後妻業の女 RE-2544

作品紹介

公開年月  2016/08/27
ジャンル  コメディ/犯罪
原作  黒川博行 『後妻業』
監督  鶴橋康夫
脚本  鶴橋康夫
製作  市川南
製作国  日本
鑑賞方法  レンタルDVD

あらすじ

結婚相談所主催の婚活パーティで老人たちを虜にし、武内小夜子は狙い通り中瀬耕造と結婚するも2年後に他界してしまう。
葬儀の席で耕造の二人の娘、朋美と尚子に小夜子は全財産を自分に遺すとシルされた遺言公正証書を見せつける。
納得のできない朋美は同級生の弁護士に小夜子について調べてもらうと、そこにはとんでもない過去が次々と暴き出されるのだった。

登場人物&出演者

武内小夜子(演:大竹しのぶ)
主人公。後妻業のエース。恋愛感情や罪悪感を持たず、狙った男は必ず落とす魔性の女。
大竹しのぶは近年の出演作に『真田十勇士』、『ギャラクシー街道』などがあります。
柏木の元に来る前は小さな犯罪を積み重ねるだけの小物で、三回も結婚と離婚をしていた。
結婚相談所に入ってから才能を開花させ、資産を持つ初老を何人も騙して財産を奪う。
耕造の心を奪い、4000万以上の財産を手に入れるも、娘の朋美に追いつめられてしまう。
最後は柏木の裏工作で後妻業は世間にバレず、またも同じような日々を過ごす事になる。

柏木亨(演:豊川悦司)
結婚相談所所長。小さな結婚相談所から小夜子の登場で大きくした青年実業家となる。
豊川悦司は近年の出演作に『3月のライオン』、『甥の一生』などがあります。
無類の女好きでホステスの繭美や新人の里紗と関係を持つも恋愛感情は一切ない。
希代の後妻業である小夜子をプロデュースし、コントロールする豪腕を発揮している。
これまで小夜子の夫を何人も殺しているが、一切証拠を残さない手堅さもある。
最後は本多に強請られるも里紗などを利用して殺されないように立ち回って元の鞘に。

岸上博司(演:風間駿介)
小夜子と二番目の夫の間にできた息子。刑務所から出所したばかりだが親子関係は最悪。
風間俊介は代表作に『前橋ヴィジュアル系』、『エヴェレスト/神々の山嶺』などがあります。
小夜子からも見放され、強請を仕掛けた本多の始末に雇われるも見事に失敗する。
その結果、柏木にも目障りとなって沖縄に雲隠れするという名目で突き放されてしまう。

中瀬耕造(演:津川雅彦)
元女子短大教授で小夜子の9番目の夫。婚活パーティーのツイストで小夜子と出会った。
津川雅彦は近年の出演作に『たたら侍』、『涙の数だけ笑おうよ』などがあります。
小夜子に愛情を持っていたが、最初からビジネスだった彼女に冷たい態度であしらわれる。
ようやく小夜子の思惑通りに脳梗塞で倒れるも、しぶとく生き延びていた。
そこで強硬手段として点滴に空気を入れて、ようやく天に召される事となった。

中瀬朋美(演:尾野真千子)
耕造の次女。一級建築士。キャリアウーマンで小夜子に対して不信感を抱く。
尾野真千子は近年の出演作に『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『いつまた、君と何日君再来』などがあります。
耕造の全財産を小夜子に持っていかれる事に嫌悪感を示し、法的措置に出ようとする。
ずっとイライラしているが、尾野真千子の目つきが悪すぎて悪役にしか見えなかったです。
最後はなぜか小夜子を許すような流れになって、あの怒りはなんだったのか疑問が残る。

西木尚子(演:長谷川京子)
耕造の長女。専業主婦。世間知らずの受け身で小夜子に対して好意を持っていた。
長谷川京子は代表作に『大帝の剣』、『桜田門外ノ変』などがあります。
朋美と違って耕造が幸せになった事が小夜子のおかげとして理解を示していた。

守屋達朗(演:松尾諭)
朋美の同級生で弁護士。遺言公正証書を突き付けた小夜子に対抗する為に依頼される。
松尾諭は代表作に『珍遊記』、『シン・ゴジラ』などがあります。
高校時代で同じ風紀委員だった朋美の為に後妻業を暴こうと協力する。
紹介した探偵の本多は調査するも彼が私利私欲に走って訴える事はできなかった。

舟山喜春(演:笑福亭鶴瓶)
不動産王。柏木の婚活パーティーに参加し、太い客として小夜子に狙われる。
笑福亭鶴瓶は代表作に『私は貝になりたい』、『金メダル男』などがあります。
実は不動産屋ではなく、いわゆる竿師で後妻業のような詐欺をして金を巻き上げる人種。
小夜子に3000万の工面を願うも断られた事で豹変し、二度と会う事はなかった。

本多(演:永瀬正敏)
裏社会の探偵。元大阪府警の刑事。守屋の事務所に何度か世話になっている。
永瀬正敏は近年の出演作に『光』、『ハピネス』などがあります。
守屋の紹介で朋美と尚子から小夜子について調査を依頼され、独自に動いていた。
しかし、実際は私利私欲の為に動いていて、柏木から金を強請ろうとしていた。
それまで調べ上げた報告書を渡す代わりに3000万の現金を要求するクズ野郎。
最後は小夜子の息子に殺されそうになるが、足を負傷して60万しかもらえなかった。

感想

個人的な評価

本作は黒川博行の小説を原作にしているが、残念ながらまったく知らなかったです。
かなり話題となった作品なので、前々から気になってようやく鑑賞に至りました。
大竹しのぶと豊川悦司の共演という事で多少なりとも期待をしました。
どうやら原作は相当ドロドロとしているが、本作は軽いノリで展開されています。
似たような作品として、山田宗樹原作、中島哲也監督の『嫌われ松子の一生』がある。
こちらもドロドロとした原作と違い、映画版では軽いノリのミュージカル調になっている。
自分の中では邦画として一番好きな作品なので、本作も自ずと期待をさせられました。
しかし、残念ながら本作は『嫌われ松子の一生』の足元に及びませんでした。
確かに大竹しのぶと豊川悦司のコンビは最凶であるが、作品全体としてのまとまりはなく、笑える箇所がまったく笑えないという印象でした。
どうせやるならば、徹底的に笑わせるスタイルにするべきだが、本作は中途半端でした。
やたらと登場人物が多いけど、ほとんどが顔出し程度で豪華とは言えません。
肝心の主人公である武内小夜子を演じた大竹しのぶはハマリ役と言ってもいいです。
大竹しのぶだからできる役であって、天然な性格を除けば、ほぼ武内小夜子と言えます。
女優としての演技力は邦画界でもトップクラスであり、一歩間違えれば詐欺師になってもいいぐらいのイメージがあります。
そんな本作では実際に詐欺師のような後妻業をやっているが、素の大竹しのぶでもやれそうなイメージを持ちました。
感情はあるようでなく、人を騙す事に罪悪感を持たず、いろんな男を落としていきます。
残念ながら自分には大竹しのぶの女性としての魅力はまったく分からないが、実際に関わっている人ならば分かるかもしれません。
一方の豊川悦司も悪役ながら、楽しそうに演じているのも印象的でした。
どこまでクズな人間であるけど、それ以上のバケモノである小夜子をプロデュースとコントロールしている豪腕でもある。
こちらも女を取っ替え引っ替えするだらしないクズも、逆に清々しいほどである。
大竹しのぶと豊川悦司のコンビで物語が展開するが、どちらも思っていたほどアクはそんなに強くないような感じです。
やはり、作品自体の中途半端さがあるせいで、両者の良さを上手く活かしていません。
何より本作で最大の山場となるラストの終わり方がフワフワしているのが失敗でしょう。
クズに制裁がないラストほど、観ている側として納得できないモノがないのです。
これで両者にちゃんとした社会的な制裁があれば、スッキリした感じで本作が終わったはず。
それなのにモヤモヤな雰囲気を遺したまま、強引にハッピーエンド的な感じに終わらせたのは製作側の怠慢としか思えないです。
原作ではキッチリと制裁を与えるのに、なぜ映画版ではそれをやらなかったのか、劇中からその意図が伝わってこない。
あとはずっと気になっていたが、本作の舞台は大阪なので、当然のように登場人物はみんな関西弁をしゃべっている。
ですが、本当の関西人は笑福亭鶴瓶と尾野真千子だけで、あとはエセ関西弁を使っていて、明らかにおかしいイントネーションに違和感を持ちました。
そこは大阪じゃなくてもいいし、関西弁をしゃべるならば、できる人を配役にするべき。
関西人じゃない自分でも違和感を持っているので、関西弁をしゃべる人からしたら、むず痒い感じになるのでしょうね。