン将軍の15万の兵士を打ち破って余裕で国境線を越える。
マンチュンによる籠城戦で一度は退却するが、夜襲を仕掛けるがまたも退けられてしまう。
安市城を落とす為に土の山を築かせるも、マンチュンたちに奪われて力業に切り替えた。
最後はマンチュンの矢を左目に食らい、援軍の登場で負けを認めて唐の大軍を退却させた。

感想

個人的な評価

本作は実際に高句麗へ出兵した唐の太宗による朝鮮本土侵攻をモチーフにしています。
あの『新感染/ファイナル・エクスプレス』を手がけた製作陣による歴史劇となります。
近年の韓国映画は得意の人間ドラマやロマンスに留まらず、アクションやホラーの面でも大きく進歩しています。
その中で本作は歴史劇であり、大規模な戦争映画であるので、当然のように多くの製作費やエキストラを必要とします。
本作では韓国国内だけじゃなく、明らかに海外を意識した派手なアクションは引けを取らないほどの迫力を出しています。
アジア映画というと真っ先に香港や中国が連想されるが、実は韓国映画も負けず劣らずのクォリティを発揮している。
その点で邦画は完全に出遅れてしまい、大人の事情が先行しているせいで置いて行かれているのは非常に残念です。
実在したヤン・マンチュンという人物は民に近い存在であり、圧倒的な武力を持つ唐の大軍に真っ向から挑む姿はまさに英雄と言えるだろう。
しかも、味方であるはずの将軍から何度も刺客を送られ、若きサムルがそうであっても城の出身というだけで信頼する器の大きさを持っています。
もちろん、唐の圧倒的な大軍を前にしても一歩も引く事なく、次々と繰り出される太宗の策を打ち破る点でも頼りになる人物だと分かります。
史実でもヤン・マンチュンは何度も唐の大軍を退いていており、その偉大さと人柄の良さもしっかりと表現しています。
それに対する唐を統べる太宗は単なる悪役ではなく、大国の頂点に立っている人間としての大きさもちゃんと表現されています。
本作の中で最大の悪は普通なら主人公と関係を持っていた女性だが、まさか裏切るような行為した上に処刑される展開は他との違いを見せつけました。
主人公であるヤン・マンチュンは民を支える精神的な存在だが、決して万能じゃなく身内が死んで弱くなっていく姿を描いたのも良かった。
なぜか何度も死亡フラグを立てる脇役たちがなかなか死なず、逆に普通は死なないキャラクターが退場する意外性もありました。
きちんと戦争をリアルに描こうとして、男性だけに限らず、子供や女性たちも倒れていく描写があるのもこだわりが伝わってきました。
ただ、全体的にキャラクターの描き方が浅く、特に敵役となる唐の大軍も大味になってしまった非常に残念である。
史実ゆえにシリアスな展開であるが、そこにもう少し魅力的なキャラクターがいれば本作はもっと盛り上がっただけに惜しい。
それでも歴史劇の大作として申し分なく、韓国映画の底力をしっかりと感じさせる優れた作品だったと思います。