紙の月 VD-82

作品紹介

公開年月  2014/11/15
ジャンル  サスペンス
原作  角田光代 『紙の月』
監督  吉田大八
脚本  早船歌江子
製作  池田史嗣、石田聡子、ほか
製作国  日本
鑑賞方法  動画配信サービス

あらすじ

銀行で契約社員として働く主婦の梅澤梨花と夫の間には空虚感が漂っていた。
ある日、大学生の光太と逢瀬を重ねるようになった彼女は、彼の為に顧客の預金に手を付けてしまう。
二度あってはいけないと梨花はクレジットカードを作ったが、この事をきっかけに彼女の感覚は狂い始めるのだった。

登場人物&出演者

梅澤梨花(演:宮沢りえ)
主人公。わかば銀行の銀行員。パートから契約社員となって外回りで営業をしている。
宮沢りえは代表作に『ぼくらの七日間戦争』、『オリヲン座からの招待状』などがあります。
夫との仲は悪くないが、淡々とした毎日にどこか心が晴れないところを持っている。
そんな時に顧客の孫である大学生の平林光太と出会った事で徐々に歯車が狂っていきます。
当初は慎ましく節約していたが、忘れていた情熱を取り戻す不倫で加速してしまう。
最後は悪事が全部バレた事で告白するも逃亡し、本当に会いたかった人物に会う事に。

平林光太(演:池松壮亮)
梨花が契約を取り付けた平林の孫。祖父の家で見かけた梨花にひと目惚れしてしまう。
池松壮亮は代表作に『鉄人28号』、『半分の月がのぼる空』などがあります。
実は学費を払う為に借金をしているが、その為に大学を辞めようと考えていた。
梨花に多額の借金を背負っている事がバレてしまい、そこから彼女が闇に墜ちていく。
最終的に大学はすでに辞めていて、同年代の恋人を作って梨花を裏切る事になる。

梅澤正文(演:田辺誠一)
梨花の夫。サラリーマン。梨花とは仲が悪くないけど淡々とした毎日を過ごしている。
田辺誠一は近年の出演作に『ハッピーフライト』、『リング0/バースデイ』があります。
順調に出世を重ねていき上海での転勤も決まるが、梨花の不倫に気づいていない。
上海に単身赴任してからも定期的に連絡を入れるも相変わらず梨花の不倫に気づかない。
どこまでも脳天気で梨花の異変に薄々気づきながらもどうする事もできなかった。

相川恵子(演:大島優子)
わかば銀行の銀行員。若手でなんでもハッキリと言ってしまう性格。実は不倫している。
大島優子は代表作に『大怪獣東京に現わる』、『真田十勇士』などがあります。
ガマンができないタイプで、クレジットカードの支払いはいつも大変で嘆いている。
徐々に変わっていく梨花の様子をしっかりと見ていて何かと忠告している。
実は次長の井上と不倫の関係で支店の成績を水増しさせるなどの裏工作をしていた。
最終的に次長との悪事がバレそうになると地元の公務員との結婚で寿退社した。

隅より子(演:小林聡美)
わかば銀行の銀行員。25年目のベテランで常に金の出所が気になって勉強を欠かさない。
小林聡美は近年の出演作に『海よりもまだ深く』、『あやしい彼女』などがあります。
銀行が守るべきルールを尊重しており、少しの怠慢も許さない正義感を持っている。
本部から厄介払いに異動を命じられるが、書損処理の間違えを指摘して梨花の悪事を暴く。
しかし、弱みを掴まされた次長に無罪放免となるも、それでも納得いかず

井上(演:近藤芳正)
わかば銀行の次長。何かと新人に目をかけてベテラン銀行員を厄介者として見る。
近藤芳正は近年の出演作に『屋根裏の散歩者』、『ホテルコパン』などがあります。
やたらと相川を目にかけるが、実は不倫関係でそれを利用して成績を水増ししていた。
隅の調査で梨花の悪事を暴くも、相川との不倫で脅されて無罪放免で見逃す事に。
しかし、状況が大きくなってしまい、手に負えなくなって次長職から降格されてしまう。

平林孝三(演:石橋蓮司)
大口契約の顧客。光太の祖父。金持ちだが家族に対して不信感を抱いている。
石橋蓮司は近年の出演作に『散り椿』、『一茶』などがあります。
やって来る銀行員に対してセクハラ紛いの事をして他の銀行員でも有名だった。
光太とも仲が悪く、不憫に思った梨花が闇に墜ちるきっかけを作った事になった。
実は梨花の提案を面白いと思って契約に乗っていただけで下心はなかった。

感想

個人的な評価

角田光代の同名小説を実写映画化した作品。
本作が公開された同年にはテレビドラマ化もされているヒット作です。
監督には『桐島、部活やめるってよ』で話題となった吉田大八が務めています。
原作者の角田光代は実際のニュースをベースにして物語を作っているという。
ただ、実際の小説では銀行のシーンが少なく、吉田大八監督は現実的な部分を描いている。
主人公の梨花を演じるのは映画の主演が7年ぶりとなる宮沢りえが務めています。
梨花という女性は平凡な生活をして、夫とも仲が悪くないけどどこか満足をしていない。
銀行員のパートから契約社員となっているが、最初はお金に溺れる事がないと自制していた。
しかし、一度顧客の金に手を付け、更に不倫関係の光太との関係で一気に墜ちていきます。
平凡な生活を送っていた普通の女性が金によって豹変していく姿をリアルに描いている。
演じている宮沢りえはハマリ役となっていて、弱々しい感じながら犯罪を繰り返すも、それをまったく感じさせないところがあります。
ただし、罪悪感が完全に失われた後の行動は完全にプロそのものになっていて、淡々と描いているところも逆に怖いです。
当然のように悪い事は長続きせず、光太との関係も冷めていくと同時に崩壊していきます。
最初の頃は平凡で地味ながら堅実に生きていた女性が、一つの行動から止めどもない闇に墜ちていく姿は非常に痛々しく感じました。
梨花と光太の楽しんだ束の間の一時はまるでファンタジーのような夢物語だと言える。
あのような生活は一部の成功者に限られたモノで、他人の金を溺れるような事は絶対にダメ。
もちろん、その結末にハッピーエンドがあるはずもなく、崩壊へと向かっていく梨花の姿は本当に痛々しかったです。
それを演じた宮沢りえの弱さも手伝い、その墜ちた姿は犯罪者ながら同情をしてしまう。
そんな歯車が狂ってしまった梨花を冷めた目で見るベテラン銀行員、隅より子を演じた小林聡美も後半で凄まじい存在感を出していました。
追いつめられていく梨花と追いつめる隅との対比、それぞれの主張が繰り広げられたクライマックスは本作最大の山場でした。
勝利者となった隅だったが、梨花のやっていた事を一方で羨ましく思っていた点が面白い。
そこに梨花が話す幻想のような出来事と考え方によって、まったく違う人種であるところも浮き彫りになるのも面白いです。
梨花は美しく弱々しい容姿だが、その中身は頑固で自分が幸せを得られるならば、手段を選ばない怪物のような性格を持っている。
そのギャップがクライマックスでの回想も含め、最後に見せた外国での場面で、彼女の逃亡生活を描いた続編が観たくなるほど興味を持ちました。
実は本作のパッケージで宮沢りえがこの上なく美しく映っていた事がきっかけで鑑賞したけど、作品としてもかなり面白いと感じました。