コンカッション RE-2614

作品紹介

公開年月  2015/12/25
ジャンル  ドラマ/スポーツ
原作  ジーン・マリー・ラスカス 『コンカッション』
監督  ピーター・ランデズマン
脚本  ピーター・ランデズマン
製作  リドリー・スコット、ジャンニーナ・スコット、ほか
製作国  アメリカ
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

ナイジェリア移民の医師、ベネット・オマルは法医学の免許を持ち、検死官として働く彼は“ピッツバーグ・スティーラーズ”の花形選手だったマイク・ウェブスターの解剖を担当する。
その死に不審を抱いたベネットは脳の詳しい検査を実行し、ついにそれまで知られていなかった新たな疾患「CTE(慢性外傷性脳症)」を発見する。
激しいタックルのダメージによる蓄積で引き起こされる脳障害で、ベネットは危険性を知らせる為に論文を発表するが、NFLは即座に否定。
様々な形でベネットに圧力をかけるNFLに対して、彼は己の信念を曲げずに巨大な組織に立ち向かうのであった。

登場人物&出演者

ベネット・オマル(演:ウィル・スミス)
主人公。病理学者。ナイジェリア出身。公的機関で働いて誰よりも遺体に敬意を表している。
ウィル・スミスは近年の出演作に『ブライト』、『素晴らしきかな、人生』などがあります。
独特なペースで遺体と向かっているが、同僚のダニーからはそのやり方を嫌われている。
有名なアメフト選手だったマイクの検死を担当するが、ダニーから激しく罵倒されてしまう。
マイクを追いつめた原因がアメフトだと結論をつけるも、NFLという壁がたちはだかる。
最後は元選手の自殺がきっかけでNFLが脳の病気を認め、ようやく正しいと証明された。

ジュリアン・バイレス(演:アレック・ボールドウィン)
医師。NFLの元顧問医師。マイクが所属していたチームの専属医師として診察していた。
アレック・ボールドウィンは近年の出演作に『アンドロン』、『ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション』などがあります。
以前からマイクの症状を知っていたが、悲惨な暮らしをする彼の状態を知って愕然とする。
オマルが戦いを挑むNFLと知って、自身も関わっていた罪から惜しみない協力をした。
NFLがあらゆる手でオマルを黙殺しようとする事から、彼に対して警告をしていた。
最後は自殺した元選手の訴えをきっかけにオマルの正しさが証明されて救われる事になる。

シリル・ウチェット(演:アルバート・ブルックス)
オマルの公的機関で上司を勤めている。天才でありながら独特なオマルに一目を置く。
アルバート・ブルックスは代表作に『タクシードライバー』、『ファインディング・ニモ』などがあります。
ダニーから不満を訴えられるが、マイクを追いつめた原因を知る為にオマルに協力する。
巨大な敵となったNFLに戦いを挑むオマルをサポートする力強い味方として助ける。
NFLにたてついた事でFBIから84件の罪で起訴され、仕事もクビになってしまう。
最後は自殺した元選手の訴えにより起訴はすべて取り下げられ、名誉を回復した。

プレマ・ムティソ(演:ググ・バサ=ロー)
ナイロビの大学病院で正看護師をしていた。アメリカに渡ってオマルの家で暮らす事に。
ググ・バサ=ローは代表作に『幸せの教室』、『美女と野獣/2017年版』などがあります。
忙しい毎日を送って余裕のなかったオマルに落ち着く環境を提供して心の支えとなる。
それまで一人で過ごしていたオマルの良きパートナーとして彼を影から支える事になる。
実はアメリカに来て男に襲われて心が折れそうになるがオマルとの出会いで立ち直る。
NFLの巨大な敵に心が挫けそうになるオマルを奮い立たせる重要な役を担った。

ダニー(演:マイク・オマリー)
オマルと同じ公的機関で検死官として働いている。オマルのやり方にうんざりしている。
マイク・オマリーは代表作に『狂っちゃいないぜ!』、『ハドソン川の奇跡』があります。
有名なマイク・ウェブスターの検死を許さず、それを敢行したオマルに強い憤りを見せる。
マイクと同じチームの選手が死亡して検死にするオマルに嫌味で自費でやるよう命じる。

デコスキー(演:エディ・マーサン)
オマルが卒業した神経内科の部長で科学者。マイクを追いつめた病気をオマルから聞く。
エディ・マーサンは代表作に『ギャング・オブ・ニューヨーク』、『シャーロック・ホームズ』シリーズなどがあります。
NFLを全否定するオマルの研究結果が気に食わないが、科学者として否定はしない。
最終的にオマルの研究に賛同し、共著で医学界に新たな病気を発表する事になる。

ジョセフ・マルーン(演:アーリス・ハワード)
脳外科学会の元会長。NFLの選手たちを診察してきたが脳との病気の関連を否定した。
アーリス・ハワードは代表作に『フルメタル・ジャケット』、『マネーボール』があります。
オマルから事実を話されても認めず、アメフトは単なるスポーツではないと主張した。
しかし、脳外科医としてオマルの主張は間違っていない発表して、NFLを揺るがせた。

マイク・ウェブスター(演:デヴィッド・モース)
元アメフト選手。チームでは中心的な人物で“鋼の男”と呼ばれ、殿堂入りしたスター選手。
デヴィッド・モースは近年の出演作に『ワールド・ウォーZ』、『ティモシーの小さな奇跡』などがあります。
現在では車の中で暮らし、脳に異常があって行動もおかしくなり、助けを求めている。

感想

個人的な評価

本作は実在するベネット・オマル医師がNFLと戦った実話を基に作られています。
NFLはアメリカで大人気のスポーツであり、一代ビジネスとしても知られています。
そんなNFLの強固な壁に一石を投じた病理学者であるオマルの戦いが描かれている作品。
オマルは七つの博士号を持つほどの天才だが、元々はナイジェリアのイボ族出身である。
アメリカ人ではない為に他の医師から無学だとバカにされるが、それに対してオマルは一切怯む事なく丁寧に説明する強い心の持ち主。
他の病理学者はあくまで遺体はモノとして扱うが、オマルは患者として敬意を表して解剖に取りかかるポリシーを持つ。
生粋のアメリカ人ではない為、運ばれてきた元スター選手であるマイク・ウェブスターの偉大さを知らずに死因を突き止めようとした。
良きアメリカ人になるべく真実を追い求めたが、その前に立ちはだかったのは資本主義国家という巨大な壁である。
いくら真実を主張したとしても、多くの人を養っているスポーツのビジネスを止めるのは許される事ではない。
そのおかげでオマルはNFLから徹底した潰しを受けてしまい、黙殺されようとします。
これはアメリカ生まれならば、脳の病気を知っていても口外せず無視するが、オマルはNFLを知らないからこそ訴えた真実だと言えます。
あくまでオマルは死にゆく選手たちを蝕む事実から守りたい一心だったが、NFLの巨大な資本主義は決して許さなかったのです。
結局はオマルは負けた形で退散してしまうが、内部からの訴えによって再び注目を集めて正しいと証明される事になります。
これはアメリカだからこそできる事で、このような問題を日本で扱うならば、果たして認められるのか疑問に思ってしまいます。
アメリカは誰でも訴えるが許される自由の国であり、訴訟国家とも言われているほど些細な事で裁判沙汰になってしまう。
相手がアメリカで一番の人気スポーツを支えるNFL相手では勝ち目はないに思えるが、それでも戦う事ができるのはアメリカらしいと言えます。
この世はいくら正しい事でも口にせず黙殺する現実が存在し、本作で取り上げた脳の病気もその一部だと思います。
アメフトはアメリカでトップクラスの人気スポーツだけど、その華やかな世界の裏で起きている引退選手たちの悲劇を克明に伝えている。
現役選手たちは華やかな一面を持っている一方で、一部の引退選手たちは悲惨な人生を送っている事実を知る意味として本作は重要な作品だと感じました。