サバイバルファミリー VD-169

作品紹介

公開年月  2017/02/11
ジャンル  ドラマ/コメディ
原作  なし
監督  矢口史靖
脚本  矢口史靖
製作  石原隆、市川南、ほか
製作国  日本
鑑賞方法  動画配信サービス

あらすじ

東京に暮らす一般的な家庭の鈴木家はある朝突然、電気を必要とするすべてのモノが使えなくなっている事を知る。
一週間経過しても電気は戻らず、水道とガスまで使用できず、大黒柱の義之は母の実家へ帰る事を決意する。
通貨や紙幣が使えない中、自転車で鹿児島へ向かう道中、様々な人たちと出会いながら鈴木一家は目的地へ向かうのだった。

登場人物&出演者

鈴木義之(演:小日向文世)
鈴木家の大黒柱。平凡な会社員で典型的な仕事人間。普段外に出るとカツラを着用する。
小日向文世は近年の出演作に『祈りの幕が下りる時』、『鋼の錬金術師』などがあります。
停電になってから光恵の田舎である鹿児島に行く事を決意し、強引に家族を説得して行く。
自分に任せれば大丈夫と言い張るが、サバイバルには無知で家族の路頭に迷わせる。
鹿児島への旅で着実に父親としての存在感を出し、家族を守る為に頭を躊躇わず頭を下げる。
最後は鹿児島に溶け込み、電気が復旧すると家族を第一に通勤は自転車でする穏やかな人に。

・鈴木光恵(演:深津絵里)
鈴木家の母親。専業主婦。いつもマイペースで家庭に興味のない父親より家族を大事にする。
深津絵里は近年の出演作に『永い言い訳』、『岸辺の旅』などがあります。
鹿児島の田舎にいる父親から毎度新鮮な野菜や魚を送ってもらうが調理ができない。
鹿児島への旅では得意の値切りを発揮したり、苦手だった料理も魚がさばけるようになる。
途中で義之が行方不明となり、野犬に襲われて足を骨折するが、運良く蒸気機関車に出会う。
最後は鹿児島で父親と家庭菜園をして、電気が復旧すると元の家で以前よりも絆が強くなる。

鈴木賢司(演:泉澤祐希)
鈴木家の長男。大学二年生。今時の大学生としてスマホや音楽を聴いて女の子に片想いする。
泉澤祐希は代表作に『よるのくちぶえ』、『極道大戦争』などがあります。
家では無口で帰っても挨拶をせず、ファストフードを食べてすぐに部屋へ閉じこもる。
停電となって鹿児島へ行くと決まり、その前に片想いの女の子を探すも結局は恋人がいた。
鹿児島への旅で無口ながら役に立つが、父親から信頼されず時には勝手な行動をする。
最後は鹿児島にたどり着くと、逞しく成長して、電気が復旧すると家族を大切にする性格に。

鈴木結衣(演:葵わかな)
鈴木家の長女。高校一年生。今時の女子高生でスマホ依存で何かと文句をすぐに言う。
葵わかなは代表作に『陽だまりの彼女』、『暗殺教室』などがあります。
賢司と比べて父親と会話をするが、結局はスマホでの友人たちの会話を優先する。
学校では友達と一緒にいるけど、常にスイッチを入れないといけないという面倒な毎日。
鹿児島への旅で何度も文句を言うが、次第にサバイバル生活に慣れてきて逞しくなる。
最後は鹿児島にたどり着き逞しく成長し、電気が復旧すると文句を言わず家族を第一に。

斎藤敏夫(演:時任三郎)
斎藤家の大黒柱。停電になった状況を楽しみ、鹿児島を目指していた鈴木家と出会う。
時任三郎は代表作に『海猿』シリーズ、『ハッピーフライト』などがあります。
ギリギリの状況だった鈴木家にアドバイスを与えるなど、彼らにサバイバル術を教えた。

高橋亮三(演:宅麻伸)
義之の同僚で元同級生。義之よりも情報を的確につかみ取り、上層との連絡係となっている。
宅麻伸は代表作に『ふうせん2』、『新・日本の首領』シリーズなどがあります。
最後は停電で都内にいるのは良くないと悟り、いち早く家族とともに田舎の方に出向いた。

佐々木重臣(演:柄本明)
光恵の父。娘を心配して鹿児島の田舎から無農薬の野菜や新鮮な魚を送っている。
柄本明は近年の出演作に『今夜、ロマンス劇場で』、『悪と仮面のルール』などがあります。
義之たちがようやくたどり着くと、温かく出迎えて彼らに住むところや食べ物を与えた。
最後は停電から二年が経過し、ようやく電気が復旧すると鈴木家とともに明かりを見ていた。

田中善一(演:大地康雄)
岡山在住の養豚農家。大きな家で一人暮らししていて、息子たちはアメリカに住んでいる。
大地康雄は代表作に『バカヤロー! 私、怒ってます 第三話 運転する身になれ!』、『じんじん』シリーズなどがあります。
勝手に豚を捕まえた義之たちに怒るが、他の豚を捕まえてくれる条件で家に出迎えた。
豚のバラし方や燻製のやり方を教え、そのおかげで一人よりも労働力が増えて喜んでいた。
最後は鹿児島へ向かう鈴木家にたくさんの燻製や食べ物を分け与え、彼らを見送った。

感想

個人的な評価

本作は第1回マカオ国際映画祭にてコンペティション部門に出品された作品です。
監督と脚本を務めていた矢口史靖2002年から温めていた構想で、2003年に起きた北アメリカ大停電からヒントを得ているという。
近年の邦画は漫画や小説を原作にした作品が多く、本作のようなオリジナル作品として逆に珍しくなりました。
本作はかなり強いメッセージ性を内包した作品であり、電気がなくてはならない今の社会に問題を提示していると思います。
スマートフォン依存やパソコン依存が急増する現代において、それらが使えなくなったらどうなるのか提唱していた作品となります。
ストーリーとしてはありふれた内容で、特に新鮮味はないですが、主人公たちを平凡な家庭にしている意味合いが強いです。
それによって、主人公たちを自分に置き換える事ができ、彼らが必死に生きている中で己自身を投影する事ができます。
その場合、自分ならどのように切り抜けるが、どのように行動するのか、分かりやすい問題を提示して考えさせる構成となっています。
アメリカはこのような映画を多く作っているが、現代日本を舞台にした意味では、色々と興味深い出来事が展開されます。
まず、都内ですべてのライフラインが遮断されると、生きる事が難しくなるというのが非常に分かります。
それでも、海外と違って大規模な奪略がなく、平然と商品を道端に並べるのは日本らしい発想だと言えるだろう。
海外ならば、道端に並べる前に奪略行為が横行して、関係ないモノまで盗まれるだろう。
そこは礼儀を重んじる日本だからこそ、みんな並んで待ち、ちゃんとお金を払うところが海外と違う点だと思います。
しかしながら、現代人ほどサバイバルに弱いというのも提示され、川の水も飲めないほど日本人はキレイな水を飲んでいると分かります。
主人公で一家の大黒柱も典型的な仕事人間で家族に関心がなく、家族の主というプライドだけで実際には何もできない情けなさ。
専業主婦の強みである駆け引きとは裏腹に、生の魚などをさばけない現実も描かれている。
今時の若者もしっかりと描かれ、予定調和ながらも彼らが電気の生活に馴染んでいく姿も悪くないと思います。
結局、電気は復旧するのだが、これらの体験によって主人公たちの考え方が変わり、もっと家族らしい温かみを手に入れるという王道的なラストとなりました。
もう一度言いますが、本作は決して面白い映画ではないが、考えさせる意味では現代人が観ておくべき作品だと感じました。