映画のジャンルは数多くあって時代とともに進化していきます。
その中でホラー映画の細分化が進んでいて、我が国、日本でも独自の進化を果たしています。
『ジャパニーズ・ホラー』という言葉を一度は聞いた事があるだろう。
日本独自のホラー要素を備えたホラー映画であるが、どんな特徴なのか意外にも分からない。
さて、今回はそんな『ジャパニーズ・ホラー』について解説します。
ジャパニーズ・ホラーの原点
現在ではジャパニーズ・ホラーは一つのジャンルとして確立しています。
しかし、そんなジャパニーズ・ホラーにも原点はあります。
まず、世界的にジャパニーズ・ホラーを有名にしたのは、鈴木光司のホラー小説を原作にした『リング』なのは言うまでもないだろう。
劇中に登場する“貞子”は今じゃ独立し強烈なキャラクターとして活躍しています。
ただ、この『リング』はジャパニーズ・ホラーの原点ではなく、1996年に公開された『女優霊』という作品だと言われています。
この『女優霊』は世間的にあまり知られていないが、ホラー業界では知る人ぞ知るジャパニーズ・ホラーの原点なのです。
そんな原点から分岐し、様々な媒体からジャパニーズ・ホラーが形成されています。
ジャパニーズ・ホラーを支える4つの媒体
映画には原作となる大本があれば、監督や脚本がオリジナルとして製作するパターンがある。
ジャパニーズ・ホラーにも監督と脚本によるオリジナルはありますが、特に小説、事件、都市伝説を原作にする場合が多いです。
では、順番にどのような作品があるのか紹介します。
オリジナル映像作品
オリジナルビデオやテレビドラマで人気を得て、劇場版になった作品たち。
呪怨
清水崇が監督と脚本を務めたオリジナルビデオ作品が2000年に発売され、口コミにより2003年に劇場版としてセルフリメイクして大ヒットしました。
なんと言っても、ジャパニーズ・ホラーを代表するキャラクターの一人である“伽椰子と俊雄”を生み出した功績が大きい作品です。
2004年には清水崇が監督としてハリウッドでリメイクされた『THE JUON/呪怨』も公開され、全米興行収入2週連続でNo.1を記録しています。
トリハダ
フジテレビとホリプロ、東北新社が共同制作した『トリハダ/夜ふかしのあなたにゾクッとする話しを』というタイトルでオムニバス形式のテレビドラマとして放送されました。
独自のルールに従ってホラーの演出をしている事でも知られます。
・幽霊は出ない
・超常現象は起きない
・音楽で恐怖を煽らない
・過度な演出はしない
・日常から逸脱しない
このようにジャパニーズ・ホラーを極度に追い求めた作品であり、その真髄を垣間見る事ができるシリーズである。
小説
ホラー小説を原作にしてシリーズ化された作品たち。
リング
鈴木光司によるホラー小説が原作であり、ジャパニーズ・ホラーを語る上で必ず挙げられる象徴的な作品である。
特にこのシリーズで“呪いのビデオ”で殺す貞子は今や単独のキャラクターとしてホラーだけではなく、愛されるべきマスコットキャラクターにもなっています。
2002年にはハリウッドでリメイクされ、2作も作られるほどの大ヒットとなり、世界的にジャパニーズ・ホラーのブームを生み出しました。
仄暗い水の底から
『リング』と同じく鈴木光司によるホラー短編集が原作となっていて、ジャパニーズ・ホラーを代表する一人である中田秀夫が監督を務めている作品。
水と閉鎖空間をテーマにしており、これもまたジャパニーズ・ホラーとの相性は抜群である。
短編集であるが故に本編は短かった為、大幅にアレンジされている作品です。
2005年にはハリウッドでリメイクされ、ホラー要素よりも親子愛に着目したストーリー性でオリジナルとまた違った魅力を放っています。
着信アリ
今では作詞家や音楽プロデューサーとして知られる秋元康のホラー小説シリーズを原作にした作品であり、メディアミックスにより様々な媒体で発表されています。
現代を象徴する“携帯電話”を使った事でより身近なホラーを描き出し、ジャパニーズ・ホラーの特性を最大限に活かしています。
2008年には『ワン・ミス・コール』のタイトルでハリウッドでもリメイクされています。
残穢/住んではいけない部屋
小野不由美によるホラー小説を原作にし、ジャパニーズ・ホラーの特徴である静かな雰囲気の恐怖に謎を解いていくサスペンスの要素が加わっています。
小さな異音から始まって、次第に根深い問題が発覚していく中で積み重なった何かに襲われるというジャパニーズ・ホラーの良さを表現しています。
都市伝説
昔から語られる都市伝説を元ネタにした作品たち。
女優霊
ジャパニーズ・ホラーの先駆者として評価される作品であるが、全体的に怖さよりも不気味さを前面に出し、中田秀夫にとって監督デビュー作としても知られる。
ジャパニーズ・ホラーが世界的なブームになったのは『リング』のおかげだが、その下地として本作は忘れちゃいけません。
2010年にはアメリカで『THE JOYUREI/女優霊』としてリメイクされています。
口裂け女
1979年の春から夏にかけて日本でブームになって社会問題まで発展した都市伝説。
『ノロイ』で広く名を知られる事になる白石晃士が監督と共同脚本を務め、同年には韓国でも公開されています。
2016年には『口裂け女 in L.A.』としてアメリカでリメイク版が公開されています。
テケテケ
様々なバリエーションが存在する都市伝説であり、下半身が欠損した亡霊が「テケテケ」と音を立てて近づき、振り向いた人間を一瞬で胴体を真っ二つに切断するという。
2009年に1作目と2作目が同日公開され、二部構成という形で制作されています。
ひきこさん
雨の日にボロボロの白い服を着て、人形らしきモノを引きずって歩くという都市伝説。
いわゆるイジメや両親の虐待により「ひきこもり」となった女の怨念が亡霊となり、子供限定で肉塊になるまで引きずり回すという。
まとめ
ジャパニーズ・ホラーの特徴として、
・日常の中に潜む恐怖
・直接的な描写よりも考えさせる演出
・ジメジメとしてまとわりつく怖さ
・音や映像の切り替えでの恐怖を煽らない
・恐怖の象徴が女性の怨念
アメリカン・ホラーと比べて考えさせたり、沈黙を利用したり、日常と密接に関係した出来事を据えるなど、独自の路線を進んでいます。
以前のブームほどではないですが、ジャパニーズ・ホラーはしっかりと一つのジャンルとして認知されており、今後も進化し続けるだろうと期待しています。