カフカ「変身」 VD-352

作品紹介

公開年月  2012/08/31
ジャンル  ドラマ
原作  フランツ・カフカ 『変身』
監督  クリス・スワントン
脚本  クリス・スワントン
製作  レスリー・マクニール
製作国  カナダ
鑑賞方法  動画配信サービス

あらすじ

ある朝、体に違和感を持ち目覚めた青年のグレゴールは巨大な毒虫になっていた。
変わり果てた姿を見た妹は金切り声をあげ、母親は失神し、父親は恐怖と怒りでステッキを振り回してグレゴールを部屋に閉じ込めた。
なんとか家族は毒虫となったグレゴールを受け入れようとするが、想像を絶する生活は崩壊をたどるのだった。

登場人物&出演者

グレゴール・ザムザ(声:エイリーク・バー)
主人公。訪問販売で家族の大黒柱となっていた。5年間も無欠勤無遅刻の真面目な青年。
エイリーク・バーは代表作に『はじまりは5つ星ホテルから』、『ヘル・フロント/地獄の最前線』などがあります。
雨が降っていた日に朝目覚めると、体が毒虫のような姿になって原因がまったく不明。
両親や妹に姿を見られても家族として扱われるが、部屋に軟禁状態となってしまう。
妹が食事を持ってきても食べられず、父親に投げられ背中に食い込むリンゴのケガが悪化。
最後は妹に激しく罵倒され、失意の中で寿命を悟って、静かに部屋で死亡していた。

グレーテ・ザムザ(演:ローラ・リース)
グレゴールの妹。17歳。バイオリンの才能を持つ。将来は音楽学校に行きたいと話していた。
ローラ・リースは代表作に『Young Arthur 』、『ラブ・アクチュアリー』などがあります。
音楽学校に行けるように兄が手伝ってくれる事を喜び、毎日バイオリンの練習をしていた。
兄が虫になってしまい、唯一、部屋に出入りして残飯と換気をしても態度は悪かった。
母親が部屋の掃除をしようとして怒鳴り、すべては兄のせいだとしてヒステリーを起こす。
最後はガマンの限界に達して兄を罵倒して、彼が死んでも悲しまず再出発に希望を抱く。

ミセス・ザムザ(演:モーリーン・リップマン)
グレゴールの母親。喘息持ち。その為外へ働きに出られず、家の中を歩くだけでも重労働。
モーリーン・リップマンは代表作に『リタと大学教授』、『戦場のピアニスト』があります。
最愛の息子が気味悪い虫に変身してしまい、母親らしく誰よりも彼の事を案じていた。
醜い姿になって直接会うべきじゃないとグレーテに止められ、その間も心配をしていた。
グレゴールの姿を見て失神し、そのせいでグレーテの不満を爆発させる原因を作った。
最後はグレゴールが寿命で死ぬが、特に悲しむ事なく、成長した娘の将来に希望を持った。

・ミスター・ザムザ(演:ロバート・パフ)
グレゴールの父親。5年前に事業が失敗して隠居した。片方の足が悪く引きずるような状態。
ロバート・パフは代表作に『マスター・アンド・コマンダー』、『ゴーストライター』などがあります。
一家の経済を支えていたグレゴールに安心していたが、息子が虫になった事で状況が急変。
グレゴールを部屋に追い返し、軟禁状態にしても一応は家族として扱おうとしていた。
母親が息子を見て失神した事でブチ切れ、リンゴを投げつけてケガさせても気にしない。
最後はグレーテの罵倒に引いてしまい、グレゴールが死んでも一応は祈りを捧げていた。

アンナ(演:クロエ・ハウマン)
家政婦。経済が苦しいザムザ家で働いていた。毎日の食事などの家事を一人でやっていた。
クロエ・ハウマンは代表作に『A Christmas Carol』、『アガサ・クリスティー・コレクション/忘れられぬ死』などがあります。
グレゴールが虫に変身して以来、部屋から聞こえてくる奇妙な音にずっと怯えていた。
最後は虫となったグレゴールを見て恐怖を覚え、辞職を願い出て認められるとすぐで出た。

老家政婦(演:ジャネット・ハンフリー)
グレゴールの世話に不満が爆発したグレーテに代わり、彼の部屋を掃除する事になる。
ジャネット・ハンフリーは代表作に『輝きの海』、『エバー・アフター』などがあります。
誰でもビビるグレゴールの姿にも動じず、掃除も適当にやってすぐに帰ってしまう。
最後はグレゴールが死んでいるのを発見し、勝手に死体を処理して元気よく仕事を終えた。

感想

個人的な評価

本作は様々な作品に影響を与えるフランツ・カフカの小説『変身』を基に製作されています。
映画はもちろん、漫画や音楽など、幅広いメディアに多大な影響を与えています。
2002年にロシアで同じく小説を基に映画化していますが、本作と違って主人公は実際に虫になっていません。
本作では実際に主人公が毒虫に変身しているが、ロシアの映画では主人公は人間の姿をしたまま虫になっています。
これは大きな違いがあるようで、残念ながらロシアの方は予告でしか見ていませんが、なかなか面白い試みだと言えます。
そもそも小説の中で主人公が虫になりますが、これは実際になるのではなく、比喩的な表現だと思われます。
結局、一家の大黒柱が急にいなくなってしまい、それまでぶら下がっていた家族の感情を描写しています。
本作はどうやら原作を忠実に再現しているようだが、残念ながら出発点の解釈が間違っているせいで滑稽な内容になっている。
まず、一番重要な主人公が虫になったCGの出来が非常に悪く、かなり微妙なせいで物語の良さを損なっています。
ロシアの方は人間がそのまま使っているので、奇妙ながら独特な雰囲気を出していて、そこに家族とのドラマはきちんと展開していると思います。
本作は本当の虫になったせいで同情を得る事ができず、更に主人公によるナレーションのせいで淡々とした展開に面白味がありません。
中途半端に小説を意識した作りになってしまい、映画としての必然性に欠けてしまった。
本当に主人公が虫に変身するならば、思い切った演出が必要であり、しっかりとカフカの伝えた事を違った形で表現しなければならなかった。
残念ながら本作の監督では実現できず、結果的につまらない展開となり、ほとんど説明みたいな感じで舞台を見ているような印象を受けた。
これならば、ロシア版の方は評価が高いので、そっちを観るべきかもしれないと感じさせる微妙な作品でした。