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アメリカン・スナイパー RE-2403

アメリカン・スナイパー RE-2403

作品紹介

公開年月  2014/12/25
ジャンル  戦争/ドラマ
原作  クリス・カイル 『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』
監督  クリント・イーストウッド
脚本  ジェイソン・ホール
製作  クリント・イーストウッド、ロバート・ロレンツ、ほか
製作国  アメリカ
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

2001年のアメリカ同時多発テロをテレビで目の当たりにした青年クリス・カイル。
彼は祖国の人々を守る為に貢献したいと思い、ネイビー・シールズで狙撃手として過酷な訓練を積んでいった。
やがてイラクに出征したクリスは、その驚異的な狙撃の精度で見方の窮地を何度も救う。
仲間たちから“レジェンド”と賞賛され、一方で敵から“悪魔”と呼ばれ懸賞金をかけられるようになるのだった。

登場人物&出演者

クリス・カイル(演:ブラッドリー・クーパー)
主人公。テキサス出身で夢はカウボーイ。テロ事件を見て、祖国を守る兵士になろうとする。
ブラッドリー・クーパーは近年の出演作に『ジョイ』、『二ツ星の料理人』などがあります。
30歳という年齢ながらもネイビー・シールズの選抜訓練を突破して兵士になる。
イラク戦争では狙撃手として活躍するが、初任務で女と子供を射殺した心の傷を負う事に。
更に兵士が患うPTSDにも悩まされ、一時は普通に暮らす事もできない状態になる。
それでも家族の為に今度は良き夫、良き父親として立ち直っていく姿は印象的です。

タヤ・カイル(演:シエナ・ミラー)
ヒロイン。シールズは信用していない。クリスと酒場で出会い意気投合し結婚する事になる。
シエナ・ミラーは代表作に『G.I.ジョー』、『フォックスキャッチャー』などがあります。
兵士の妻というのはみんな夫の帰りを待っているが、その心情を良く表現しています。
いくら“伝説”と呼ばれる男でも、クリス・カイルはただの人間で無敵じゃない。
一番心配する妻をシエナ・ミラーは説得力ある演技で夫の帰りを待つ一人の女性を演じ切る。

マーク・リー(演:ルーク・グライムス)
チーム3のメンバー。神学校に通っていたがギャンブル癖で断念して兵士になった。
ルーク・グライムスは代表作に『処刑教室』、『マグニフィセント・セブン』があります。
戦争の悲惨さに心が疲弊してしまい、強い意志を持つクリスとは違って戦意喪失する。
絶対的に仲間を守ろうとするクリスとは違い、どこか虚ろな印象がありました。
それで仲間のビグルスが撃たれ、その報復に向かうも罠にハマって戦死してしまう。

ライアン・“ビグルス”・ジョブ(演:ジェイク・マクドーマン)
チーム3のメンバー。クリスを“伝説”としてまくし立てた張本人である。
ジェイク・マクドーマンは代表作に『チアーズ3』、『ダイ・ハード4.0』などがあります。
国にいる恋人にプロポーズするか悩んでいる事をクリスに打ち明けている。
指輪をどうするか話している最中にムスタファの狙撃に遭って失明してしまう。
クリスが4回目の出征の直後、手術が失敗してしまい、そのまま亡くなる。

“D”/ダンドリッジ(演:コリー・ハードリクト)
チーム3のメンバー。クリスが信頼する数少ないチームメイトの一人。
コリー・ハードリクトは代表作に『グラン・トリノ』、『ウォーズ・ボディーズ』などがあります。
4回目の出征時にビグルスが手術中に亡くなった事を伝える重要な役を果たす。

ドーバー(演:ケヴィン・ラーチ)
チーム3のメンバー。クリスが信頼する数少ないチームメイト。ビグルスの応急処置をする。
ケヴィン・レイスは本物のネイビー・シールズで、海軍技術顧問としても参加している。
4回目の出征では妻が妊娠していた事で見送り、戦場へは参加しなかった。

ムスタファ(演:サミー・シーク)
テロリスト側の狙撃手。シリア出身で同国の代表で元五輪で金メダルを獲得している。
サミー・シークは代表作に『ダルフール・ウォー/熱砂の虐殺』、『ローン・サバイバー』などがあります。
1000メートルから正確に射撃する腕を持ち、ビグルスを失明させた張本人。
懸賞金がかかったクリスを執拗に付け狙うが、最終的にクリスの狙撃で倒されてしまう。

感想

個人的な評価

実在したネイビー・シールズで狙撃手であるクリス・カイルの半生を描いた作品。
戦争映画では史上最高の興行収入を叩き出し、アカデミー賞では6部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞している。
監督はクリント・イーストウッドで、クリス・カイルという人物に興味を持った事で本作を引き受けています。
とにかく、本作はアメリカ本土で物議をかもし出しているが、高い評価を得ています。
戦争映画として最高の興行収入を得ているが、クリント・イーストウッド監督は政治的な思想はなく、戦地に赴いた一人の兵士にスポットライトを当てているという。
つまり、本作は戦争に対するメッセージではなく、戦場に行った兵士がどのような影響を与えるかという単純な構造となっている。
そこを履き違えてしまうと、本作に対する評価が変わってしまう作品だと思います。
率直な感想として、本作では周囲の人々がクリス・カイルを英雄視しているが、本人はそのような自覚が一切ない。
これは他人には分からない事であり、結果として祖国の英雄になったが、彼自身は本当にそう思っているのか。
本作はそこに焦点を当てていて、必ずしも周囲の評価と本人の評価が一致しているワケじゃないとすぐに分かります。
終始に渡ってクリスは“家族を守る為”や“祖国の為”と言っているが、なんだか自分自身を納得させているような印象を受けた。
そこまで自分に対して暗示をかけないとやってられない過酷な現実が戦場にあると感じた。
160人の敵を倒してきたが、決して自慢も誇りにせず、本人は単純に仲間を守った結果だとして受け止めている。
それに彼自身が“伝説”と呼ばれる事に気分が良くないのも、戦場で奪ってきた命の重さを背負っている事の表れと思います。
戦場では殺すか殺されるかという究極の二択が迫られるが、一つでも判断をミスしたら自分の命がなくなる。
常に緊張状態を強いられる中にいると、正常判断を奪われるのは当然であり、イラク派遣が帰ってくる度にクリスの心はなくなっている。
それを一番感じ取っているのは妻のタヤであり、クリスがそこにいても、心が戦場に置いている事をすぐに察知しています。
クリスは戦場で任務をこなしていき、家に帰ると抜け殻のような状態になってしまう。
これは多くの帰還兵が抱えている問題で、伝説と呼ばれたクリス・カイルでさえも追い込まれるような心理状態になっている。
いくら表面上で明るく振る舞っても、ちょっとした事で戦場の緊張感を思い出す場面が特にそう思わせる。
そして、そこにクリント・イーストウッド監督の演出が地味に光っているのです。
本作には一切の音楽がなく、戦場のような緊張感を漂わせている演出が非常に素晴らしい。
観ている側にも疑似体験させるような演出はクリント・イーストウッド監督らしいです。
もちろん、クリス・カイルを演じているブラッドリー・クーパーの演技も見事である。
で、本作はあくまでアメリカで製作され、アメリカ人が主人公で、アメリカ人が監督である。
そこをよく考えると分かると思うが、敵国となるイラクのドラマなど描くはずがない。
そんな事をしたら本末転倒であり、どっちつかずの中途半端な作品になってしまう。
敵国イラクに対する描写が足りないと思うならば、それは完全に作品の意図を履き違えていると思います。
本作はクリス・カイルを通して、アメリカ兵は戦地でどんな体験をしているのか、それを単純に描いているだけ。
イラクのドラマなんて入れてしまうと、もはや、別の作品になるから敢えて排除している。
深読みをする必要はなく、単純に本作から受けた衝撃をそのまま受け止めればいいだけ。
クリント・イーストウッド監督だから何かメッセージが込められていると思うだろうけど、本作に関してはドキュメンタリーに近いと思います。
だからメッセージ性よりも、事実を描いた作品として本作を観るべきだと感じました。

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