イントゥ・ザ・ワイルド RE-2301

作品紹介

公開年月  2007/09/21
ジャンル  ドラマ/ロード/青春
原作  ジョン・クラカワー 『荒野へ』
監督  ショーン・ペン
脚本  ショーン・ペン
製作  アート・リンソン、ショーン・ペン、ウィリアム・ポーラッド
製作国  アメリカ
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

1990年の夏、ジョージア州の大学を優秀な成績で卒業したクリス・マッカンドレス。
卒業祝いに新車を買ってあげるという両親の申し出を断り、彼は通帳にあった預金額を慈善団体に寄付し、家族に何も告げず文字通り無一文でアラスカへ旅に出た。
道中、様々な出会いと経験を重ね、クリスはヒッピーなどが集うコミューンに身を寄せ、美しい少女トレイシーに出会う。
クリスとトレイシーはお互いに恋心が芽生える中、彼の両親は音信不通の息子の身を案じ、祈る思いで帰りを待っていた。

登場人物&出演者

クリス・マッカンドレス(演:エミール・ハーシュ)
主人公。両親とは不仲でそれが原因で旅へ出る。アラスカで孤独に自給自足の生活をする。
エミール・ハーシュは代表作には『スピード・レーサー』、『ミルク』などがあります。
金ですべてを解決しようとする両親のやり方に呆れていている部分があっての家出。
どう見ても無茶すぎる孤独な旅であるが、クリスにとってそれこそが最高の自由だという。
多くの小説を愛読しており、自分の育った環境や社会に対して大きな不満を持っている。

カリーン・マッカンドレス(演:ジェナ・マローン)
クリスの妹。押しつけがましい両親とは違い、クリスの思いきった行動を予想していた。
ジェナ・マローンは代表作に『エンジェル・ウォーズ』、『ハンガー・ゲーム』シリーズなどがあります。
兄のクリスに対してナレーションという形で物語に参加し、その心情を語っている。
事実を知るクリスと違って、両親の偽りの人生を知らず、兄の旅によって知る事になる。
誰よりも兄の苦悩を理解しており、彼がやった事に対して非難せず肯定している。

ウォルト・マッカンドレス(演:ウィリアム・ハート)
クリスの父親。ステータスを重要視し、クリスを自分の思ったレールに乗せようとする。
ウィリアム・ハートは代表作に『蜘蛛女のキス』、『インクレディブル・ハルク』などがあります。
元NASAのエンジニアで、独立してコンサルティング会社を立ち上げている。
実はビリーと出会う前から結婚しており、クリスたちは不倫した際の子供であった。

ビリー・マッカンドレス(演:マーシャ・ゲイ・ハーデン)
クリスの母親。何かと世間体を気にして、クリスを過保護に育ててしまっている。
マーシャ・ゲイ・ハーデンは代表作に『ポロック/2人だけのアトリエ』、『ミスティック・リバー』などがあります。
あくまで世間体を気にしていていて、暴力を振るわれても外面だけは良く見せていた。
出て行ったクリスの影を追い、自分がやって来た行為について苦しむ事になる。

レイニー(演:ブライアン・ディアカー)
ヒッピー。妻であるジャンとあてもない旅をする。クリスと同じように自由を楽しむ。
ブライアン・ディアカーは本作が映画デビュー作となっています。
傷心の妻ジャンを支える献身的な夫であり、クリスに何かとアドバイスをしてくれる。

ジャン(演:キャサリン・キーナー)
ヒッピー。夫であるレイニーとともに旅をしている。前の夫とは息子が一人いる。
キャサリン・キーナーは代表作に『マルコヴィッチの穴』、『カポーティ』などがあります。
息子がクリスと同様にどこかへと旅に出て、2年間も連絡がなく心配をしている。

トレイシー(演:クリステン・スチュワート)
16歳。クリスがレイニーとジャン夫婦と再会し、そこで歌を歌う彼女に出会う。
クリステン・スチュワートは近年の出演作には『エージェント・ウルトラ』、『アリスのままで』などがあります。
最初からクリスに惹かれ彼を求める。だが、クリスはアラスカが目的で拒否される。
しかし、再会を約束したクリスとは悲しい別れをするも、彼から大切な言葉を受ける。

ロン(演:ハル・ホルブルック)
クリスが最後に出会う人物。一人暮らしで身寄りがなく、革を彫る仕事をしている。
ハル・ホルブルックは本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされ、当時は最年長候補者として話題になりました。
クリスとはかなり年齢が離れているが、孤独な二人は年の差を超えて友情を育みます。
ロンという初老の男こそ、クリスが求めていた理想的な父親像を見せてくれた。
最後にアラスカへ旅立つクリスに養子を頼む時の表情は印象的でした。

感想

個人的な評価

主人公であるクリス・マッカンドレスは実在した人物。
残念ながら彼はアラスカで毒性のある植物を食べて体調を崩し、食料もなく餓死してしまう。
しかし、本作ではなぜ彼が孤独なアラスカの地で餓死したか丁寧に描写している。
とにかく、クリスという青年は文明社会に嫌気が差し、大自然に自由を求めた。
大学を優秀な成績で卒業するが、それはあくまで両親の顔を立てる為、あとは義務という点を達成しただけ。
クリスは金に困らない生活を送っていたが、それは両親の期待する息子を演じていたに過ぎなかった。
あくまでクリスは生きている意味を求めていて、文明社会では決して分からないと思い、すべてを捨てて旅だって行く。
普通なら恵まれた生活を捨てる事はしないが、クリスにとって恵まれた生活こそが彼を苦しめていたのだろう。
だからこそ、両親や妹に何も告げず、孤独な旅に出たのだろうと思われる。
クリスは孤独な旅に出ているが、その道中で出会う人々は彼に生きる意味を教えてくれる。
様々な出会いによってクリスは人の温かみや傷を知っていき、それは自分自身の境遇を考える事にも繋がっていく。
本作はどっちかと言えば、伝記映画に近い構成なので、どうしてもゴールに向かって物語を展開させてしまっている。
そのせいで物語が単調に感じてしまい、主人公は思ったほど危険な目に遭っていない。
もちろん、最後は餓死する結末であるが、それまでピンチらしいピンチがない。
その為、抑揚がないような構成になってしまい、主人公に感情移入ができないと退屈に感じる可能性がある。
個人的には伝記映画の雰囲気があるせいで、エンターテイメントよりも芸術性を追求した本作はあまり好きではない。
監督と脚本は俳優のショーン・ペンが務めているが、ある意味、彼らしい構成だと言える。
結局のところ、主人公が求めていたのは家族の愛であり、それが最後になって手を伸ばそうとするが、叶えられず息絶える。
別に死ぬつもりでアラスカへ行ったワケじゃないから、どうにも消化不良に感じてしまった。