ダンガル/きっと、つよくなる RE-2872

作品紹介

公開年月  2016/12/21
ジャンル  スポーツ/ドラマ
原作  なし
監督  ニテーシュ・ティワーリー
脚本  ニテーシュ・ティワーリー、ピユス・グプタ、ほか
製作  アーミル・カーン、キラン・ラオ、ほか
製作国  インド
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

レスリングでインドの国内チャンピオンに上り詰めたマハヴィルは、母国に初の金メダルをもたらす夢を長女ギータと次女バビータに託す。
女の子がレスリングはあり得ないと町の笑い者にされるが、マハヴィルは過酷な特訓を止めず、限界を迎えた二人は止めたいと訴える。
しかし、ギータは才能が開花してインド代表となり、国立スポーツ・アカデミーに入団し、そこで父親の教え忘れるように言われるのだった。

登場人物&出演者

マハヴィル・シン・フォガト(演:アーミル・カーン)
主人公。元インドのレスリングチャンピオン。資金不足で国際大会に出られず引退をした。
アーミル・カーンは代表作に『ラガーン』、『きっと、うまくいく』などがあります。
息子に国際大会で金メダルを獲らせようと期待するが、結局は女の子ばかりが生まれる。
長女ギータと次女バビータの可能性を見極めると、有無を言わさずに厳しい猛特訓をする。
途中でギータとすれ違うが、その教えこそが娘たちの実力を引き出す最大の助言だと主張。
最後は見事にギータが決勝戦で勝ち、長年の夢だった国際大会で金メダルを手にした。

ダーヤ・カウルス(演:サークシー・タンワル)
マハヴィルの妻。インド人の妻らしく、試合で勝つ事よりも生活を重視した発言をする。
サークシー・タンワルは代表作に『C Kkompany』、『Shor Se Shuruaat』があります。
娘たちに女性である事を捨てさせるマハヴィルに仕方なく同意し、彼女たちを見守る。
途中で厳しすぎる父親の猛特訓に耐えられない姉妹に、少しだけハメを外す手伝いをした。
ギータが父親の教えを捨てて試合で負け続けると、マハヴィルに娘への助言を進言した。
最後はテレビで観戦した国際大会でギータが優勝すると、大粒の涙を流して喜んでいた。

ギータ・フォガト/幼少期(演:ザイラー・ワシーム)
マハヴィルの長女。当初は息子だと信じていたマハヴィルは女の子だと聞いてガッカリする。
ザイラー・ワシームは本作が長編映画デビュー作となります。
すでに夢を諦めていたマハヴィルだったが、近所の男の子をボコボコにして才能に気付く。
インドの平均的な女の子としての道を断たれ、望んでもいない猛特訓の日々を送る。
当初は父親の厳しすぎる猛特訓に泣き出し、何度でも辞めたいとしてサボっていた事もある。
最後は花嫁になった友人からマハヴィルの娘に対する愛情を知り、本気で取り組む事に。

バビータ・クマリ・フォガト/幼少期(演:スハーニー・バトナーガル)
マハヴィルの次女。二度目のチャンスを期待したマハヴィルが結果的に裏切られてしまう。
スハーニー・バトナーガルは本作が長編映画デビュー作となります。
常にギータと一緒に行動し、近所の男の子をボコボコにしてレスリングの才能に気付く。
当初は男の子をボコボコにした罰として猛特訓を課せられ、何度も辞めたいと泣いた。
ギータと一緒に父親へ反乱を起こし、女の子らしく遊んでいたが、見つかって台無しになる。
最後は花嫁になった友人の言葉で父親の愛情を知り、ギータとともに本気で取り組む事に。

オムカル/少年期(演:リットウィク・サホア)
ギータとバビータのイトコ。少しだけマハヴィルからレスリングを習い、自信を持っていた。
リットウィク・サホアは代表作に『フェラーリの運ぶ夢』などがあります。
強い相手が必要となったギータとバビータの為に、練習としてマハヴィルに駆り出される。
当初は二人を余裕で投げ飛ばしていたが、次第に彼女たちが力を付けて勝てなくなる。
最後は練習相手から料理当番になり、ギータとバビータの為に筋肉を作る料理を覚える事に。

ギータ・フォガト/青年期(演:ファーティマー・サナー)
父親の教えに従ってシニアの大会で敵なしの強さを誇る。そのおかげでインド代表となる。
ファーティマー・サナーは代表作に『Chachi 420』、『Akaash Vani』などがあります。
国立スポーツ・アカデミーで最新鋭の設備で訓練を受け、それまでなかった自由も楽しむ。
そのせいで厳しい生活を強いられた父親の教えを拒否するが、国際大会で連敗が続く。
父親の教えこそが正しいと理解して、素直に謝罪し、マハヴィルの助言で強さを取り戻す。
最後は決勝戦で苦戦を強いられるが、父親の強い言葉を思い出して見事に逆転優勝した。

バビータ・クマリ・フォガト/青年期(演:サニヤー・マルホートラ)
ギータと同じく父親の厳しい猛特訓に耐え、姉に続けて大会を次々と制覇していく。
サニヤー・マルホートラは本作が長編映画デビュー作となります。
先に国立スポーツ・アカデミーが帰ってくると、別人になっていて距離を置いてしまう。
ギータが父親の教えを否定して、実力で負かしてしまう事で更に心が離れる事に。
インド代表となって国立スポーツ・アカデミーに来ると、ギータと和解して応援する事に。
最後は国際大会で必死にギータを応援し、優勝すると誰よりも早く一緒に涙を流した。

オムカル/青年期(演:アパルシャクティ・クラーナー)
ギータとバビータのイトコ。成長してから練習相手にならず、未だに口先だけと言われる。
アパルシャクティ・クラーナーは代表作に『Saat Uchakkey』、『Stree』などがあります。
ギータが国立スポーツ・アカデミーから帰ってくると、以前と変わらず出迎えていた。
国際大会で連敗するギータを強くするべく、なぜかマハヴィルと一緒に町へ行く事になる。
マハヴィルの厳しい特訓に付き合い、施設への立入禁止を受けてもビデオで一緒に分析した。
最後は国際大会でギータを応援し、彼女が優勝すると自分の事のように喜んでいた。

プラモド(演:ギリシュ・クルカーニ)
国立スポーツ・アカデミーのコーチ。国際大会で銅メダルを必ず獲ると宣言していた。
ギリシュ・クルカーニは代表作に『Valu』、『Kaabil』などがあります。
アカデミーにやって来た新人に対して、今まで習った事をすべて忘れろと強く念を押した。
指導はあくまで防御主体だったせいでギータと相性が悪く、国際大会で勝てなくなる。
自分の指導を邪魔するマハヴィルを目の敵にして、何かと遠ざけようと策略を立てている。
最後は決勝戦でマハヴィルを別室に閉じ込めるが、ギータの優勝で存在価値がなくなった。

感想

個人的な評価

本作は元アマチュアレスリング選手マハヴィル・シン・フォーガットと、娘である姉妹の半生を描いた伝記映画となっています。
『第62回フィルムフェア賞』では作品賞、監督賞、主演男優賞、アクション賞を受賞するなど、様々な映画賞で受賞とノミネートされています。
主演を果たしたアーミル・カーンにとっても最大の興行収入を得た作品と同時に、インド映画史上最高の興行収入を記録しています。
今回は実際にあったインド代表の女子レスリングを物語にしていますが、さすがのアーミル・カーンの上手さが冴え渡っています。
当初から息子を欲しがっていた主人公だが、四度もチャンスがあって、なぜか全員女の子という裏切られた現実が待っています。
一度は諦めた夢を二人の娘を見て、またも追う事になるのはどう見ても独りよがりのワガママにしか見えません。
ただ、自分の夢を叶えたいからって、娘たちの同意もなしで猛特訓をさせていくのです。
普通なら単なるバカ親に思うが、そこはインド社会における背景が強く反映させています。
日本では虐待に近いような事をしているけど、インドでは娘たちに新たな選択肢を与えている父親の想いが同時に詰まっている。
インド社会において女性は家庭を守るだけの存在で、それ以上の事はまったく求められていないのです。
ここが日本と大きな違いであり、彼女たちには選ぶ権利がなく、インド社会では女性の地位はかなり低いという。
だからこそ、娘たちに国際大会で金メダルを獲らせ、インドにいる女性たちの地位を向上させる意味でも父親は必死になっていたと思います。
これは真実なのか分かりませんが、父親の夢を叶えるという事は、インド社会における女性の立場も変わってくるのです。
決して父親は独りよがりの夢を託したのではなく、娘たちに選択肢を与えるとともに、彼女たちをバカにした男たちを見返す力を与えています。
本作はインド社会の問題を背景にしているからこそ意味があって、他国ではまったく違う状況になるのでしょう。
やはり、アーミル・カーンは作品を選ぶ目利きも上手いし、役作りも完璧であり、それでちゃんとインド社会の問題を取り上げている。
本作がインド映画史上最高の興行収入を塗り替えても不思議ではないし、今後ともインド社会の問題もまた世界へ発信する事ができるのです。
とにかく、本作はアーミル・カーンの偉大さが分かる作品であり、彼が他国の人間に伝えたいメッセージもしっかりと伝わる映画でした。